コメディ・ライト小説(新)
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- 金色の鳥が羽ばたいて
- 日時: 2020/10/24 14:44
- 名前: 知らぬ間におまんじゅう (ID: D4wk5Njy)
ドレミファソラシド、その全てを奏でたとき、あなたは羽ばたいたー
「樋山ちゃん、ちょっと手伝ってくれない?」
塩谷さんの高い声が音楽室に響いた。
彼女は私、樋山志寿久のひとつ上の先輩で、同じ吹奏楽部に所属している。楽器はトランペット。私とおんなじだ。
「ごめんねぇ、これあっちに置いといてくれる?チューバの子が大変そうで.....」
我が喜望高校吹奏楽部の部長である塩谷さんは、いつも大変そうに後輩の世話をしている。特に金管を見ていて、いつも練習しているように見えないのに、コンクールとかになると凄く綺麗に演奏するのが本当に憧れる。
「はい、今日もお疲れ様でした。」
私は中学の時はホルンを吹いていたんだけれど、高校に来てから何とホルンが12人もいたので、トランペットに移動した。
音楽室を出て、校門を出て、北へ歩く。
家へ帰る前に、まず公園へ寄る。これはいつものことだ。ベンチに荷物を置いて、トランペットを取り出す。まだ買って間もないから、金色にぴかぴか光っている。
ブー、ブーとマウスピース独特の音が出る。ああ、いい。金管ならではの音、私は大好き。
本体を取り付ける。やっぱり、ホルンより音が高いから、口が疲れる。
トランペットって、ピストンが3つしかないのに1番音域が広いらしい。その分演奏者が頑張らなくてはならない。
30分くらい経っただろうか。私が悪戦苦闘しているところへ、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あれー樋山ちゃんじゃん!頑張ってるねー!」
塩谷さん。
「私、いつもはカラオケでやってるんだけどね、そのカラオケが潰れちゃってね..
今日からここでやろっかなって思ってたんだけど、先客がいたのねえ。」
塩谷さん、やっぱり頑張ってたんだ、、そりゃそうか、あんなにうまいんだもの。
「先輩っ!教えて欲しいんです。先輩に、ぜひ...!」
「あら、そう?じゃあいいよ、教えたげる。ただ私はいつもの私にはなれないよー?」
ニヤリと笑った顔からは、怖さよりも愛しさを感じた。
でもスパルタどころか毎回コーラを奢ってくれるほど優しかったのは、塩谷さんらしいなと思った。
ーーーわたしのトランペット日記。