コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

土人生
日時: 2020/08/02 23:13
名前: t (ID: AJSrsss3)

会社から帰宅し、料理を作る。といっても、カップラーメンに入れるネギを切るだけだ。
彼はいたってどこにでもいる、平凡な男だ。会社から帰れば自宅の清掃や洗濯などをする。料理はしないがたまに作るのは男飯。テレビを六畳のリビングで夕食を食べながら見るのが彼にとって至極だ。
テレビでは今、滅多にやらなくなった、怪奇現象をテーマにした番組をやっていた。宇宙人に幽霊といった類いは彼にとってどうでもよかったので別のチャンネルに変えた。しかし、ある出来事をふと思い出したので、またチャンネルを戻した。ある出来事とは、
「友人aが消えた」事件である。
中学1年のときだ。

Re: 土人生 ( No.1 )
日時: 2020/08/03 23:58
名前: t (ID: AJSrsss3)

2
友人aは、サッカー部だった。小学生から一緒で、よく遊んだ。中学1年年のある日だ。友人aがテスト前に「数学のノートを貸してほしい」と言うので、貸すために昼食時、学校の屋上から教室に移動した。ノートを取り、屋上に戻ると、一緒に昼食を食べていた、屋上で待っているはずの友人aは、跡形もなく、消えていた。
最初は、もちろん深く考えなかった。しかし、3日経っても友人aは見つからず、消息不明になり、警察も捜査する事態になった。俺が最後に彼と会っていた人物だったので、かなり執拗に当時の状況を聞かれた。何かしらの疑いが晴れるまでは、結構時間が経ったのは覚えている。
あれから15年。友人aは、いまだに見つかっていない。
たまに彼のことを考えながら生活する日々。会社でも、自宅でも至って普通の生活をしているのだが、結構普通じゃない過去が俺にはあった。
食事を終えると、パソコンを開いた。

翌日。朝を迎えた。今日も仕事だ。身支度をすると、いつもの時間に家を出た。

Re: 土人生 ( No.2 )
日時: 2020/08/04 00:18
名前: t (ID: AJSrsss3)

3
何気ない日々が幸せだ、とはよく言ったもので、実際にそうだと思わせる出来事をいくつか経験した。今日も出社の為に歩道を歩いているのだが、天候が一段と心地よく、そう感じた。
正直、クソ会社だった。会社に着くとそう思わざるを得ない。そんな会社に毎日行く。行かねばならない。行かないと食べていけないから。嫌でも行くのだ。

夕方5時。会社を出た。同じ企画部の安藤と共に街中を歩く。安藤が言う。
「なあ、そろそろ衣替えの季節じゃないか」
ああそうだな、と言うと、
「何か、微妙な季節じゃないか、この時期ってさ。衣替えなんて何かいらない気もするね」
といった、訳の分からない会話をしつつ、ラーメン屋に二人で入った。
ラーメンを食べ終えると、安藤が聞いてきた。
「そういえば、昨日の怪奇現象のテレビ見ていたら、お前の話してた友人aの話が思い浮かんだよ」
「あっ、それ俺も見てたわ」
ラーメンを少し残した状態で、それな、と安藤の話しを聞いた。
「中学のときに突如消えた友人aか。まだ見つかってないんだろ?本当すごいよな。実話だものな」

Re: 土人生 ( No.3 )
日時: 2020/08/04 15:02
名前: t (ID: AJSrsss3)

4
「まだ見つかってないよ。本当にあの日から姿を完全に消してしまった。今頃どこにいるんだろう。っていうか、生きてるのかな」
安藤が生きてるよ、と相づちを打つ。
「生きてるって。絶対。こういうのは、生きてるんだよ。拉致だの何だのってあるじゃん?遺体が出てないってことは、生きてるって証拠だよ」
「そうかねえ。でも、どこであれ、生きてて欲しいけどね」

