コメディ・ライト小説(新)
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- この恋に祝福を。
- 日時: 2020/02/03 20:42
- 名前: 樹里 ◆lPDhFl1pDg (ID: hj1.aJrP)
<Prologue>
___結婚。
それはだれもが羨む恋のハッピーエンド。
だけど、学生のうちは結婚なんて
遠い遠いゴール。
だけど、思春期というこの年代には
恋は必要不可欠のアクセサリーなのだ。
ああ、なんで恋をしてしまうのだろう。
どうして好きになってしまったのだろう。
私の目に恋に落ち、
恋を失った男が崩れ落ちていくのが見える。
___なんて美しい綺麗な涙なんだろう___
窓から差し込んだオレンジ色の光と男の瞳から零れた雫が重なってダイヤモンドのように地面に落ちていく。
その美しさにゴクリと喉を思わず鳴らし、もっと近くで見たいとそっと近づいた。
じゃりっと足を動かすと、砂利石が私の行動を邪魔をして、結果的に男が振り向いた。
___目が合った____
- Re: この恋に祝福を。 ( No.1 )
- 日時: 2020/02/03 21:40
- 名前: 樹里 ◆lPDhFl1pDg (ID: hj1.aJrP)
<note 1>
「なの〜、起きなって」
目を覚ますと、お兄ちゃんがぼやっと視界に入ってくる。
「……お兄ちゃん」
おはよと私に微笑みかけてくるいつもの光景にほっとため息が出た。
なんだ、夢だったのかと安心をしながらリアリティのある夢にひやひやとする。今日から始業だろとテキパキと私の洋服を用意してくれる兄の声を聞きながらそっかぁっとカーテンの隙間から青空を見上げた。
「なの、兄ちゃんはなぁ、なのが心配だ」
ぼーっと青空を見上げてる私を見てはぁっとため息をついて説教が始まりそうな雰囲気を悟った。
「うんうん、わかってるよ。お兄ちゃんがいるからだいじょうぶだよ。だいすきだいすき〜」
長くなりそうなので黙らせるように抱きつき、にこっとはにかむ。
「……な、なのっ!」
かああっと赤くなって押し黙ったお兄ちゃんが可笑しくて作戦成功とウィンクする。
怒られる前に急いで部屋を出て洗面所に駆け込む。
「お兄ちゃんはあーだこーだお母さんみたく口うるさいんだから」
むぅっと無意識に頬を膨らまし、髪をとかしていく。
お兄ちゃんが口うるさくなっているのはなんでも甘えっぱなしな私の性格と父子家庭な環境。
私を甘やかしてくれたり、遊んでくれたり、母親代わりに家事をこなしてくれる兄の存在は勿論大きいけど、私だってそういつまでも子供じゃないんだからと思う。
「よし、ばっちり!」
セミロングの黒髪が綺麗に揃ったことに満足をしながら笑顔を鏡の自分に見せた。
「なーのー、早く飯食べねえと時間ねえぞ〜」
お兄ちゃんの声が遠くで聞こえて、え、今何時と鏡の横の時計を見ると、7時40分を指していた。
「や、やばいやばいやばい!」
急いで洗面所をあとにし、用意してくれた制服に着替えると、食べる時間もなく、玄関へと急ぐ。
「なの、飯!」
どたどたと足音で気づいた兄が玄関までトーストを持ってきてくれる。
「ん、ありゃと」
急いで頬張ると、ふあっとこんがりバターの味が口の中に広がるのを感じながらドアを開けて学校へ向かった。
「……ったく、余裕もって起こしてるのに、全然起きねえからこんなことになんだよ」
自分の妹の落ち着きのなさとマイペースさにうんざりしながら妹の背中を見送る。
「篠原〜」
家に戻ろうとしたが、俺を呼ぶ声が聞こえて振り向くと、真向かいの佐藤が手を振ってるのが見えた。
「おっ、佐藤、はよ」
はよ〜と駆け寄ってきた佐藤がなのちゃんもう行ったの〜とのんびり話しかけてくる。
もう行ったよと答えると、大袈裟だろと思うほど
「なのちゃんに渡したいものあったんになぁ」
しょんぼりと肩を落としながら手元に目を向けている佐藤を見ると、
「渡してやろうか?」
なんだか助けてあげたくなるのだが、ふるふると首を横に振られてしまい、そのまま家に帰っていく佐藤を見ると、その渡したいものなんなんのかということがよりいっそう気になった。
- Re: この恋に祝福を。 ( No.2 )
- 日時: 2020/02/05 17:11
- 名前: 樹里 ◆lPDhFl1pDg (ID: FCVTIPcN)
〈note 2〉
「ふぅ、なんとかせーふっ」
