コメディ・ライト小説(新)
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- だから俺は恋を『しない』
- 日時: 2020/10/08 19:51
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
ごくごく普通の高校二年生、空野 ハルは非常に女性から人気があった。別に顔が良い訳でもなく、勉強も普通。運動も微妙。それなのに何故かモテた。死ぬほどモテた。
……がそれを本人は良く思ってはいなかった。モテ男と言えば聞こえは良いが、実際はただの『修羅場製造機』。言動一つで修羅場の十や二十簡単に出来上がる。それならばと、彼女を作ろうなどとした日には刺されること必至である。
おまけにモテすぎるせいでクラスの男子達との関係は最悪。
これはあまりにモテすぎる主人公が全力で恋愛フラグをへし折る、そんな感じの物語。だってフラグ立てたら死んじゃうんだもん。後ろから刺されること間違いなしだから。
※投稿は不定期です。
>>1 プロローグ 修羅場製造機になりたいか? >>2 第一話 急ぎの予定だから
>>3 第二話 話したい事
- 第一話 急ぎの予定だから ( No.1 )
- 日時: 2020/10/05 18:05
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
俺こと、空野 ハルはモテる。めちゃくちゃモテる。それはもう死ぬ程モテる。
昔からだった、この『特性』は。顔も普通、勉強も普通、運動も普通。俺はどこにでもいる普通の高校生の筈なのに何故かモテた。
目が合った女性は顔を赤らめ、声をかければ一目惚れ。俺はこの『特性』のおかげで後輩、先輩、ツンデレにヤンデレ、薄幸の美少女からセレブのお嬢様までありとあらゆる女性を魅了していた。もちろん、告白されたことなど星の数程ある。全てはこの『特性』のおかげ! 呪いのようなこの『特性』さえあれば、そこの君にも、モテ期到来!
羨ましいと思っただろ? 自分もなってみたいとか思っただろ? だが、先達者として忠告しておく。
絶対にやめとけ。ホントに後悔するから。誇張とか一切無しで。
この『特性』をあれば、モテ男になる……と言えば聞こえは良いが、待っているのは『修羅場製造機』としての未来だけだ。
この呪われた『特性』は数多の女性を引き付ける。だが考えても見てくれ、当然その女性達の目標はただ一人なのだから、修羅場取り合いが始まるのは避けられない。
無論、三角関係などと生温いものではなく、ひどいときは数十人単位で始まる上に時限爆弾まで参加する始末。俺を殺しに来てるのかな?
それなら、彼女を作れば少しは収まるのだは無いかと思うだろう。だが、そうは問屋が卸さない。俺一人に対して作れる彼女は一人だけ。(ハーレム願望とかは無いので)すなわち選ばれなかった他の女性達によって修羅場が作られることとなる。さらに彼女を作っても諦めず俺にアプローチするであろう女性ひとには結構心当たりあるので、彼女からは浮気と疑われること間違い無し。さあ、いざ修羅場へレッツゴー!
結論:どのルートも修羅場へ向かっているんだね☆
最後のダメ押しに男子からはもの凄く嫌われており(理由は明白)、男友達など一人もいないぼっち生活を送ることを強要される。ホントに俺が何をしたって言うの?
……話が長くなったが、要するにこの『特性』の所為で大変な目にあっているって話だ。
だがまぁ人間慣れれば何とかなるもんで、『特性』に苦労しながらも死なない程度には生活できていた。
というわけでこれはそんな俺の日常を描いた物語。これを読めば、お前も「モテたいわー」などと言えなくなるはずだ。ホント、もう無理……。修羅場とかマジで勘弁です……。
- 第一話 急ぎの予定だから ( No.2 )
- 日時: 2020/10/06 18:02
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
『放課後、屋上で待ってます』
引き出しに入っていた一枚の手紙には、そう書かれていた。その綺麗な筆跡は男性のものとは思えず、使われている便せんはハートで縁取られていて、ラブレターらしき雰囲気を醸し出している。
「雰囲気っつーか、こんな手紙が引き出しに入ってたら、ラブレターに決まってるよな……」
そして俺は、手紙を片手に放課後の予定について悶々と悩み続けた……
なんてことは全く無く、学校終わったら速攻で昇降口に向かったのであった。どうも、空野 ハルです。
え? 何で昇降口に向かってるかって? そんなの手紙無視して帰るために決まってるけど?
