コメディ・ライト小説(新)
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- アニマルラミナーズ
- 日時: 2021/01/25 22:35
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12910
どもノモケマナと申します。初の作品となります。
投稿頻度はかなり遅いと思いますが応援宜しくです。
一話一話文章長いですが是非読んでくださいね!
もしかしたら別枠であらすじ的なやつ作るかも。
ちなみに作者は何度も投稿したものを確認しているので閲覧過多詐欺になってます。
お知らせ!
今後の内容によりこの作品を複雑・ファジーに移します。
大会が終わり次第このスレッドでは別の作品を書かせていただきます。
引き続きアニマルラミナーズをよろしくお願いします。(移行しました)
〈目次〉
・プロローグ >>1
・1-前章
1話 >>2 2話 >>3
3話 >>4 4話 >>5
5話 >>6 6話 >>7
7話 >>8
〈ありがたき読者様からの返信〉
坂蜻蛉 宙露さん >>9
- プロローグ 『アニマルラミナーズ』 ( No.1 )
- 日時: 2020/12/04 02:14
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
ここは人間と動物が混在する世界。
動物と言っても二足歩行で喋ることも可能、おまけに知性つき。すなわち『人』である。
そんな世界に更に不思議なことが一つ、それは『魔法』。人によって使える魔法は多種多様。もちろん使えない人もいる。
そんな個性豊かな人々が暮らす世界。そこに一人の男がいる。オスと言ったほうがしっくりくるであろうか。そんなことより話を続けよう。
その男は人間ではない。そう、人である(人間も人である)。正確にはペガサスとユニコーンのハーフ、アルコーン。男といってもまだまだ子供だ。人間でいう十四歳ほどである。
小さなツノと少し大きな羽を持ち、青く透き通った髪をして琥珀色の瞳をぱっちりとさせている。
名をペガ・ユニコ。これはペガが『夢』に向かって進み、仲間とともに成長していく物語。
この物語に題名をつけるとしたらただ一つ。
もう皆さんご承知。
『アニマルラミナーズ』
- 1−前章 1話 『早朝の会話』 ( No.2 )
- 日時: 2020/12/07 23:34
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
《ペガ様、朝ですよーー》
──あぁ、ついにこの日がやってきた。
《ペガ様、起きてますかー?》
──やっと……僕の『夢』が叶えられるんだ。
《あれ、ペガ様ー?》
「今日はなんていい日なんだろう。太陽は微笑み、花は歌い、風は僕をやさしく包み込む。そして小鳥が耳元でささやき──」
《ヘ° カ" サ マ》「うわあぁあっ!」
ペガは突然の声に仰天し、肩を跳ね上げた。
《ペガ様、おはようございます。外にいらしたんですね》
声をかけたのは子柄な鳥ロボットだった。
体はメタルに染まっていて、可愛いくちばし、小さな鶏冠がちょこんとついている。ルビーのような瞳をくりくりさせていてとても愛らしい。
「あ、あぁあ、うん。お、おはようピーコ」
ペガは顔を真っ赤にし、声を震わせた。心臓の波打つ速さが上がっていることも分かる。
《大丈夫ですか? 顔が赤くなっていますよ》
ピーコは心配そうに顔を覗き込ませる。そんな健気な不安顔が視界いっぱいに映るとペガの動きはさらにぎこちなくなる。
「い、いやあ気にしないで気にしないで、うっ……」
じっと見つめてくるピーコの瞳に耐えきれず、思わず視線をそむける。するとピーコは悲哀な顔を向けた。
ペガは逆に罪悪感に耐えられなくなり、視線をもとに戻した。そして代わりに話題を変える。
「そんなことよりほら、ついにアレが完成するんだ」
《ええ、そうですね》
焦ったのか、話が要領を得ていないが、ピーコはしっかり理解したようだ。
「そうだよ! 相談所が完成するんだよ!」
急な大声にピーコは驚き、大きな瞳をさらに大きく開き、羽をばたつかせる。
