コメディ・ライト小説(新)
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- 僕たちの青春デイズ
- 日時: 2020/05/14 15:11
- 名前: 蒼生青空 (ID: H4NN94uP)
初めまして,こんにちは.蒼生青空と申します.
初投稿で至らぬ点もあるかと思いますが温かい目で見て頂けると幸いです.
※注意※
・不定期更新
・誤字脱字が目立つ
・作者の語彙力が無いので読みにくい
・アンチコメ等しないで下さい
start→2020.4,29
end→
――――これは、8人の少年達が紡ぐ日常を描いた,ちょっと不思議な青春物語である.
▼目次
・PROLOGUE>>1
・STORY1:新しい友達>>2
・STORY2:
▼主な登場人物
津田真紀
16歳.いつも眠そうにしていて無気力.二つ上の兄が居るが,あまり仲良くはないらしい.普段は優しいが家族の話をすれば途端に不機嫌になる.
窪田颯
15歳.真紀の幼馴染で,いつも明るく,能天気.ポジティブ思考で,どんなことも前向きに捉えており,やると一度決めたからには一生懸命こなす.怒る事は滅多にない.
渡部朔斗
16歳.気に入った人にはとことん甘いが,それ以外には容赦なく毒を吐く.またイラストを描くのが上手く,常にスケッチブックを持っており,取られると怒る.
細山日向
16歳.冷静沈着でクール.誰に対しても敬語は外さない.無表情かと思えばそうでもなく,意外と表情豊か.しかし心を開いている人限定.
倉城淳
16歳.とある理由から女装を始めた.いつも元気で明るく,よく笑っているが時々表情が陰る事がある.
小川帆澄
16歳.天然で,意外と子供っぽい性格をしている.からかうと,面白い反応が返ってくるのでよく遊ばれており,それを本人はどうにか止めさせたいと試行錯誤中.
岸土幸哉
15歳.控えめな性格で大人しい.頭が良く,学年首席になる事もよくあるが,それを鼻に掛ける事は無い.超がつくほどのお人好しで,何かお願いをされると断れない.
安堂那留
15歳.口が悪く態度も悪い.人間不信の不良で、放課後よく繫華街の路地裏で喧嘩をしている.しかし親友である幸哉の言う事は大人しく聞くことが多い.
- Re: 僕たちの青春デイズ ( No.3 )
- 日時: 2020/05/18 09:22
- 名前: 蒼井青空 (ID: H4NN94uP)
【side那留】
「もう、那留ってば入学式サボってたんでしょ?」
「別にどーでもいいだろ。てかいつの間にその情報手に入れたんだよユキ」
ふわふわとしていて柔らかそうな焦げ茶色の髪に、丸い形の銀縁眼鏡。
“ユキ”こと岸土幸哉は、小学校からの付き合いで、今では親友と呼べる間柄だ。
「廊下で先生達が嘆いてたんですー!!全くもう、あれほどサボるなって僕言ったよね?」
言葉を詰まらせながら少し下にある顔に視線を移せば、頬を膨らませているユキの姿が。
普段は眼鏡を掛けていて気付かれない事が多いけれど、男の俺から見てもユキは美形の部類に入る。だからその辺の女よりは断然可愛い訳で。
「…わり」
思わず素直に謝罪の言葉が口から出ていた。