何? クズ過ぎる? これだから素人は……。いいか、俺にとって、女性と関わる=修羅場だ。まして告白なんて一大イベント、面倒なことになるのは目に見えているのだ。
「早く帰って寝よ」
俺は面倒なことは忘れ、夢の世界に逃避行することにしたのだった。
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翌日、俺が教室に着くと、何やらクラスの奴らが一か所に集まって何か話していた。……いや、集まっているといるよりも、誰かを囲んでいるのか?
まぁ俺には関係無い事だし、とりあえず自分の席に座ろうと思い集団の近くを通ると、会話の内容が聞こえてきた。
「具合悪そうですけど、大丈夫ですか?」
「保健室に行って休んできたらー?」
「あ、それなら僕が付き添い──」
「バカヤロー! 抜け駆けはさせねーぞ!」
「チッ」
会話の内容が気になって、チラリとそこに目を向けると、集団の中心には俺でも知ってる有名な優等生がいた。
彼女の名前は、七枝 メイ。
クラスどころか、全校にファンが存在するクール系美少女であり、その生真面目な性格から、「優等生系ヒロイン」、「デレた姿が見てみたい」、「踏まれたい」、「『醜い豚が!』と罵倒̪して欲しい」と言われている。
またその容姿は、「生きた人形のよう」と評され、一種の芸術と認識する人々もいるらしい。
そしてその秀麗な顔は熱っぽく、どことなく気力も無さそうで、確かに不調であることは間違いなさそうだった。
……俺にとってはどうでもいい話だが。具合が悪いなら欠席なり、早退なりすれば良い話。生憎、この程度のことを心配するような善性は持ち合わせていないのだ。
俺は向けていた視線を戻し、自分の席に座って次の授業の準備を始めた。
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「じゃ、今日の授業はここまでー」
教師の間延びした声が、昼休憩の開始を告げる。俺は昼食を食べるために、いつものように男子トイレへ向かおうとした。だが……
「昼食、ご一緒させてくれませんか?」
我らが美少女様七枝さんに、昼食のお誘いを受けてしまったわけだ! やったね! (全然嬉しくないけどな!)
「ごめん、予定あるから」
そう言って俺は足早に去ろうとした。が、腕を摑まれ阻止されてしまう。
「お待ちください、少し話したいことがあるだけですので。お時間はとらせません」
「急ぎの予定だから、ホントに無理だから」
「そうですか……。ちなみにどうのような予定なのか、お聞きしても?」
「急ぎの予定だから」
「どのような予定なのですか?」
「急ぎの予定だから」
「……その予定、本当にあるのですか?」
「急ぎの予定だから」
「昼食、ご一緒させていただきますね?」
「急ぎ、急ぎの予定だから……」
「とりあえず、食堂に行きますか」
掴まれていた腕を引っ張られる。マズい、このままでは食堂に連行されてしまう。せめてもの抵抗にその場で踏ん張ってみるが、七枝の力は思ったよりも強く、力ずくで引きずられてしまう。
「何の用なんだよ、俺とお前じゃ接点なんか無かったろ?」
引きずられながら俺が問いかけると、七枝はこちらに振り向いて答えた。
「昨日手紙を渡した者、と言えばお分かりですか?」
「…………」
何やってくれてんの、昨日の俺。やっぱダメだったんだよ! 流石にラブレター無視はマズかったんだよ! マズい、ここは白を切って乗り切るしかない!
「いやー、き、記憶に無いなー」
こんな美少女と昼食一緒なんてしたら、あっという間に噂になること間違いない。会話の内容聞こえてない筈のクラスの奴らだって、少し騒いでるし。そして、噂になる=修羅場!
「寒空の中、あなたをずっと待ち続けて、風邪を引きかけたののですよ?」
「ウッ……」
いや、お、俺の所為では無い。セーフ、セーフだから、アウトよりのセーフだから……
「クシュン!」
小さなクシャミをして、俺を恨めし気に見る七枝。
「……昼食は屋上で頼む」
俺はとうとう諦め、未来の修羅場をどう避けるか考え始めた。あ、後、明日風邪薬持ってこないとな。
- 第二話 話したい事 ( No.3 )
- 日時: 2020/10/07 18:10
- 名前: あお (ID: ikU4u6US)
「屋上ってこうなっていたんですか。初めて見ました」
人目に付くのを避けるため、俺は七枝さんを連れて屋上に来た。
ちなみに屋上は本来は立ち入り禁止で、扉に鍵も付いているのだが、何かあったとき(修羅場が起こりそうなとき)の避難場所として鍵を開けておいたのだ。
それで、何で鍵を開けられるのかというと、昔、危険生物に監禁されかけたことがあるから。あの時試行錯誤を繰り返し、手探りでピッキングの方法を見つけたのだ。死ぬ気で。いや、比喩表現とか一切無しに、ガチの死ぬ気でね。あの時ピッキングに成功しなかったら、間違いなく死んでいただろう。
まあ、今はそんな話はどうでも良くて、七枝さんの用というのが大事なのだ。
「それで、話たいことっていうのは?」
俺は地べたに座り込み、弁当を広げ始めた七枝さんに問いかけた。
「パクッ、モグモグ……ゴクン。ああ、それはですね──」
弁当の卵焼きを口に放り込み、彼女は告げた。
「あなたのことが好きです。付き合ってください」
……せめて、告白ぐらいは食前にしようか。
「色々聞きたいことがあるんだが……」
「待ってください」
「何?」
「返事を。私の一世一代の告白なんです。まず、返事が聞きたいです」
お前、告白より卵焼き食うこと優先してたよな?