一方ペガは何かを思い出したようで、鼻息を急に荒くし、ピーコに早口攻撃をお見舞いする。
「ついに僕たちの相談所が完成するんだよ、この日を、どれだけ待ち望んでいたか、今までがんばってきた甲斐があったなあ、ああ、早く二人を起こさないと、ていうか恥ずかしさでこれ忘れちゃうとか何してるんだ僕、あ、ピーコ今の気にしないでね、とにかく二人を起こそう」
ピーコはあまりの早口にくちばしを半開きにして唖然としている。ペガはそれに気づくとまた赤面して、すぐに口を指で抑える。
「ああ、ごめんねピーコ。でも本当に嬉しいんだ。まさか僕がここまでこれるなんてね。これもピーコのおかげだよ。僕のことを一生懸命応援したり励ましたりしてくれて……本当にありがとうね」
《光栄です。ですがやはり一番すごいのはペガ様です。あなたは三年前に仰っていたことを見事に実現された。あなたの努力はとても輝かしいものでした。ピーコはあなたの隣にいれたことを心から嬉しく思います》
少し大袈裟な褒め言葉にペガの顔はさらに熱くなり、頭の上についている耳の先端まで血をたくさん巡らせている。
「ありがとう」
ペガは照れくさそうにはにかみ、五文字で感謝を伝えた。ピーコはそれを聞いて柔らかな笑顔になる。
《ペガ様、本当に今日はうれしそうですね。あ、そろそろ支度をしなくてはいけませんね。それではまだ眠っている二人を起こしに行ってきます》
「ありがとう。パッシュ村のみんなにも挨拶しないとだしね。あ、でも僕も一緒に戻るよ」
《分かりました》
そうして二人は丸太小屋へと戻っていった。
- 1−前章 2話 『賑やかな朝』 ( No.3 )
- 日時: 2020/12/04 02:21
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
丸太小屋では異質な三人組が話していた。
「ふあぁ……こんな朝早くから出発の準備かよぉ」
そう言ったのはまぶたを重そうに開いたフェニックスである。
若干不機嫌そうで、いつもは活き活きとしている背中の羽もだらんと垂れている。ペガはそんな力ない仲間の姿を見て自然と口からため息が漏れる。
「もう、フェニー。いい加減寝ぼけてないで支度してよね」
初っ端からこんな調子でこれからの長旅も不安になってしまっているようだ。フェニーは頬を膨らせて、あからさまに不機嫌を主張する。
「まあまあ、良いではないか。焦ってもしかたないだろう……ズズッ」
「ロスはロスでお茶を飲んでないでよ……」
ゆっくり、ゆっくりと茶を飲んでいるのはケンタウロスのケトロス。
普通ケンタウロスといったら上半身が人間、下半身が馬だと思うだろうが、彼は違う。
頭に馬の耳を生やし、尻にはしっぽがついているだけであとは人間と同じなのである。
彼は茶を嗜み終え今度はペガに勧める。
「ペガも飲むか? 眠気覚ましになるぞ」
そんなことを目を閉じて言っている。
「だったらフェニーに飲ませてよ。っていうか準備してよ」
「準備は既に済ました。ではフェニー、茶を飲み目を覚ますと良い」
彼は湯のみを用意するとさっそく──
「ティーメイク……」
すると湯のみの上からどこからともなく出現した茶がコポコポと音を立てて注ぎ込まれる。そして最後に葉が一枚落ち、そのまま浸透して消えていくのだった。
「さあ飲みたまえ」
「おぅ、ありがとな」
フェニーは茶を飲むと、すぐに眠気が去っていくのを感じた。
「おぉぉ、目が覚めた。すっげえシャッキリだ。さすがロスの淹れた茶だな」
「目覚ましの葉を入れておいた。喜んでくれたなら嬉しい……ズズッ」
「ありがとうねロス。ってまたお茶飲んでるのか」
ペガはやれやれといったようだ。
「それじゃあ準備するか!」
フェニーは大きく羽を広げ、やる気を燃え上がらせた。
目に正気を宿し、深紅を身にまとった姿には覇気がよく感じられる。
「僕も手伝うよ。ピーコはもうベアクおじさんのところで待ってるから急ぐよ」
「私も手伝おう……ズズッ」
今日も丸太小屋は朝から賑やかだ。
- 1−前章 3話 『冷静な混乱』 ( No.4 )
- 日時: 2020/12/04 02:26
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
