コメディ・ライト小説(新)
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- 音楽室という居場所
- 日時: 2019/11/04 00:11
- 名前: 穂花 (ID: QpYqoTPR)
初めまして、穂花です
吹奏楽に関してのお話を書こうと思います
不定期になるかもしれないけれど読んでくれたら嬉しいです
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《主な登場人物》
水野菜々美 1年生
浅井加乃 1年生
山下寧々 2年生 4th
高田美侑 2年生 2nd
今野遼太郎 3年生 3rd
杉浦彩夏 3年生 1st パートリーダー
- Re: 音楽室という居場所 ( No.1 )
- 日時: 2019/11/04 00:45
- 名前: 穂花 (ID: QpYqoTPR)
全部終わった。
もう、何も考えなくてよくなったし、何かに焦らされることもない。
ただ、私の大部分を構成している何かが今どすんと音を立て、落ちていたのが分かった。
それはもう、二度と私の中には入れることが出来ないような気がした。
私、水野菜々美は今日、吹奏楽部を引退した。
『長いようで短い』
その言葉を使うのはまさに今だ。
辞めたいとか、早く引退したいとか、これまで何度思い、口にしていたことか。
それがあっさり叶ってしまってなんだか寂しくなった。
私はこの2年半で成長したのだろうか。
いや、成長した。
ここでしかできない経験もたくさんしてきた。
そんな経験がもう出来ないと思うと後ろを振り返りたくなるが、「もうお腹いっぱいだ」と無理矢理自分に思わせ、前を向いた。
今から話すのは、私の2年間半のお話。
- Re: 音楽室という居場所 ( No.2 )
- 日時: 2019/11/04 01:24
- 名前: 穂花 (ID: QpYqoTPR)
小学6年生の春。
今までそんなに仲良くなかった「友達の友達」の人が「友達」になったのはこの年だ。
なんとなく休み時間を共に過ごし、なんとなく帰りも一緒に帰ることになった。
2人とも今の自分たちの関係に慣れてきてお互い、名前の後ろに「ちゃん」を付けなくても呼び合えるようになってきた頃だった。
「ねぇ、一緒に吹部入ろう?」
__吹部
「ん?」
「え、吹奏楽」
聞き返す前に分かっていたけれど馴染みがなさすぎて、咄嗟に聞き返してしまった。
「でも、私、音符読めないよ」
彼女はピアノを習っていた。
だから、スラスラ音符も読めて、4年生のときは発表会でやる合唱の伴奏もしていた。
だが、私の方は音楽で習ったシが五線の真ん中にあるという事だけを知っていて、八分音符や四分音符がどれくらいの長さなのか全く分からなかった。
「ま、考えてみて。別に嫌だったらいいし。ほんとに無理に入ろうとしてくれなくてもいいから」
「わかった」
特に入りたい部活があったわけではないので頭の中に放り込んでおいた。
- Re: 音楽室という居場所 ( No.3 )
- 日時: 2019/11/04 01:43
- 名前: 穂花 (ID: QpYqoTPR)
家に帰って、まずお母さんに聞いてみた。
「ねぇ、吹奏楽ってどんなの?」
「え?吹部に入るの?素敵よー!みんなで演奏してね、みんなの心が一つになるの!懐かしいわー、お母さんね、クラリネット吹いてたのよ?わかる?クラリネット」
お母さんはおばさんではないのにおばさんの口調で話す。
もう、おばさんよ、と言っていたけれど、実はどのお母さんよりも綺麗で若いのだった。
お母さんと話すと、話す割合が私とお母さんで1対9ぐらいになる。
それに、お母さんは昔、「吹部」に入っていて、クラリネットを吹いていたらしかった。
みんなで演奏することは私にぐらい分かっていた。
お母さんの昔話を聞いただけでそこまでの情報は得られなかったが、「素敵なもの」ということが分かった。
私は吹部に興味を持った。
翌朝、友達に吹部に入るよ、と伝えた。
吹奏楽部を略して「吹部」と呼ぶのがかっこいいと思ったし、やっぱり、他にやりたいことがなかったのだ。
ただ、自分で「吹部」と言うのは少し恥ずかしかった。
- Re: 音楽室という居場所 ( No.4 )
- 日時: 2019/11/06 00:33
- 名前: 穂花 (ID: QpYqoTPR)
9月
私達が入りたい吹奏楽部の定期演奏会があるのだった。
「見に行こう」と言われ、私とお母さんと友達と友達のお母さんと、小さな軽に乗って、ホールに行った。
着いてからは私の中にあった、小さな憧れがどんどん膨らみ始めた。
お客さんが思ったよりも多くて、受付で中学校の制服を着た半年後には先輩になるであろう人がパンフレットを配ったり、していた。
半年後にはあんなにキラキラした笑顔を、振りまいたり、あんなにハキハキとした、声で話せるとは思わなかった。
ここのホールに来たのは初めてで、暗くなってから「映画館に似てる」と思った。
「何かすごいね」
隣から友達の声が聞こえて、静かにうなずいた。
「何か」の何の部分ははっきりとは分からないけど、初めての物を見るような、初めて何かを体験するようなワクワク感があった。
この演奏会は1部と2部に分かれていて、1部では大会で演奏した曲や、ゲストの方を招いて一緒に演奏するようだった。
ただ、私は暗さとふわふわした椅子の居心地さに早くも寝そうになっていた。
2部では、今年流行った曲などまさに私たちのような音楽のことなんて何もわからないような人でも楽しめるようになっていた。
実際楽しかった。
劇も入っていたり、ダンスもあったり。
本当に吹奏楽部なのか?とも思った。
ステージの上は本当に眩しくて、照明に反射して動くたびキラキラする楽器や、大きな打楽器を叩く度に足に伝わってくる振動は何か掴めない遠くのものを見ているような気分にさせた。
今日見た景色はずっと忘れられなかった。
最初にあった小さな憧れは、弾けて、私の座った椅子の上や、歩いた時に足跡みたいになってキラキラと輝いて落ちていた。
それでもなお、輝きを絶やさないまま私の体の中から溢れ続けていた。
もし、半年後本当に吹奏楽部に入ることが出来たら、演奏会の感想を先輩に伝えようと思った。
私はこの中学校の吹奏楽部が大好きになった。
- Re: 音楽室という居場所 ( No.5 )
- 日時: 2019/11/06 21:58
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=10985
はじめまして、友桃(ともも)と申します。
作品を読んで即、お気に入り登録させていただきました。
ゆったりした気持ちで読めるこの作品がとても好きです。
あと心理描写が丁寧で、主人公の目線に立ったように読めて惹き込まれました。
続きも楽しみにしています。更新頑張ってください^^
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