別に可愛さに負けたという訳では無く、これは単にユキだけ。女より可愛いユキにあんな仕草されたら誰だってノックアウトされるに決まってる。
現にユキは、小学校でも中学校でも、女だけでは無く、野郎共の人気までかっさらっていた。まあ、といってもその人気は必ず水泳の授業の後から出始めるのだけど。
概ね、水泳の授業ではユキは眼鏡を外すから、素顔のあまりにも整いすぎた顔に惚れたんだろう。毎年夏になるとここぞとばかりにユキの周りに人が集まるのがその証拠だ。
とは言え、あいつ等と同じくユキを恋愛対象として見た事は一度もない。あくまで俺にとってユキは親友だ。
けど、ユキの傍に居て、人間の本性とやらを目の当たりにしている俺がそう簡単に他の奴と打ち解けることはなく。
他人を拒絶する代わりに、俺はずっとユキの傍に居た。
けれど人気者のユキの傍に居る事は、今まで通りとはいかず、幾らか反感を買う事も多かった。否、普通なら男友達同士仲が良いのは喜ばしい事のはずで、何も反感を買うことは無いと思うが、なんせ男達からの人気もあるユキである。
それは単なる友情では無い者も多かったらしい。まあ、はっきり言えばユキを好きな男が居たという事なのだが。
そして、そのユキに好意を抱いている男達の嫉妬心を知らぬうちに煽っていた俺は、良からぬ噂を立てられ、上靴は隠されて、教科書はボロボロにされるというような被害にあった。勿論ユキには気付かれないようにしていた奴等。俺もユキに心配は掛けたくなかったから黙って毎日を過ごしていた訳だけど…。
毎日こんな嫌がらせを受ければ、誰だって精神的に病んでくる。誰にも言えずにモヤモヤしていた気持ちを晴らしたくて、俺は夜の繁華街に出て繰り返し喧嘩をするようになった。
それと同時。
ユキ以外の人間の事を、完全に信頼出来なくなってしまったのである。
「素直じゃん。でも実際に那留が行動した事無いからね。何か怪しいけど…まあ、いっか」
考えに耽っている所をユキの言葉が現実に戻してくれる。
ハッとしてユキに返事を返そうと隣に視線を移した。
「まあいーのかよ。だったら俺は自分の好きにするけどな」
「でも那留。今日は教室に居ないとまた誤解されちゃうよ。本当は那留、滅茶苦茶優しいのに誰かを生徒を虐めてるとか、教師からお金をたかってるとか!僕の方が那留の事知ってるのにあんな好き放題言わないでほしいよね。しかも那留も否定しないしさあ!髪も金髪に染めちゃうし…」
当時の事を思い出してきたのかユキの頬が徐々に膨れてくる。
別にユキが知らないだけで俺は繁華街で暴れていたのは事実だし、もうあいつ等に何と言われようがユキさえ居れば良いみたいな思考だったから、あの時はやけくそだった。
周りが俺を冷酷非道な不良だというのなら、そうなってやろうって。
金髪に染めたのも勢い。けど今は気に入ってるからこうしてるだけ。こればかりはユキに何と言われても黒色に戻すつもりはない。
「まー、昔の事だろ。んな顔すんなって。俺はユキさえ居ればそれで良いんだか――――」
「駄目なの!」
ユキの声が俺の言葉を遮る。
そして膨れっ面のまま俺を見上げてもう一度「それじゃ駄目なの!」と言い放った。
きっと俺の顔は、何が駄目なの?というような視線を向け、小首を傾げていただろう。
否、実際そうしている。
「那留は、もっと沢山の友達を作るべき!
