コメディ・ライト小説(新)
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- テンプレ展開が嫌いなので、世界征服します
- 日時: 2020/07/19 16:42
- 名前: 春夏秋冬 (ID: r6yRxP5o)
初めまして、春夏秋冬(ひととせ)と申します。
初心者ですので、お目汚しかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
- Re: テンプレ展開が嫌いなので、世界征服します ( No.1 )
- 日時: 2020/07/19 18:01
- 名前: 春夏秋冬 (ID: r6yRxP5o)
【プロローグ】
リーベルガング王国、ゼンガン村。
俺が改めて産まれた世界は、まるでRPGの舞台のような世界だった。
元々、俺は日本という国で生活していた。平凡に学校に行き、平凡に仕事に就き、平凡に日々を過ごしていた。だが、終わりというのは唐突に来るものらしく、仕事帰り飲酒運転の車に撥ねられ、俺の人生は終わったはず……だったのだが、気がついた時に目の前に見えたのは、見たこともない外人達と見たこともない部屋だった。
声を出さそうとしても、発せられるのは泣き声だけ。体を満足に動かすこともできず、小学生くらいの少女に抱え上げられた瞬間、俺は自分の頭がどうにかなったのだと思った。
だってそうだろう?漫画やアニメじゃないんだから。
それから16年、今ではすっかりこの世界での生活にも慣れてしまっている。電気やガスがなくて初めは不自由さも感じていたが、こっちの世界では俗に言う魔法が存在し、また見るもの全てが新鮮で、前世ではその他大勢の一人でしかなかった俺が、確りと認識されている気になれる。
一つだけ不満もあるが、特に揉め事もなく第二の人生としては申し分のない環境だった。
そんな一言で言い表すなら、のどかという言葉がぴったり当てはまる田舎の古びた村の片隅。どこか寂しそうな表情で朝食の支度をする母親を眺めながら、何度目かのため息をつく。
事の発端は3日前、突然物々しい装備の王城の騎士団が乗り込んできて村人が全員集められた。団長曰く「魔族が出た」と。
元々俺が生まれてくるずっと前、この世界は魔族によって支配され人間達は、虐げられてきた。だがそんな人間達を見かねたのか、ある日一人の人間が神から信託を受けた。
勿論、最初は眉唾物で誰も彼の話を信じていなかったが、彼は魔族を打ち払う方法と力を授かっていて、他の人々に分け与えた。
やがて彼を筆頭に人間達は魔族に反乱、見事魔族の王を退け、かくして世界は平和になり、彼は勇者と讃えらえるようになった……というおとぎ話。
正直、全く信じていなかったから、いい大人が何寝ぼけたことをと思ったが、団長を含め団員達が一様に怯え切った表情をしていたことから、少なくとも、よっぽどのことが起きたらしいのは確かだった。
「それで、なぜこの村においでになったのですか?」
「預言者様からの信託があったのだ。魔族が甦った今、勇者もまた甦る。そしてそれがこの村にいると」
村長の質問に返ってきた答えに、村人全員が驚愕の表情を浮かべる。勿論俺もだ。
だって、どう考えてもおかしいだろ。
勇者の子孫を名乗るやつらは貴族の爵位を与えられて王都にいる。
もし本当に勇者がいて甦るというのなら、そいつらの誰かであるべきだ。
そんな村人の心中を察したのか、団長はさらに言葉を続ける。
「預言者様がおっしゃるには、勇者は神に選ばれた者。その血に限らず、神は個人を愛するものだそうだ」
言ってる理屈はわかる。が、しかしだ。普通に考えれば、好意を持っている相手の子供なら少なからず印象はいいはずだ。神であろうと、好みで力を与えた以上そういった心理が全くないとはいうのはおかしい。
「預言者様はこうもおっしゃった。まだ勇者は信託を受けてはいない。ゆえに自覚はないだろう。だが、勇者の証としてはっきりとわかる容姿をしている。それは目の色が左右違うのだと」
その言葉を聞いて、周囲の視線が自分に集まるのを感じ、思わず左目の眼帯を隠すように手で触れる。そんな周りの反応と俺の動きを確認すると、団長が顎で合図し近づいてきた騎士達によって、あっさりと取り押さえられ、眼帯を外される。
そう、俺の目の色は確かに左右で違っている。右目はこの世界の基準である青色だが、左目は白色なのだ。
そのため、家族以外からはどことなく気味悪がられていることを感じたため、眼帯で隠していたのだ。
そこからは俺を置き去りに、話はとんとん拍子に進み、3日後の今日、俺は村を出て王都に向かい、そこで王様に挨拶してから勇者としての旅に出るというわけだ。
両親と6つ上の姉、それと俺の目を見ても普通に接してくれた親友は猛反対してくれたが、揉め事になって迷惑をかけるのは申し訳ないと、俺が了承したのだ。
「ねぇ、やっぱり嫌なら無理にいかなくてもいいんだよ?みんなには私から言っておくから……」
「大丈夫だよ、母さん。俺の心配よりも狩りに出た父さんと姉さんの心配してよ。心ここにあらずって感じだったよ?」
「当り前じゃない。だって、アズマの旅立ちの時に狩りなんて……」
泣きそうになるのを口をきゅっと結んで、耐えている母の姿に申し訳なさも感じるが、内心嬉しさがある。
何もない普通の村人が勇者として冒険に出る。まさにゲームじゃないか。こんな展開、わくわくするのは俺だけじゃないだろう。
だけど、普通にやったんじゃ面白くない。困ってる人を助けて、魔王を倒してゲームクリア……そんな筋書き通りに辿る必要はない。だって俺は誰かに作られたキャラクターじゃなく、俺という個人なんだから。
だから……
テンプレ展開が嫌いなので、世界征服します。
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