コメディ・ライト小説(新)

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同居人
日時: 2019/10/24 17:04
名前: 千草 (ID: Prfa052C)

…突然だが、皆様に質問がある。
男女が一人ずつ、室内に閉じ込められた。しかも、同い年。

この状況、どう思うだろうか。

最初は拒絶していたけれど、どんどん好きになって――――、とか。
ここから出るために、協力してくれないだろうか――――、とか。
ラブコメだとか、謎解きみたいな、カッコいい話とか。

否。
そんなものはここには無い。よそへ行ってくれ。

この話は、突然何者かによって閉じ込められた、男女の話。
不定期更新の予定。
つまらないとは思いますが、気づいた時にでも見て行ってください。
笑えるような話を目指していますので、どうぞよろしくお願いします。

書き始め
2019年10月14日

Re: 同居人 ( No.1 )
日時: 2019/10/21 16:26
名前: 千草 (ID: MvDA3keJ)

第1話 初めまして?

 落ち着きのある部屋。時間は、朝。

 そこには、普通のテレビ、木製のテーブル、椅子、使いやすそうなキッチン…など、生活に必要なものがそろっていた。
 必要なもの……と、男女が一人ずつ床で寝ていた。
 片方は白いTシャツに黒いズボンを着ている高校生くらいの男。
 もう片方は薄い黄色のTシャツに水色のスカートを着ている、同じ高校生くらいの女。

 男の方が先に目が覚めたようで、女の方を向くと……。
「うわあああああああああああああああ!」

 男の悲鳴が部屋に響き渡った。

「だ、誰だよお前!」
 その後、悲鳴で目覚めた女。そして男が座ったまま指をさして問い詰めている。
「いや、知らない人に名前とかを教えるわけにもいかないので……。というか、何故ここにいるんですか、私」
 完全に犯罪者を見る目で男を見ている女。

 ついでにどこかで見たような顔だと思った。
 本当ならこの男と同じように叫びだしたい気分なのだが、コイツがさっき叫びだしてくれたおかげで冷静になれた。
「見たことあるような気がするし、俺から自己紹介する。というか、何でここにいるか俺もよく分からないんだけど」
「……そうですか、どうぞ」
 女から見るに男は誘拐犯である。そして変態。個人情報をそう易々と出していいものか。
「えっと、初めまして? 俺は月島優也つきしまゆうや。18歳で葉月高校3年A組。気づいたらここにいましたー」
「……同じ高校だ」
 道理で見た顔だと思った…。そういえば隣のクラスにこんな奴いたわ。
 かなり警戒心が解けた女は、軽く自己紹介をした。
「えー、同じ高校の3年B組、木実凛このみりんです。ハジメマシテ。面倒なので敬語と呼び捨てでいいですか?」
 こんな奴に敬語とか使いたくないというのが本音。あと別に会うのは初めてじゃない。すごく面倒そうな顔と声で自己紹介を済ませた。
「じゃあ俺も凛って呼ぶわ」
「やだ」
 即答。
「なんで!?」
「気持ち悪い」
 同じく即答。
 キャラ変わってませんか……? と呟き、その後に元気な声で一言。
「凛、これからよろしく!」
「うん、優也、よろしく。早速だけど殴っていい?」
 二人が仲良くなれる日はいつになるのか。

Re: 同居人 ( No.2 )
日時: 2019/10/21 16:25
名前: 千草 (ID: MvDA3keJ)

第2話 冷蔵庫の中身

「あー、腹減った……」
「作れば?」
 無言。

「お腹空いたなあ」
「だから作れば?」
「よく考えてみろ、俺に美味しい飯が作れるとでも?」
「無理じゃない?」
「うん、だから作ってよ」
 始めに比べかなり口が悪くなった凛。
 そう言われても、やりたくない。
 料理はできる方だが、かといってやりたいとも思わない。

 第一、冷蔵庫に食材はあるのか?

