コメディ・ライト小説(新)
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- 頑固
- 日時: 2020/12/07 16:14
- 名前: 知らぬ間におまんじゅう (ID: QCyKwm9.)
第一に、親に申し訳ないなと思った。
自分のやりたいことを探して東京に出てきたはずだった。大阪のはじっこからやってきた私は、東京こそ夢が詰まった、いわゆるドリーム・シティであったと感じていた。
でも実際は、バイト先が見つからなくてずっと親のすねをかじってばかり。ろくな人生にもならなかった。
あとは、信濃町に出てきたということも失敗だったと思う。野球が好きだったから、神宮にすぐ行ける、ぐらいにしか思っていなかったが、新宿から乗り換えてきた人の数が尋常じゃなく、田舎者の私に耐えられるような人混みはもうとっくに過ぎていた。
夏は花火も上がるから、もう音が凄くて。
そんな私でもなんだかんだで12年、東京に住んでた。まあ、ずっと信濃町ってわけでもなくて、上野とか、有楽町とか、とにかく都心に住みたかったのだが......
神奈川の相模原というところに妙に惹かれてしまった。なぜだろう。ずっと都会に憧れていたはずなのに。
なんだか、丁度良かったのかもしれない。微妙なラインだから。
南区とか橋本とか、あの辺は都会(青森から見たら)で、緑区の奥の方に行くと山々が連なっている。両方を兼ねそろえているのだ。
結局、相模大野に住むことにした。
そして、就職した。やっと。東京に出てから、15年後だった(それまではバイトやらパートやらを転々としていた)。
就職というか...テレビに出る、つまり、俳優になった。
正確には女優?
売れた。まあ、売れた。うんと、売れた。見ない日はないくらい。
ドッキリも仕掛けられたし、体当たりもやったし、映画にも出た。
でも相模大野にいても、声をかけられないのだ。
そして、5年ほど活躍したところで、母から連絡があった。
「ああ、綾?元気でやっとる?」
「うん、おかげさまで。」
「Twitter、#渡辺綾美って調べてみいや」
Twitter....私が最も恐れているもの。
現実逃避したかったが、そうにもいかないみたいだ。
#渡辺綾美と打つ。すると、そこに並べられていた投稿は、私への誹謗中傷ばかりだった。
『渡辺綾美って偉そうでうざい』
『売れてるからって偉そうで草』
『スタッフへの態度が悪過ぎwww』
『渡辺綾美は自己中。女優なんてやめちまえ』
てっきり人気者だと思っていたはずなのに、何だよこの言いようは....
どうりで話しかけてこないわけだ。
遂にはもう辞めることになった。でも、誰一人として心配の投稿を書き込んでくれなかった。
母も、連絡をくれた。
「もう一回、やり直せばええから。」
「わかったよ、じゃあもう一回オーディション受けてみる。」
反省しないのかコイツは、と思われても良い。私は私のやりたいことをやる。
この場合、ハッピーエンドでもなんでもないけど、自分の頑固さをありのままに出してやる。見てろ、私を叩いた奴等。
またテレビで、私を見つけたら、今度は私がお前らにこう言ってやる。
「お前も頑固やな!」