ある大都市と村に挟まれた刑務所では事件が発生していた。
看守長室に向かって慌てて走る音が小刻みに廊下に反響する。
そして看守が一人、思いっきりこの部屋の戸を開く。
「看守長、大変です! 五十六番が昨夜脱走した模様です。担当看守は頭を壁に強く打ちつけ、気を失っていました」
彼は事のあらましを率直にハキハキと説明した。
「なんだって!? すぐに所長に報告しろ。逃走経路の確認も急げ」
「はい!」
彼はすぐに看守長室を去り、所長室へと向かった。
その姿に看守長は感心していた。しかしすぐに事の重大さに気づく。
「脱獄じゃねえか。一体どうやって……」
『──緊急警報! 緊急警報! 囚人が脱獄した模様。直ちに確保せよ』
ニ分ほどで警報がなり始めた。刑務所内は騒然としている。一部の囚人達は脱獄した者に称賛を送り、あとに続こうなどと言っている。
看守たちがするどく睨むとすぐに黙り、お互いそっぽを向いた。
「他の囚人の確認も急げ。逃走手段、逃走経路を刑務所内外すみずみまで調べ上げろ。チューオシティとパッシュ村にはこのことを急いで伝えろ。パッシュ村には警備隊を送るように……」
所長は状況を冷静に判断して看守、刑務官に的確に指示を出している。指示を受けた者たちもすぐに行動を始め、問題の解決に向けてすみやかな対応をとっている。そこに一人の男が現れた。
「所長!」
その男は囚人番号五十六番のいるエリアの担当看守であった。
「デミスではないか。お前のようなベテランが囚人を逃がすなんてな。さて、話を聞かせてもらおうか」
所長はデミスの目をじっくりと見つめる。
「はい。まず……私の不手際によりみなさんに多大な迷惑をかけてしまっていることを心からお詫び申し上げます。本当にすいませんでした」
デミスは深々と頭を下げ、自身の失敗を大いに反省している。
「顔をあげろ。謝るのは良い事だ。だが現在進行形で起こっていることにいくら謝っても解決することはない。話してくれ、昨夜のことを」
所長は優しく、そして厳しくデミスに接する。
デミスは所長の言葉をしっかりと受け止めて話し始める。
「はい。とても馬鹿げた話ですが、なんと……ヤツは魔法を使ったのです」
「なんだって? ここは絶マ地だぞ」
この世界には『魔法』が存在する。多くの人が使えて、人によって種類も異なる。だからそれが使えること自体はおかしくない。
問題はここが魔法の源となる『マナ』が一つもない絶縁マナ地帯であることだ。つまり五十六番が魔法を使ったというのはありえない話なのである。デミスは続ける。
「ええ、確かにおかしな話です。それでもヤツは使った。巡回中の私から鍵を引き寄せ奪い、牢を開けました。私がそれに気づいたときにはもう遅く、ヤツの魔法で吹き飛ばされてしまいました」
所長は少し頭を悩ませたもののさすがは所長といったところか、冷静な判断を続ける。
「では五十六番牢あたりにマナがあるということか。今すぐ調べるぞ」
所長は五十六番牢に向かおうとする。だが……
「いや、先程調べましたがマナは一つも見つかりませんでした」
デミスがおかしなことばかり言うので、所長はどんどん頭が混乱していく。
「なんだと……どういうことだ。五十六番はマナの創造魔法を持っているわけでもないのに」
所長は悩んだ、悩んだ、大いに悩んだ。それでも分からなかった。いくら答えを出してみてもすぐに違うと言われるのだ。
所長はとりあえずこのことを皆に伝えにいった。
* * * * * * * * * * * *
所長の報告から一時間、刑務所では未だに捜査が行われていた。
「看守長。これを見てください。五十六番は出入り口から脱出しています」
一人の看守が記憶魔石を看守長に見せている。
『魔石』とは周囲のマナを利用して魔法を発動するものだ。これは魔法が使えない者でも利用できるため、様々な場面で扱われる。
種類も豊富で攻撃魔法を放てるもの、日常生活に役立つもの、遠くの場所に連絡ができるものなどがある。
『記憶魔石』は周囲の状況を記録し、映し出すことも可能という便利な道具だ。ちなみに看守が見せたものはマナのある離れた場所から刑務所の出入り口を記録している。
看守は映像を見て思わず笑う。
「こんな律儀な脱獄犯がいるとはな。これより前に外部から何者かの出入りはないのか?」