「作らないけど、食材は?」
「冷蔵庫とか」
「中身詰まってると思う?」
「……確認しよ」
 優也は冷蔵庫に向かった。
 凛は…扉を探して、きょろきょろと周りを見ていた。

 そして、優也が後ろに何かを隠しながらこっちに来る。
「なんかあった?」
 凛が聞けば、視線をそらしながら後ろに隠したものを見せた。
「……」

 チョコレート、二つ。
「「……」」
 凛は無表情で。
 優也はもう諦めた顔をして。
 
 このチョコレートを見つめていた。

Re: 同居人 ( No.3 )
日時: 2019/10/21 16:28
名前: 千草 (ID: MvDA3keJ)

第3話 パッパカパーンに殺意が湧く

 数秒ほど経って、凛が話しかけた。
「……そういえば、ドアが四つあったけど、見る?」
「じゃあ俺左半分見て来る」
「私右半分行ってくるわ」

 結果。
 一番左、お手洗い。
 左から二番目、お風呂。
 残りの右半分、二つとも寝室、というか、PCとか色々あった。

「寝室が2つ……チョコレートも二つ……出口なし…」
 凛が呟く。
「これって、つまり俺たちを閉じ――」
「言うな」
「いやだってこれ、もう出れ――」
「言うな」
「餓死するか、酸素無くなるかしか――」
「……言うなあああああああああああっ!」

 優也が閃いた。ちなみに酸素のことは二人とも忘れる気でいる。
「思いついたんだけどさ、PCとかあるならネットで注文できるといいよな」
「提案じゃなくて願望かあ…」

「PC立ち上げるしかない…?」
「俺機械音痴なので任せまーす」
 二人で一番右の部屋に入っていく。

「デスクトップは…ん、ショッピング?」
 凛が気がついて開く。
『パッパカパーン!』
「「うわっ」」
 効果音に軽く驚く。
『いらっしゃいませ!このPCを立ち上げるの、正解でーすっ!
初めましてぇ!僕ぅ、貴方たちを閉じ込めた、えっとお、苗字からとって……Tでーすっ!』
 画面はショッピング、と左上に書かれたサイトが出ているが、PCから可愛い系の少年の声がする。
 凛が閃いたというように優也を見た。その顔には疑うような表情。
「苗字がTで、PCを立ち上げるという提案を出した……声は違うけど、T…………多分、男…」
「俺を見るんじゃねえよ! 違うわ!」
「いやだって、月島の【つ】って、T……」
「だから違うっつーの!」

『あのーっ、僕話してもいいですかぁ?』
「んー、絶対聞いてるよね。何処から聞いているのかなあ? 出ておいで? あと、そのイラつく話し方と効果音やめようねっ!」
凛が笑顔でPCの画面に話しかける。だが、Tは、ひらりといつものテンションで返した。
『むーりでーすっ』
「はっ倒すぞ、あ?」
流石凛、口が悪い。

「……」
女の子って怖いなあ、と優也は見守るのであった。

『さてと、このお部屋の説明入りまーす』
「その前に出していただいていいですか?」
 凛が背筋の凍るような笑みを見せても、Tは動じない。
『えー、まず、ここは不思議空間だから窒息しませーんっ!
お互いのこと好きになったら出してあげまーす!
好きにならないなら、一生閉じこめられててね!
こんな感じかなあ? さてと、じゃあお金いらないから、ショッピングを楽しんでねー?』
 プチっ。
「うわ、消えた…好きになるとか……しかもよくある謎設定」
 優也がPCの画面を見ながら言って、ちらりと隣を見ると。

 凛が無表情でキレていた。怖い。

「ま、まあ…その、食べ物買えるかもだし、やってみよう?」
 優也がビクビクしながら話しかける。
「あー、うん。でも、どうやって届くのかな…ドアないし、着くまでに時間かかりそう。それに、お金のいらない買い物とは…」
「分かるかもだし、なんか買ってみよ」
「りょーかい」

『〈食べ物〉野菜  果物  お肉  お魚  お菓子』
「んー、試しにみかん買っていい?」
 凛がPCの画面を操作し、優也が見守る。
「なんでそのチョイスなんだよ!まあいいけど……」
「よし、頼めた」
 その2秒後。
『お持ちしましたわ』
「誰だよ!あとどっから出てきたんだよ!」
 凛がツッコんだ。
『みかんになりますわ』
「だからお前はどういうキャラなんだよ!配達員の格好でお嬢様風にするな!Tといい、お前といいキャラ濃すぎだろうが!」


 配達員が消え、目の前にあるのは小さな段ボール箱。
 比喩ではなく、目の前から急にいなくなったのだ。
 開けると段ボールは消えていき、みかんだけが残った。
「「……」」