いっつも那留は僕といるでしょ?ちょっとは他の友達も作らないと大人になって人間関係作るの大変だよ」
「大人の事は大人になって考えりゃ良いだろ。第一俺はユキ以外と馴れ合うつもりは無い。
……んまあ、でもユキがどうしてもって言うんなら、作ってきてもいい」
(勿論“表面上”だけどな)
内心で俺が付け足した言葉には気付かないユキは、さっき俺が言った言葉に瞳を輝かせた。
「ほんと!?ね、ね、だったらさ、教室に誰か人居たら挨拶してね!で、その人達と友達になるの!僕、知らない人と話すのあんま得意じゃないけど那留の為に頑張るから!」
ふん、と鼻息荒く話を進めていくユキ。
もうこれは、決定事項らしい。まあ確かに、ユキは元々引っ込み思案で知らない相手に話し掛けに行くような奴じゃない。
…そんなユキが俺の為に人肌脱いでくれるなら。
――――と、いうように。
ユキが居たからあいつ等に挨拶しに行った俺。
勿論、これからこいつ等と行動を共にしている未来なんか、これっぽっちも考えちゃいなかった。
だけどユキとあいつ等が同じくらい大切な存在になるのは、そう遠くない未来。
そう。ホント、直ぐの事。
- Re: 僕たちの青春デイズ ( No.4 )
- 日時: 2020/05/18 18:17
- 名前: 蒼生青空 (ID: H4NN94uP)
【side颯】
あれから何とか爆睡していたマーくんを起こして、無事にホームルームを迎えた。まあ、幸哉君はホームルームをサボった那留君をひたすら心配していたけど。
でも結局、那留君が帰って来たのは昼休みで。
幸哉君はものすごい剣幕で那留君を説教中。
でも那留君はあまり聞いてはいないようだ。
三段弁当の二段目に入っていた唐揚げを食べながら幸哉君の言葉に適当に相槌を打っている。
「だから、那留!話を聞いてってば」
「キイテル」
「片言じゃん、もお~」
栗鼠のように食べ物を口いっぱい詰め込む那留君を見て呆れ顔をしながら溜め息を吐く。
その光景を見つめながら、僕は白ご飯を口に運んだ。
こうやって2人を見ても、どうも実感が湧かない。
本格的に高校生活が始まった1日目に、マーくん以外の人達と一緒にご飯を食べているなんて。
「颯、手が止まってる。ただでさえ食べるの遅いんだから早く口動かしてよ」
感動に浸っているというのにどうやら僕の幼馴染はそんな僕なんか気にしてくれないみたいだ。
横から言われた辛辣な言葉にむう、とむくれて見せる。
けど、マーくんは甘くなかった。
何その顔、と言わんばかりの冷ややかな視線を向けてくる。
本当、マーくんの顔って綺麗だから睨まれたら余計怖い。那留君と目が合った時もそうだったけど、マーくんは種類が違う。
那留君のは威圧感が凄くて怯えちゃうような睨みなんだけど、マーくんのはこう、背筋から凍るような……ってそんな事はどうでも良くて。
兎に角マーくんが怖かった僕はいつもより倍の早さで弁当を食べ終わった。
でもやっぱり僕が一番食べ終わるのが遅くて、内心泣いちゃったのは僕だけの秘密。
◇ ◇ ◇
「…と、いう事なんだけど。津田君達、頼まれてくれるかしら?」
――――弁当を食べ終わった僕は、マーくんに「遅い」と散々文句を言われながら何故か職員室に来ていた。
否、僕は此処に来る意思は全く無かったんだけど。
マーくんに「行くよ」と言われて、何処に遊びに行くのかとわくわくして付いて来たのがいけなかった。
目の前に居る担任の先生の髪をぼんやり見つめながら心の中で1人反省会。
何処に行くのか聞かずに付いてきたせいで、何だか凄く面倒臭そうな事を頼まれちゃってるような気がするし。
…話を聞いてなかったから内容は分からないけれど。
でも隣で真面目な顔をしてマーくんが頷いていたから、慌てて頷いて、僕も合わせておいた。
「はあ?何で俺まで―――――むぐッ」
「?安堂君、何か言った?」
「はいッ!俺に任せて下さいって!」
「むむむ!?んーッ!!」
「あら、頼もしいわねえ」
けれど、合わせようとしない男が1人。
