コメディ・ライト小説(新)

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全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます!
日時: 2021/08/22 01:15
名前: ストロベリー (ID: FLOPlHzm)

  「私は…私はティナリ・ラティス様にこのようないじめを受けていました!」

金髪の女の子が鋭い瞳の女性をい抜く。
すると回りの人々は口々に何かを呟く。
その金髪の少女の前に立ちはだかる整った顔で青色の澄んだ瞳の青年。

「ティナ。いや、ティナリ・ラティス。貴方とは婚約を解消させてもらいます。」

ティナリ・ラティスと呼ばれた女性はワナワナと震えその場で跪く。

「そんな…」

次の瞬間。画面には「ラート・ジリーアル攻略!」という文字と共に気分を高ぶらせる音楽と共に鳴り響いた。

「やったぁーー!へー好き全クリだぁー!」

その画面をみていた私は手を挙げてのけ反る。
ここまで来るのにどれほどの時間を費やしたことか…
時計を見るともう午前3時。
そろそろ寝るかぁ…


─────次の日私は16歳の生涯を閉じた。



  


  目次

◯ティナリ・ラティス 前世の記憶を思い出す◯
>>1-4

Re: 全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます! ( No.2 )
日時: 2021/02/06 13:00
名前: ストロベリー (ID: flKtWf/Q)

私はそこら辺にいる普通のJKだった。
いや、普通とは程遠いかもしれない。

自分で言うのもアレだが、運動も成績も平均より良かった。なぜなら…私の家には父も母も居なかったからだ。昔、私が小3の頃母が何人もの男と不倫をしており、父は愛想を尽かし離婚した。その父も中々の屑っぷりで、私を育てるにはお金がかかるからと母に押し付けた。それからわたしと母は一軒家からマンションに引っ越し、母は私にお金を渡すぐらいしか顔をださず、毎日男と遊んでいる。一人でなんでもできるようになるために私は血のにじむような努力をした。したけど…現状は変わらぬまま、友達もできずに中学生活を終えた。そんな私は心の穴をうめるために乙女ゲームに没頭した。そこら辺にある乙女ゲームを全て制覇していった…。いわゆるオタクだ。

そんな私は16歳で命を落とした。
母にマンションから突き落とされたのだ。
理由はまぁ、養育費がかかるからとか、邪魔だからとかそんなもんだろう。
こんな感じで愛のない環境で育った。

そんな私は転生したら公爵の一人娘になってるだなんて…
今までの私は甘やかされすぎて育ったためかなり横暴でメイドを困らせていた。

そして今私は前世の記憶を思い出した。考え方も数時間前の私とまるっきり変わっているため性格も劇的に変わっている。でも、そうなると私は誰なのだろう。「私」なのか…「ティナリ」なのか…
いや、今はそんなことを考えている場合ではない。余計なことを深く考えてしまうのは私の癖だ。私は改めて手鏡で自分の顔を見る。焼きたてのスポンジみたいな明るい茶色いふわふわの肩まで伸びた髪。さらさらの砂のように白くすみとおった肌に吸い込まれそうなほど綺麗な緋色の目。しかし、少しつり上がっている。
前世では「美人」という部類に入る容姿だ。いや、この世界でも「美人」という部類にはいるかもしれない。しかし中身がこんなオタクだとは…宝の持ち腐れすぎる。

しかし、この顔はどこかで見たことがあるような…
あっ…
気づいてしまった。いや、気づきたくなかった。
この容姿にこの名前、そして今婚約を迫ってきている王子の名前も含めると…ここは…

「ここは…前世でやってた乙女ゲーム…『フォーチュンラブ』の世界で私はそのゲームの悪役令嬢。『ティナリ・ラティス』だ…」


Re: 全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます! ( No.3 )
日時: 2021/02/06 22:03
名前: ストロベリー (ID: GbOqdb.J)