「無論、お断りさせてもらう」
「がーん、そんなー。私の何が悪かったというのですかー」
台詞だけ聞くと残念がっているように聞こえるが、実際は卵焼きをパクつきながらの発言であり、とても残念がっているようには見えない。
「何がっていうか、全部だろ」
「まさかの全否定ですか……モグモグ」
「……とりあえず、卵焼きを食べるのは後にしようか」
というか、コイツの弁当卵焼きしか入ってなくね? え、何コイツ怖いんだけど……。
「卵焼き、あげませんよ」
俺が弁当箱を見ているのに気付いたのか、彼女は弁当箱を背中に回して隠した。
「いや、いらんけど」
「そうですか、モグモグ……それで、私の告白はお断りされてしまったわけですが……モグモグ」
「あ……話戻すんだ」
まだ卵焼き食い続けてるんだけど……コイツの卵焼きに対する情熱は何なの?
「ええ。まぁ、無理ということですので妥協案を提示します」
七枝さんは箸を置き、真剣な顔を俺に向ける。
「私と、お友達になっていただけますか?」
「……それがお前の本音か?」
「……気づいていたのですか」
さすがに、卵焼き食べながらの告白を信じる程バカじゃないなぁ。
「それで、ご返事は?」
「勿論、NOだが?」
「は?」
「いや、だから無理だって」
「何故ですか? 私のどこに問題があるのです?」
存在全部。
「こんな綺麗な美少女と知り合いなんて緊張するから(棒読み)」
さすがに本音は言えなかった。
「なら、顔を隠せば良いのですね?」
「え?」
「そうですね……マスクでは隠し切れませんし、仮面でもかぶれば大丈夫でしょう」
お前の頭が大丈夫じゃないんだが?
「幸い、この学校の校則ではアクセサリーは許可されていますし、仮面をかぶって登校しても問題無い筈です」
周囲の反応という点を除けばな。
「さあ、これで問題は解決されました。ですので、私とお友達になってください」
「嫌だね。全力で拒否する」
「まだ問題があるのですか?」
「当たり前だ。むしろ増えた」
間違いない。コイツ、アホだ。俺が苦手なタイプのヤツだ。
「何が問題だというんです?」
「色々あるが……まず、俺と女子おまえが関わると、間違いなく修羅場が生まれるからだよ」
「修羅場……?」
「自分で言うのも何だが、俺はモテるんだよ」
「えぇ、知ってますよ」
「そんでもって俺に好意を持っている女子は大量にいる。今でこそ女子達は互いに牽制し合って俺への干渉をしてこないが、俺とお前が知り合いにでもなろうものなら、団結して妨害して来る筈だ。つまり、修羅場が生まれるってこと」
「確かにそれは困りますね……」
「だろ? じゃあ、そういうことでこの話は終わりで」
自然に話を断ち切り、その場を去ろうとすると七枝さんに引き留められる。
「それなら、良い解決方法があります」
「は?」
「性転換って知ってます?」
コイツ、本気か……?
「いやいや、知ってるけど、流石に無いって」
無いよな? 無いって言って?
「大丈夫ですよ。法律では性の自由が認められています。面倒な手続きはあるかもしれませんが、どうにかなるでしょう」
「…………」
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバいーーーー‼ どうすんのコレ⁉ コイツ俺の所為で性転換しようとしてるよ⁉ 流石にそれはマズイだろ!
「それでは、性転換の手続きについて調べてきます」
立ち上がった七枝さんはドアノブに手をかける。その目はいたって真剣で、間違いなく本気で性転換する気である。
「待て」
俺は彼女の腕を掴み、断腸の思いで告げる。
「…………友達になろう」
「……はい!」
七枝さんは、花の咲くような笑みを浮かべたのだった。
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