まあ、行き先が職員室だとは微塵も思ってなかったから遊びに行こうと乗り気じゃない那留君も強引に誘って、…よりによって場所が此処だもんね。文句を言いたくなるのはよく分かる。
否、もう本当に御免なさい。
幸哉君に口を塞がれ、必死にもがいている那留君を横目に、どうか僕がこれからも生きていけますようにと手を合わせて祈った。
「でも、俺家とか分からないですよ」
「嗚呼、大丈夫よ。近くに住んでるから。地図を見れば一発よ。貴方もこの学校の近くに住んでいるでしょう?」
完全に頼りにしている担任の先生。
流石マーくんだ。中学で3年間学級委員を務めていたからこそ滲み出る安心感は伊達ではないらしい。
あ、感心している場合では無かった。これ、絶対僕も行かないといけないやつだった。
担任の先生から頼まれたのは、早速登校拒否をしている生徒にプリントを届けに行ってほしいというもの。入学式の日に本人から「僕は学校に行かないのでよろしく」と電話がかかってきたらしい。
先生も申告されての登校拒否は教師生活で初めての事だったから、面食らって碌に会話も出来ないまま電話は切られてしまい。
今日までずっともう一度話をしようと連絡をしていたらしいけどオール無視。全く相手にされなかったので、強行突破で家庭訪問しようとの思考に至ったそうだ。
とはいえ、先生も忙しい為、一番頼りがいのありそうなマーくんにこの件は任せたいとの事。
本来なら、僕達は参加しなくても良かったはずのこの仕事。
マーくんの所為でいつの間にやら僕まで参加しなければならなくなっているがまあ良いか。
不機嫌そうな顔をしながらも、那留君だって文句は言っていないようだし。
…幸哉君がずっと口を塞いでいるのは、見なかった事にして。
- Re: 僕たちの青春デイズ ( No.5 )
- 日時: 2020/05/18 18:53
- 名前: 蒼生青空 (ID: H4NN94uP)
【side真紀】
長かった授業は終わり、放課後。
「倉城」と達筆な字で書かれた表札と、先生から貰った資料を見比べる。
どうやら此処で間違いは無いようだ。外観は和風建築で、外部からの侵入を拒むかのように立っている門に若干威圧感を感じるけれど。
まあ、相手がどんな家の奴だろうと流石に一般の高校生には手を出さないだろう。
…多分。
「よしじゃあ入ろう」
「え、待って待て待て待て!どうやって入るの?まさか豪快に此処から入るなんて言わないよね!?てか本当に此処に居るの?倉城淳君は…」
「居るよ、勿論。先生から貰った資料に書いてあるし」
入ろうとした途端腕を掴んで必死に引き留めてくる颯に資料という名の地図を渡す。
その右端にはピンクの付箋で「外観は極道っぽいけど気にしないでね」と書かれていた。何で1回も倉城君の家に行ったことのない先生がこの外観を知っているのかは謎だが、最近はネットなんかで調べられるからな。
大方仕事の合間を縫って調べてくれたんだろう。
大体の外観は知っておかないと例え地図があれど目的地に辿り着けないし。
「つーか早く入ろうぜ。ったく、何で俺がこんな事しなきゃなんねえんだよ」
低い声で文句を零しながら後ろで俺達の様子を見ていた那留が扉を開けようと動き出す。
昼休みの時は急に知らない奴等が居てびっくりしたけど、どうやら俺が朝寝ている間に颯と仲良くなったらしい。颯がご飯を食べながら説明してくれた。
だから俺も昼休憩の間に話したりして、お互い名前で呼び合う程の関係にはなったと思ってたのに。
「ほーら開いた。津田達も早く行こーぜ」
…どこか線を引かれているように感じるのは、気のせいかな。
大きな扉を蹴り破って無理矢理開けた那留は、悪びれる様子もなく、にやりと口角を上げる。
そして後を付いて行っている幸哉の手を引きながら、前へと進んで行く後ろ姿を見て、ぼんやりとそんな事を考えた。
◇ ◇ ◇
「へえ、それで鍵かかってた門蹴り破って来ちゃったんだ!ははははっ!!君面白いねえ!名前何て言うの?」
「んあ?俺か?俺は安堂」
「じゃなくて下の名前だよ。も~」
家の一部が壊されたというのににこにこと那留と楽しげに会話をしている倉城君。
否、倉城さん…?