こんなことがあるのだろうか。否。あるわけがない。私は前世大量の乙女ゲームをしてきたが難易度が高くシナリオが神だった『フォーチュンラブ』にドはまりしていた。だから、きっとなんでもかんでも『フォーチュンラブ』にしてしまうんだ。そうだ、きっと。前世で社会現象になるほど人気になっていた鬼を切る物語のタチの悪いファンのように「パクリだ!パクリだ!」って言ってる奴らとおなじ原理だきっとそうだ。そう自分に言い聞かせる。
自分が今いる寝室を見渡す。真っ白木の壁に窓から見えるベランダには小さな机と二つの椅子がある。私が今寝ているベットは多分お姫様ベットと呼ばれるものであろう。入り口付近には誰かの絵が飾ってある。あ、私か。
見た限り中世ヨーロッパの時代のようだ。私は生まれ変わったのは確かだ。もしかして中世のヨーロッパに生まれ変わったのだろうか?
過去に生まれ変わるということができるのかというところは少し怪しいところだが。
まず、ここは前世の世界線と同じなのかを考えなくてはならない。ここの生活のことを必死に思い出そうとするが前世の世界線と同じなきがする。
では、この国の歴史を調べてみようとこの家の書庫に入る。大量の本が置いてあり、私の身長ではとても届かない大きな棚がズラリと並んでいる。
えーと…歴史書は…あった!
しかしその歴史書はかなり高い所にあり、私じゃとても届かない。さて、どうしたものか…

「お嬢様。こちらへ。」

すると脚立が用意される。「ありがとう」私は自然に口から言葉が漏れるが気にせずその脚立を利用して歴史書を取る。
良かった…あれ?この脚立はどこから来たのだろう。
余りにも自然過ぎて分からなかった。すると私のとなりにはいつの間にか少年がいた。
今にも消えてしまいそうなみずいろの髪とは反対に存在感を放つ深海のように濃い青色の瞳黒いタキシードを着こなしている彼は私専属の執事。クリスティアルド・スミスだ。
数百年前から我が家ラティス家に使えているスミス家の一人で彼は私のために産まれてきたといっても過言ではない道具のような存在だ。昔、ラティス家とスミス家の争いがあり、ラティス家が勝利したようでその時からスミス家はラティス家に使える召し使い。もとい奴隷のように働かされている…らしい。そんな道具のように育てられてきた彼は無表情でとても人間らしいとはいえない。私より二つ年上で、私が産まれたときから執事をやっている。
私も彼のことを道具のように扱うよう教育されてきたため、いつも「貴方」と呼ぶ。そして彼も自分は道具、私達ラティス家は主で主の命令は絶対というような教育をされてきているため私のことを「お嬢様」と呼ぶ。お互い名前は呼ばないのだ。

「体調は万全であられるのですか?急に部屋から出ていかれては騒ぎが起こるので控えてください。」

なんとも無機質な注意喚起だ。ロボットを相手にしているようで怖い。彼は本当に人間なのだろうかと疑うほどだ。

「ええ、分かったわ。体調の方は大丈夫。この通りピンピンしているから。」

私はニコッと笑って腕をふって見せる。すると彼はすぐに私の腕を掴む。ちょっと痛い。

「ご令嬢がそんなことをされてはいけません。」

彼にまた注意される。そうだ、私は今令嬢なのだ。こんなことをしてはいけない。私は素直に謝る。すると彼はこんなことを言ってきた。

「お嬢様。やはり少し体調が整っていらっしゃらないのではないでしょうか?いつものお嬢様らしくありません。」

確かに、この六年間彼には素直に謝ったりお礼を言ったりしなかった気がする。かなり横暴な態度をとっていた。しかし、前世の記憶を取り戻してしまった私は今更そんなことはできない。

「そうかしら?気のせいじゃない?」

と誤魔化してやった。今「実は前世の記憶を取り戻したの!そして、この世界のことを知るために調べものをしていたのよ!」と言うと彼らは私がおかしくなったと思うであろう。そうなるとちょっと面倒くさい。彼はこれ以上追及せずにそのまま黙る。
さて、お目当てのものも見つかったし呼んでみるか。
私はその場で座って本を読もうとするといつの間にか椅子に座っていた。
…て、まって!さっきまでここに椅子はなかったはずだけど!
きっと彼が用意してくれたのだろう。彼は素知らぬ顔で立っている。仕事が早くて優秀だ。しかし、そんな彼がこんな横暴なラティス家に使えるなど私の容姿と性格以上に宝の持ち腐れだ。
いつか、良い主人に使えるように私が頑張ってあげよっかな…
いや、今は歴史書が優先だ。余計なことは考えるな。
私は彼に、椅子を用意してくれてありがとうという気持ちで礼をして椅子に座って本を読む。
国の成り立ちは前世と同じように、川のちかくに文明が栄えそれが発展してきたようだ。この国はこの世界で一番大きな勢力の国であり、前世でいうアメリカのような国だ。
大雑把な成り立ちを見たあとは争いや細かい歴史の成り立ちのページに移る。
彼はずっと隣で無表情で立っている。
あれ、これもしかして私が読み終わるまでここに立っているつもりではないだろうか。さすがにこの厚さの本を読むにはかなりの時間がかかる。
私は黙って椅子を彼の足元に置く。しかし彼はなんの反応もしない。これは声をかけないと反応しないパターンだろうか。

