コメディ・ライト小説(新)

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夢と恋の合間は廊下のラムネ瓶で眠らせて。
日時: 2020/10/10 19:23
名前: 地縛霊 (ID: o6EPdGyL)

「ねぇワカー。好きな人ぐらい教えてくれてもいいんじゃないのー。」
ヨリちゃんが詰め寄ってくる。
他の女子たちも寄ってきた。
「学年トップクラスの美女のワカなんだから、少しくらいいいじゃない。」
なにいってんの。言葉の意味の筋が全く通ってない。
なんで美人は好きな人が知れてて当然ってことになってんだ。
というより、私は美人じゃない。
そんな噂微塵も聞いたことないわ。
「あ、あそこにガムが飛んでる!」
必殺。隙見逃げ。みんなが指さした方向を見ているうちに、全力疾走する。
廊下を走る私の横を、歩く君が通り過ぎる。
この時、夏の昼下がりのぬるい空気が爽やかになった気がした。

逃げ切った。巻いてやった。
よっしゃ。密かに小さくガッツポーズを決める。
私ははっきり言って容姿に自信がない。
もともと髪の色が薄く、灰茶色なのだ。
そのため、チャラいと思われることもしばしば。
好きな子がいないわけじゃない。
いる。けど、私には似合わないような、大人しい子だ。
あれ、大人しいわけでもないわ。
似合わないって表現はどうかと思うけど、まあ、そんな感じだ。
疲れ切って廊下の角に座り込む。


「何してんの。」
うぇっ、びっくりした。
上を見上げると、君の顔があった。
「え、じゃ、じゃあ、あんただって何してるのよ。」
「いや、普通に通行人ですけど。図書室行きたいから。」
「あ、そう。てか、話しかけないで普通に通りゃあいいじゃない。」
「え、でも廊下に酔った奴みたいなのいて、そいつが自分のクラスメイトだったら何してるか気になるだろ。」
あ、そっか。ま、どうぞどうぞ。
手をスイスイ動かして、「どうぞ行ってください。構わなくて結構ですから。」とアピールしてみた。
そうすると君は「何こいつ」って目で私をみながら通り過ぎて行った。
やっとリラックスできる。
そう思ったのはつかの間。
「みーっけた。ワカ発見!直ちに捕獲せよ!」
ヨリちゃんの掛け声と共に女子たちが襲いかかって来た。
まんまと捕まえられた。
「ワタクシ、モクヒケンガアリマス。カンベンシテクダサイ。」
言ってみても、聞いてくれない。
なんかもう、尋問みたい。
「あー、もういいよ。教えるよ。
おい、ヨリコ。来い。」
ヨリちゃんの耳元で、さっと名前を言いまた全力疾走。
後ろから黄色い声が聞こえてくる。どうしてあいつらはああなんだろう。
理解が追いつかない。

次は誰もいない理科室に駆け込んだ。
もう、教えたから安心だ。
ガタン。
うおぁあぁぁぁ!ってくらいビックリしたわ。誰だろう。
そこに転んでいたのはまさかの君。
ストーカーか、こいつ。
目が合う。
「いや、お前ストーカーかなんかなの?」
先に聞いてきやがった。てかお前だわ。確実にお前の方が後だったわ。
私がストーカーになったとしても次相手がどこいくのかを察知できるほどハイレベルな技は使えないわ。
「いや、あんたこそ。どうしてここにいんのよ。」
「酔っ払い太郎の行方が気になっただけ。」
「あ、ところであんたの好きな人誰?」
なんか会話の筋通ってないけど、聞いちゃえ。
多分、君の好きな人は私じゃない。そうしたら、ヨリちゃんがやばい情報ばらまいても誤解は解ける。
「いきなり何。」
そうだよね。普通の反応でございます。
「ま、いっか。○7…!.○。」
え?聞こえない。まるで炭酸の中にいるみたいな音にかき消された。
周りがパッと白くなって、いつの間にか水の中にいた。
君も一緒だった。
けど、君はただの抜け殻みたいに、ただ落ちてるだけだった。
呼吸はできる。けど、ひたすらに落ちてる。
レモンの香りがする。
レモネード?あ、レモンスカッシュか。
沈んでいくと、ラムネの香り。
周りがガラスだってことに、今気づいた。
自然とビー玉の匂いがラムネの匂いと錯覚してしまいそうな匂い。
相変わらず炭酸の音が響く。
底についた。
そんな衝撃が、確かにあった。
冷たい床に手がつく。
周りを見渡す。
廊下。
いつのまにか君が消えていた。
ヨリちゃんたちの声が聞こえる。
「みーっけた。てか、そこまで逃げる必要あった?もういいよ。無理させてごめんね。なんで寝てんのさ。早く行かないと授業遅れるよ。」
ヨリちゃんに手を引かれ歩き出す。
これのどこまでが現実だったのか。
わからずじまいで今日1日が終わりに近づく。
カシャン。
涼しげな瓶の割れる音と、炭酸の音色。
私が去ったそこには、ラムネの瓶が割れていた。
これは、夏の誘惑。涼しげな誘拐。
そして、恋という糖蜜を添えたサイダーの魅せる飛び跳ねた水滴の夢。


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