兎に角俺達は、出されたお茶をちびちび飲みながら目の前に座る倉城君の格好を凝視していた。
腰まで伸びている髪は黒色でさらさら。
睫毛は影が出来るほど長く、ふわりと笑うその顔で、何人もの男が虜になるであろうその容姿。
おまけに服装は、黒を基調としたゴスロリと呼ばれるやつで…。
どこを取っても、どう見ても女の子に見えるその人。
最初に見た時は倉城君の兄妹か何かだと思ったから、本人の口から倉城淳と言われた時には驚きすぎて暫く固まっていた。恐らく、那留以外の2人もそうだろう。
倉城君の容姿を見ても大して驚かなかったのはきっと那留くらいだ。
俺なんか、倉城淳は女の子なのかも、と態々先生に連絡したぐらいなのに。
因みに先生からは「何言ってるの?男の子よ」と何の躊躇いもなく言い切られてしまった。
電話越しから聞こえたタイピング音で、そういえば先生は忙しかったんだと思い出して、慌てて電話を切ったんだけれど。
(…世の中にはこんな人達も居るって知ってたけど。やっぱり実際に見た事無いからちょっと驚きだな)
これが所謂男の娘というやつか…。
家の外観が外観だっただけに予想の斜め上を行く展開にもうついていけない。
けど、性格は親しみやすそうで良かった。
これで人嫌いで門前払い受けてたら絶対心折れてた。まあ、門は那留が壊してしまったけれど。
「下の名前?那留だけど?」
「ふーんじゃあ那留ちゃんだね!他の3人は!?」
「へ?」
ボーッとしていた所に話題を振られ、間抜けな声を出して顔を上げる。
すると早く話してというように黒色の瞳がキラキラと輝いた。
「……んと、真紀」
他の2人が僕にトップバッターを譲ってくれたので、素直にそう答える。
すると倉城君は「じゃあマサちゃんだねえ!」と飛び切りの笑顔を見せてくれた。
「淳の事は、淳ちゃんって呼んでね!君とか堅苦しいのは無しだよお!メンドクサイから!!」
そう言いながらパチン、とウインクを一つ。
…それから自己紹介大会が繰り広げられ、本題に入れたのはもう随分日が落ちた頃だった。
本当は、那留が何度もプリントを渡そうと話題を変えようとしていたのだが、偶然なのか必然なのかそれを拒否するようにマシンガントークで話し続ける淳に太刀打ち出来ず。
こんな遅くまでなってしまったという訳だ。
「って事で、はい。プリント」
鞄を漁って、茶封筒を取り出して淳に渡す。
一瞬、淳の顔が歪んだ。
「ぷりんと?あー学校の。態々どーも」
低くなった声と、ピリピリし始めた纏う空気。
「じゃ、そろそろ帰んなよ。もう用は無いんでしょ?」
怒ったような声に顔を上げる暇なく半ば追い出されるように玄関まで追いやられる。
急に態度の変わった淳に疑問を抱きながら、俺達は倉城家を後にした。
- Re: 僕たちの青春デイズ ( No.6 )
- 日時: 2020/05/22 20:50
- 名前: 蒼生青空 (ID: H4NN94uP)
【side淳】
「あーあ、どうしよう。態度悪かったよね。折角仲良くなれたと思ったのに」
普段は何も無い机の上に、飲みかけのお茶が入ったコップが4つ。
これらを見ただけで心は浮き立つのに、僕は彼等に酷い態度で接してしまった。
マサちゃん達と、あいつ等はまるで違うのに。
「嫌われ、ちゃったよねえ……」
マサちゃんがくれた茶封筒をジッと眺め、そっと撫でてみる。
今の僕の担任が書いてくれたであろう「倉城淳様」と書かれた丸っこい字が、あの糞担任とは違うと教えてくれているようで。
時の進みを感じて、少し心が楽になった気がした。
思い切って封を切り、薄い束になっている髪を取り出す。
入学式からのプリントだから然程多くはなかったけれど、もう授業は進んでいるようだった。授業で使ったであろうワークシートを見ながら乾いた笑みが零れる。
当たり前だけど中学生も殆ど学校に通っていなかった僕には、全く理解出来なかった。