「ねぇ、この椅子座らない?」

私は彼に声をかける。しかし、彼は表情筋すら、まぶたすらも動かさない。本当にロボットなのだろうか。
もしかして名前を呼ばないと反応しないとか?いや、私はこの六年間彼の名前を呼んだ記憶はない。まぁ、やってみるか。もし反応しなかったら頬かどこかをペチペチとたたいてみよう。

「クリスティアルド・スミス?貴方にいっているのよ?この椅子に座らない?」

彼はようやく気づいたようで私に目をむけるが数秒固まる。

「お嬢様。今なんとおっしゃいましたか?」

彼がそう聞いてくる。そんなことを聞いてくるのは珍しい。もしかして聞き取れなかったのだろうか。

「クリスティアルド・スミス。この椅子に座らない?と言ったのよ。」

今度ははっきりと言ってやった。またまた彼は固まり、またまた変なことを聞いてくる。

「今、わたくしに私が用意した椅子に座らないかとお尋ねになられましたか?」

もしかして、まずかったのだろうか。確かに人に用意してもらったものを、用意してくれた本人に使わないかと聞くのは失礼だったかもしれない。しかし、ここは素直になるしかないか。

「ええ。無礼でしたら申し訳ございません。」

私はペコリとおじぎをしてみせる。
彼はとても…いや、かなり焦り出す。私はなにをやらかしてしまったのだろうかと不安になる。

「いえ、あの、き、気遣いをさせてしまって、も、申し訳ございません。お、お嬢様。」

かなりしどろもどろな口調だ。しかし、焦りすぎているのか私の質問とは噛み合わないことを答える。しびれを切らした私は彼にもう一度向き直る。

「で、座るの?座らないの?」

少し強い口調になってしまった。彼はようやく表情筋を動かし、目を見開く。

「い、いえ。座りません。私はここでたっております。」

「かなり時間がかかるわよ?貴方も疲れるでしょう。座りなさい。」

考えるよりも先に口が動く。座りなさいと、命令をしたからなのか、それとも私に根負けしたからなのかは分からないが彼は素直に椅子に座る。私はほっとして歴史書をもって椅子に座る。
…て、椅子?!
そこには二つ目の椅子が用意されていた。彼…いや、クリスティアルドが用意してくれたようだ。

「ねぇ、あなた。クリスって呼んでも良いかしら?」

つい、そう聞いてしまう。仕方がない。こんな万能な執事を道具扱いなどしたくないのだもの。彼はまた無表情なままどこかを見ている。彼は名前を呼ばれないと反応できないのだろうか?
そんなことはあるまい。なぜならこの六年間。私は彼を「あなた」と呼んでいたのだもの。

「クリスティアルド・スミス!」

私が大声で叫ぶと彼はハッとこちらを向く。
ただ、ぼーとしていて私の声が聞こえなかっただけのようだ。

「何でしょうかお嬢様。」

表情筋をピクリとも動かさずに私の方を向く。
そして私はもう一度いった。

「クリスティアルド・スミス。これから貴方のことをクリスと呼んでも良いかしら?」

彼は…彼は目を見張り、口をぽっかり開けて眉もこれほどかというほど上げている。もう顔面大崩壊中だ。
失礼だったかしら。
て、よく考えたら私、数時間前までは彼にかなり横暴な態度をとっていたのだ。こんな顔をされても仕方ない。

「お嬢様が私のことをそう呼ばれたいのであれば…」

彼はそう言う。道具のように育てられてきたため、自分で判断ができないようだ。気遣いは一級品なのに。
私は彼をこれからラティス家よりも優遇される主の所に移動させるつもりだが、今のままでは危ない。これから私が自分で判断できるように鍛え直さねば。