チャイムがなった後だが、とりあえず教室に着くことが出来た。
「せーふ、じゃねぇだろ、あうとだろ!」
隣の席の飛田君ががみがみ言ってくるが、気にしないことにして席に着く。
まだ先生は教室には来てなくて教室内は席に着いていなかったり、おしゃべりしていたりと随分と騒がしかった。
「先生遅いねぇ」
いつも早めに来ている私の真面目な担任の姿が一向に現れないことに不自然になってきた。
「噂じゃ今日転校生来るらしいよ」
飛田君がそれを聞いてそういえばと話してくる。
「ええ、こんな時期に?」
4月ならまだしも9月という夏休みが終わったばかりのこの季節に転校生とは珍しすぎない?と思いながら言い返す。
「なんでもリコンが原因なんだと」
離婚。という言葉に自分を重ねてしまってあぁ、そっ、そうなんだぁとしか言えなくなってしまった。
私も10歳の時にお父さんとお母さんが離婚してしまってそれから6年間、お父さんとお兄ちゃんとの3人暮らしである。
きっと、その転校生も大変な状況で、複雑な気持ちなんだろうなと考えてしまう。
そんなことを話していると、先生が明るい声で教室に入ってくる。
「遅れてごめんなあ、みんな、席につけ〜」
今日は新しい仲間がきたぞぉーと先生に促されて教室に入ってきたのは、とても綺麗な男の子だった。
- Re: この恋に祝福を。 ( No.3 )
- 日時: 2020/04/04 10:54
- 名前: 樹里 ◆lPDhFl1pDg (ID: XXDJo3cv)
〈note3〉
美人というのは、どこへ行ってもみんなの注目の的である。私のクラスに転校してきた川瀬涼の周りには女の子が詰め寄った。
そんな光景をもちろん男子たちは快く思わず、私の隣の飛田も口々にイケメンはいいよなと羨望の目を向けるのだった。
私はというと、周りの女の子に一緒に話しかけに行こうよとは誘われるものの、イケメンが私のことを気にかけてくれるとは思わないし、第1大勢のひとりになるのが当たり前だろうと思ってその誘いを断っていた。
「篠原は、ちょっと変わってるよな」
そんな私を横目で見ていた飛田がぼそっと言ってきた。
「え、なんで」
変わってるという言葉が褒め言葉では無いことを分かっていたけど、自分がそれに当てはまっているなんて自覚がなかった。
「周りの女子達と連れ合ってないし、かと言ってハブられてる訳でもない」
なんか中立すぎて不思議な感じだとか言う飛田も同じではないかと思うが、確かに私はそう言われると周りの女子とは少し違うのかもしれない。
「私の立ち場が変わってるというなら飛田君も同じだよ」
なんだか黙ってはいられない気がしたので捨て台詞のように言ってやった。
「俺は男だからな、女子とは違うんだよ、俺は"普通"だ、ふ、つ、う!」
私の言葉にムッとしたのかむすくれながら言い返してそっぽを向く飛田が可愛い。
結構男子も女子のことを冷静に見てるんだなと思いながら次の授業の準備をし始めた。
☆
放課後、委員会の仕事を終え、ちょっと暗くなった教室に戻ると、誰も居ないはずの教室に転校生がいた。
あれっと不思議に思いながら自分の席に戻り、机の中のものを取り出して鞄に入れる。
何もしないで自分の席で本を読む川瀬を変だと思った。
「川瀬くん、帰らないの?」
思わずそう声かけずにはいられなかった。
声をかけても聞こえなかったのか川瀬は変わらず本を読み続けている。
肩をすくめて近くによって彼の肩を軽く叩いた。
振り向いた彼と、初めて目があった。
色素の薄い茶色の瞳が私を映している。
きれい……。
思わず見入っていると、川瀬が声を出した。
「えぇと、、、」
はっと見入っていたことが急に恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じながらばっと顔を逸らした。
「帰らないの」
もう一度、同じ言葉を繰り返しながら聞く。
「え、あ……もう、こんな時間だったんだ」
気づかなかったと小声で腕時計を見ながら言って
「ありがとう、夢中で本読んでて下校時間忘れてたよ」
「あ、うん……どういたしまして」
イケメンでもそんなことがあるのだと思いながら向けられる綺麗な笑顔に戸惑ってしまった。
「それじゃぁ、私、帰るね」
沈黙に耐えきれず、またなんて言っていいのかその続きの言葉が浮かばず、彼に背を向けて急ぎ足でその場を去った。
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