一瞬破り捨てたい衝動に駆られたけど、やめておいた。
机の上に放り投げる。
そして乱雑に散らばったそれの中に、明らかに他とは違うものを発見した。
ピンク色の封筒。
真っ白なB5サイズの紙が多い中で、それはあまりにも目立ちすぎた。
落ちていた封筒を急いで拾い上げ、中身を読んでいく。
何だか難しい事ばかりが書かれていて、訳が分からなかったけど、きっと要は学校に来いということだろう。
(行きたくないのは変わらないけど、マサちゃん達に謝りたいなあ…)
本来ならば、僕に早く学校に来いと諭しているような文を見つけたら即刻破り捨てていた。
けれどマサちゃん達のことがすごく心残りで、その行為をする事を躊躇わせる。
「学校、ねえ…」
1人、リビングにあるテーブルに頬杖を突きながら小さく呟く。
まさか、聞くのも見るのも言うのも嫌なほど嫌悪したこの言葉を自分から言うことになるとは全く予想していなかった。
そして、この後下す自分の判断も、全くもって予想外。
“人間、自分自身も展開が読めないような行動を取るもんなんだな”なんて吞気なことを考える。
「行ってみようかなあ…」
先程の呟きに続けるように言ったその独り言は、破壊されていた扉を見てかショックで気を失い道に倒れてしまった父親を見つけてくれたうちの若造からの電話の着信音により、かき消されたのだった。
- Re: 僕たちの青春デイズ ( No.7 )
- 日時: 2020/05/24 22:25
- 名前: 蒼生青空 (ID: H4NN94uP)
【side幸哉】
先生から受け取った封筒を渡した途端、態度が変わってしまった淳君。どうやら学校というものが嫌いらしい。入学式前に登校拒否宣言をしたのも、ただの我儘ではなさそうだ。
けど、それより僕達は淳君のあの態度により心穏やかでは無かった。淳君の事情なんて知った事ではないというように、帰りは不穏な雰囲気が漂っている。
特に那留なんか、明らかに怒りが溜まっているようで、壁を蹴ったりしていたから腕を掴んで拘束しておくのが大変だった。
くぼ君と真紀君はそんなに怒っているようでは無かったけれど、顔を俯かせ、無言で歩いていたのを見れば、やっぱり落ち込んでいたのだろう。
兎に角淳君の家に行く前よりずっとテンションが低かった帰り道を乗り越え翌日。
朝登校するのが早い僕達は、再び4人で集まって会話をしていた時だった。
「それでね、その人が――――――あ…」
「え、何々気になる。途中で話止めないで颯」
くぼ君の話を熱心に聞いていた真紀君は、ずいと顔を近付けながら話の続きを催促する。
それを横目に見ながら、僕はくぼ君が視線を向けている所と同じ方向を見た。
すると、黒髪をツインテールにして、女物の制服に身を包み、少し顔が強張らせるも堂々とした足取りで、手の持っている紙を見ながら自分の席に座った少女。否、少年が居たのだ。
そう。昨日の帰路を最悪の空気にしてくれた張本人、倉城淳君だったのである。
「淳ちゃん…」
地味に淳君がこう呼んでほしいという要望に、律儀に応えているくぼ君の声が微かに聞こえる。
僕も、口には出さなかったものの脳内では彼の名前を呼んでいた。
昨日訪れて、僕等の担任が用意したプリントを渡した時は嫌悪感しか抱いていない表情をしていたのに、一体どういう心境の変化だろうか。
まさか一晩で思考を改めたのか?否でもあの時の重低音はそんなに簡単に意見を変えられるものではない。初めて会った僕でさえそれを悟ってしまうほど、彼の学校に対しての不快感はあからさまだった。
きっと、学校にそこまで苦手意識を持つ何かが過去にあったのだろう。
とは頭の端で考えてはいたけれど、本当にこの展開は予想していなかった。
まあでも、学校に来てくれるのは喜ばしいことだよね、うん。
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