夕闇が辺りを包む。ひぐらしが鳴く。その声はどこか悲しげだ。家路を歩きながら、その声を聞いた。そして、友人aのことを考えた。中学1年で神隠しにあい、あれから十数年経つが、本当に今、彼はどこにいるんだろうか。最大の謎、何故いなくなる必要があったのか。それが知りたい。
自宅のアパートまで来ると、鍵をポケットから取り出し、ドアを開けた。
何かがおかしい、とすぐに感じた。部屋の向こうは、虚無感が漂い、玄関からそこまで行く途中で、「家具が全て無い」ことに気づいた。俺は半狂乱になりながら、うろたえた。周りを見回すが、テレビに冷蔵庫、エアコンなど、今朝まであったはずの家具一式が全て持ち去られてしまっていた。警察に電話しようと携帯を手に取る。すると次の瞬間、声が聞こえた。
「久しぶりだね」
後ろに誰かいる。俺は鳥肌が全身を駆け巡ると同時に、泥棒と相対する覚悟を数秒で持ち、振り返った。
そこにいたのは、

Re: 土人生 ( No.4 )
日時: 2020/08/04 18:43
名前: t (ID: AJSrsss3)

5
知らない男性だった。
「久しぶりに会うと、何か緊張するな。お前、俺のこと覚えてる?」
俺は身体全体が震えているのを体感しながら、目の前にいる、黒いスーツを着たその男の目を見た。男も俺を見ている。目の奥に宿る光のような物は、何かどこかで見たことがあったような気がした。俺は震えながら言葉を発した。
「だ、誰ですか?」
すると数秒後、男は笑った。あはは、と口角を上げ、歯を見せた。
「まあ当たり前だよな。俺たちが最後に会ってたのは15年前だ。俺だよ。」
俺は次第に肩の力が抜けていった。そうだ、この目に、雰囲気に、笑い方。間違いなく、消えた友人aだ。
「な、なんでお前が」
訳がわからないまま、彼に聞く。あの失踪した友人aが、何故今、俺の前に、そして勝手に俺の家に上がり込んでいるのか。
「驚くよな。話すよ。実はあの日、俺が屋上から消えたのは、悪魔に殺されたんだ。信じられないかもしれないが、それが真実なんだ」
俺が無表情のまま彼の話す言葉を脳裏に変換していきながら、話しを聞いた。
「で、悪魔がなんで俺を殺したかだが、それは墓荒らしをしたからなんだ。覚えてるか?お前とよくイタズラで、墓地で墓を荒らしまくってただろ?その墓の一つが、人間の墓じゃなくて、悪魔の墓だったんだ。だから呪われた」
思い出していた。友人aの言うことは絵空事のように耳に入るが、事実が語られていたので、記憶が蘇った。そうだ。俺たちは、遊びでよく墓地で他人の墓を荒らしていた。掘り出した人骨を放り投げたりしていた。
「本来は、お前も悪魔に呪われる。だが、お前にはマジで強力な守護霊が憑いているらしい。俺だけが悪魔に消されたってわけさ。酷い話だ。」

Re: 土人生 ( No.5 )
日時: 2020/08/04 18:56
名前: t (ID: AJSrsss3)

6
ゆっくり深呼吸をした。友人aの話すことにとりとめのない恐怖を感じていた。
「俺は15年も地獄で悪魔の手下になって働いてた。マジでキツかったよ。で、今ようやく自由の身になったってわけさ。人間界に戻れる許可が出た。いやー、やっと失われた15年を取り戻せるってわけさ!」
友人aは、また笑った。
「別に、俺はお前に対して何も思ってないから安心してくれ。お前だけ罪を免れやがって、とは少しは思うが、強い気持ちじゃない。」
俺は息を吐くと、次第に身体の震えがなくなっていくのを感じた。
「まあ、少しだけな、お前の家具くらい拝借したっていいだろ?新生活を始めるんだ。あはは、じゃあ、また今日からよろしくな」


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。