もしいるとすれば、その者が五十六番の脱獄の幇助をしたことになる。しかしその時間帯に人の出入りはなかった。五十六番を除いて……。
「五十六番は一体どうやって脱獄したのでしょうか……」
看守長は至極真っ当な考えを脳裏に浮かばせる。
「デミスによると魔法で鍵を引き寄せて開けたらしい。だが魔法は使えるわけないよな。もしかしたらデミスは誤って鍵を五十六番牢付近に落としただけじゃないのか」
それを聞いた看守もそうだろうとうなずく。
「今デミスは取り調べ中です。直にわかることでしょう」
すると看守長はあることに気づいた。
「ていうか出入り口から出てるんなら逃走経路少しわかるじゃねえか」
看守はハッとする。そして照れくさそうに頭を撫でて言う。
「不可解な脱獄事件に気を取られて完全に忘れてましたね」
看守長は呆れ返ってため息を深くついた。
「何やってんだよ……で、どの方面に逃げたんだよ」
その質問に看守はすぐに答えた。
「パッシュ村ですね」
- 1−前章 4話 『百歩進んでふりだしへ』 ( No.5 )
- 日時: 2020/12/04 02:27
- 名前: ノモケマナ (ID: hDVRZYXV)
「ペガ、準備できたぜ」
フェニーは二十分ほどで準備を終わらせたようだ。そして急に様子が変わる。
こんな速く終わらせた俺を褒めてくれと言わんばかりに胸を張り、誇り高らかにしたり顔。要するに調子に乗っていたのであった。
「それじゃいこっか」
ペガはフェニーの褒めてアピールをサッとスルーして最終確認をする。居間、台所、バルコニー、トイレ、クローゼットの中……と丹念な点検を終えるとすぐに荷物を持ち、小屋から出発し始めた。
「あーあ、結局褒めてくれなかったか、今でもいいんだぜ」
フェニーはまだ諦めていなかった。
「もう、いつまで戯れ言言ってんの。そもそもそんなキャラじゃないでしょ」
ペガはさっさと話を済ませる。だがフェニーは諦めない。今度はわざとらしく目を潤ませ、羽を垂らして悲しそうな雰囲気をだし、ペガをじーっと見つめる。
「もう馬鹿なことしてないの」
ペガはそんなことには構わず急いで目的地へ向かう。
じーーっ
「ほら、もうすぐ着くよ」
徐々に目的地の丘に近づく。黄色やピンクで染まった花々が美しく咲き誇っていた。優しい風が花一枚一枚を揺らし、ペガ達を歓迎しているようだ。
ペガは前に進むにつれ気持ちが高ぶってゆくのを感じて、心を踊らせる。自然と足取りが軽くなり、口元が緩み始める。
じーーっ
フェニーは諦めずにペガを見つめ続ける。さらに瞳に涙をためて。
だがペガにはフェニーに付き合う余裕などもうないようだ。口元の緩みを必死に抑え、気迫を込めて二人に伝える。いや、伝えるというよりは自身への再確認。これから起こることに喜びのあまり気を失わないための注意喚起と言えよう。
「フェニー、ロス、もう着くよ!」
嬉しさや楽しさ、喜びや開放感が一つになった言葉の塊がフェニーにぶつかる。
しかしもう一人に当たることはなかった。そう……
「ロスがいない!」
じーーっ
「えっと、え? とりあえず速く準備できてすごいすごい……って違う!」
衝撃的な状況のためかペガは思わずフェニーを褒めてしまった。
フェニーは途端に満面の笑みを浮かべる。
「やったぜ、俺は決めたことは最後までやり遂げる男だからな」
フェニーは羽を高く広げ、胸を張り、得意な顔をしている。
「そんなことよりロスがいなくなっちゃったよ!」
ペガはあたりを見回す。だが映るのは一面に咲く花々だけだった。
「とりあえず今来た道を戻るよ。フェニーはこの荷物持って先に行ってて」
荷物を下ろし、体を真後ろに向ける。
「んじゃ待ってるぜ。実は小屋に忘れちまったとかな、ははは」
フェニーは冗談まじりなことを言い、馬鹿みたいに笑い声をあげている。
「一番嫌なパターンだよ」
それに対しペガはおおきく気落ちする。
「それじゃ行ってくるね」
戻ろうとすると花々は必死に行くな行くなと揺れている。だが立ち止まっている場合ではない。
そんなことを考えながらペガは全速力で花道を駆け下りていった。
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