「…………みかん冷やしておくね、あとなんか適当に頼んどく」
「了解」
 凛は一番右の部屋に消えていった。
 ちなみに、ご飯は誰が作るのか、という疑問を優也と凛は忘れていない。

Re: 同居人 ( No.4 )
日時: 2019/10/24 17:00
名前: 千草 (ID: Prfa052C)

第4話 料理

『人参とキャベツとその他諸々、お届けに参りましたわ』
「「あーはい、お疲れ様でーす」」
 二回目にしてもう慣れた二人。
「出るためには好きになる必要があるって言ってたけど……あの、凛さん?」
「……こんな奴に恋愛感情とか……ないわ……」
「傷つくんだけど!?」
「知らんがな」
「おい」

 凛が思い出したように言う。
「ご飯を作るの、毎日交代でいい?」
「いいけど、今日は誰が作るんですかー」
「もし、私が今日ご飯作ったら明日やってくれます?」
「料理の腕は保証しないけど、なら明日作るよ」
「……教えてあげようか?」
 可哀想なものを見るような瞳に、優也が叫ぶ。
「なんでちょっと優しくなってるんだよ!悲しくなってくるわ!」

 数十分後。
「できた」
「お疲れ、時間わかんないけど、ご飯は目玉焼きですか」
お盆の上に載っているのは、目玉焼き、醤油、ご飯、サラダだった。
「不満ですか」
「いいえ?」
「そっか。
……時計普通にPCとかある部屋にあったけど、まさか見てない?」
「……うん」

「「いただきまーす」」
 揃えようともしなかったのに何故か揃ってしまう二人。
「うん、うまい」
「サンキューです」
 優也が一口食べてみると、普通においしかったらしく、手短に感想を言ってバクバク食べる。お腹がすいていたのもあるかもしれない。
 優也を見て凛も食べ始め、静かになったかと思えば。
「そういえば」
「静かになると思ったのに……」
 優也が話しかければ、物凄い嫌そうな顔をする。

「サーセン」
「許す。……で、なに」
「寝る部屋とか自室とか……どうするのかなーって」
「さっきPC使った部屋が優也でとなりが私ね」
「決めるの早っ」
 もう既に決めていたらしい。
「……朝起きる時間は?」
「んー……私いつも六時だから六時で」
「八時でよくね?」
 凛はそうでもないが、優也は朝が苦手な方である。
「ん、朝苦手なの?」
 図星である。
「いやー? べっつにぃ、そういうわけではないでござるがー?」
「語尾がおかしいからね、それと隠せてないから」
「じゃあ七時な!」
「勝手に決めんな」
「そういうことで。ごちそーさん」
「食べるの早っ」
 台所に食器を片し、自室へ行こうとする優也。それを凛が引き留める。
「待て待て待て! 洗わないのかよおい!」
「その男口調何なの。モテないよ?」
「モテなくていいの! うるさい! さっさと洗ってよバーカ!」
 しまいには馬鹿と言われる。
「えぇ……」
 面倒くさいと優也の顔に書いてあるが、凛は無視してご飯を食べた。

Re: 同居人 ( No.5 )
日時: 2019/10/31 18:41
名前: 千草 (ID: Fa1GbuJU)

ハロウィン特別番外編 「トリックオアトリート」

 ――――10月30日。夜。
 それは、二人が寝る少し前のこと。

 ある男は、自分の部屋の中で恐る恐るという様子で、PCをいじっていた。
 時々、うーんと首を傾げたり、驚き、何かいいものを見つけた顔をしたりする。
 カチッ。カチッ。
 ようやく音がしなくなった頃に、いつ、どこから現れたのか、配達員の格好をした女が現れた。
「お持ちしましたわ」
 静かに、声を出す。
 配達員は、その服に似合わない、まるでお嬢様のような口調だ。
 持っているものは段ボール箱。それを渡すと、配達員は消えていく。

 男は、その段ボール箱を見て、笑う。
 その表情は、まるでいたずらを仕掛ける子供のようだった――――。


 男が何かを企んでいるとは知らず、彼女も自室でPCをいじっていた。
 調理道具一式とバターなどを注文し、台所の棚にしまって眠りについたのだった。


 ――――10月31日。朝。
 優也よりかなり早く起きてきた凛は、朝食とは別の調理を始めた。


「おはよう!」
「おはよう。って、なにその恰好」
 優也が起きてきたのはいつも通りの7時。
 テーブルにはすでに朝食が並べられている。
 
 ……そんなことより。
 優也の服がおかしかった。
 角と羽のようなものが付いている真っ黒な服。小さな籠も持っている。
 ……そう。コスプレであった。
「今日はハロウィンだろ? だから……」
「はあ……」
「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
「うるさっ」
「えー、お菓子はー?」
 本当はお菓子なんてもらう気はなかったのだが、ハロウィンなので言うことにしただけである。なのでこの不満そうな表情は嘘であった。
「……あるけど」
 凛が、さも当然のような口調で言った。
「は?」
「だから、あるけど」
「え、何が?」
 凛がキッチンから何かを持ってくる。
「はい、お菓子」
 手に持っていたのは、朝作っていたクッキー入りの袋であった。
 コウモリやかぼちゃ、お化けなどが描かれた袋に包まれていて、その中には星、丸、お化け、カボチャなど、色々な形をしたクッキー。チョコチップや可愛いデコレーションなど、かなり丁寧に作られてあった。
 優也は、戸惑いながらその袋を受け取る。
「え、あ、ありがとう……?」
「なんで急にどもってんの?」
「ねえ、急に優しくない? どしたの? ツンデレがデレたの?」
「は? いつも通りでしょ」
「そんなわけねーだろ! だって、あれ……。いつもこんな感じだったの……?」
 優也、大混乱。
「そうそう。私はとてもとてもお優しい女神のような人ですよ」
 凛が洗脳をしようとしている。……怖っ。

 そんなこんなで、閉じ込められてから初のハロウィンの朝は大混乱であった。

「ハッピーハロウィン!お届けに参りましたわ」
「「あ、どうもー」」
 優也の部屋にて。
 二人は適当なものを注文した。配達員を呼び出すために。
 そしてこちらも、ハロウィンに乗っかっていた。
 魔女のコスプレをした配達員は、いつも通り段ボール箱を持っていた。
 段ボール箱を優也が預かり、凛が袋を渡す。
「お菓子です。お口に合えばいいんですけど……」
「ありがとうございますわ!嬉しいですの……!大切に食べさせて頂きますわね」
 配達員はとても感激していた。
 満面の笑みでペコリ、と頭を下げて消えていった。
「……めっちゃ喜んでたな」
「だねー」
 優也が嬉しそうに呟けば、凛が同じように答える。

 残る袋はあと一つ。

 凛の自室にて、一人PCを立ち上げていた。
「……やっほー、見てますぅ? 凛ちゃんでーすっ!」
 傍から見るととてもとても気持ち悪い。
 Tの真似をしているが、いつもの凛とかけ離れすぎていて優也が見たら速攻で逃げていくような仕上がりになっていた。
『――どうしたんですかぁ、急ですねぇ!
あ、なるほどぉ!今日ハロウィンですもんね!僕の可愛いコスプレ姿が見たいんですよねー?』
 答えるまでに間があったが、Tの声が返ってきた。
「いや違いますけど。というか姿見せてくれないでしょ、見たくないし。ちょっと時間が空いたってことは、ずっとどこかから見てるわけではないんですか」
『うんうん、年一回見る予定だよぉ!』
「それでいいのか私達を閉じ込めた張本人」
『どうせ逃げられないだろうしぃ、いいかなって! ところで、僕に用ですかぁ?』
「このお菓子あげる」
 PCの画面に向けたのは、優也や配達員にあげたのと同じものだった。
『……へ?』
「このお菓子あげます」
『……本当にどうしたんですかぁ? 僕にお菓子をくれるなんてぇ、まさかツンデレがデレ――――』
 優也と同じことを言うT。
「うるさい。で、これどうすればいいんですか?」
『えーと、じゃあ、どこでもいいのでぇ、机の引き出しの中に入れといてくださいねぇ?』
「どっかとつながってるんですか…」
 机に向かう凛。引き出しの中を覗いてみても特に何もない。普通に袋を入れた。
『うん、ありがとうございますぅ』
「どういたしまして。じゃあ切りますね」
『はいはーい』
 プチッ。

 こうして、ハロウィンのお菓子は全員に配られた。
 そのお菓子を配られた者は、皆笑顔で食べるのであった――――――。

 ☆Happy Halloween☆ 


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