「私は貴方に決めてほしいの。貴方が決めて。」

私は椅子から立ち上がり彼の右手をを両手で掴む。彼の顔はぐちゃぐちゃになり、もうどんな顔なのか分からない。

「と、言われましても…」

蚊の鳴くような小さな声を私は聞き逃さなかった。
そうか、彼はこんなときの答え方が分からないのか。道具のように扱われてきたため今のような対応をされたことがないのだろう。

「自分の心に聞いてみて。自分の心と対話してみて。あなたはどうしたい?」

彼は眉を八の字にする。なにが不満なのだろうか。

「私はラティス家の召し使い。もとい道具、奴隷でございます。そんな私の声など聞かなくても…」

どれだけネガティブなのだろうかそこもしっかり教育せねば。私は彼の手に力を入れる。

「あなたは道具なんかじゃない。人間よ。奴隷でもない。だからこそ、楽しむ権利がある。選ぶ権利がある。私に意見を言う権利がある。その権利を捨てないで。自分を殺さないで。あなたは貴方らしく生きれば良いのよ。」

私は微笑んで見せる。すると彼はポロポロと涙を流し始める。口は震えているがその瞳はしっかりと私を見ている。

「は、はい…是非。是非とも私の名前を呼んでください。」

本当に小さな声で彼にかなり近づいている私でも聞き取れるか聞き取れないかぐらいだった。しっかりと聞き取った私は偉い。しかし、名前ごときで涙を流すとはかなり心を痛めていたのだろう。どんな教育を受けてきたのだろうか。考えただけで、私も心が痛む。

「アァ…エッグ」

彼は嗚咽をもらす。必死に自分の感情に耐えているのだろうか。確かに私の前で大泣きをするとどんな処罰を与えられるか分からない。お父様とお母様に頼んで対応を改善させて貰えるよう頼んでみよう。しかし、感情を自分に押さえるのはつらいだろう。私も、かつて母にひどい仕打ち、いわゆる虐待を受けていたとき、自分の感情をそとに出せない辛さを味わっているため、良く分かる。私は彼の膝に座り頭を抱き撫でる。

「大丈夫。押さえなくてもいいんだよ。辛いよね、悲しいよね、いいんだよ。」

私も今世の口調から前世の口調へかわる。
今更だが私は無意識にお嬢様口調をしていたようだ。
彼は堰をきったように大声を上げて泣き出す。

「あぁ、うわぁぁーーー!!!」

その声は書庫中に響き渡る。私はそんな彼を黙って撫でていた。私も。このように泣けてたら、泣いてみたかった。だから、少し彼のことが羨ましく感じる。それと同時に嬉しさが込み上げてくる。何故だろう。あぁ、そうか。彼を喜ばせているから、自分も嬉しく感じるのか。そんな当たり前な感情を私はゆっくり噛み締める。
数十分ほど泣き、落ち着くと彼は私を押し出す。

「お嬢様。私のような者に気を使って頂いてありがとうございます。私は今、今までで一番の幸福を味わっております。本当に、なんとお礼をしたら良いか…」

彼…いや、クリスがそう私に言ってくる。クリス頬は緩みまくりで目には涙の跡がまだついている。

「お礼なんて…あ、なら、クリスは私のことをティナリって呼んでくれない?」

我ながら名案だと思う。私はお嬢様という殻でないし、言われても違和感しかないため名前で呼んでほしい。

「そんなことで良いのなら。何回でも何十回でも、何億回でも呼びます。ティナリ様。」

クリスはトロンと溶けそうな目で言う。
しかし、私は満足いかない。"様"付けはお嬢様よりはましだがやはりむずむずする。だからといって、クリスに呼び捨てを頼むのは無理がある。所詮、"主"と"執事"なのだから。いつか、他の主に使えるようになって対等な関係になったら呼び捨てにしてもらうことにしよう。

「改めてよろしく。クリス。」

私は微笑んでみる。

「はい。ティナリ様」

クリスも満面の笑みで返してくる。その笑顔はとても綺麗で、まぶしかった。
そして私は歴史書を読み始めた。

Re: 全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます! ( No.4 )
日時: 2021/02/11 16:12
名前: ストロベリー (ID: /GGdL2Ap)

この国の名前に王族の名前。貴族の学校等々の名前や特徴を調べ尽くした。そして、私はこう判断せざる追えなかった。

「ここは、『フォーチュンラブ』の世界だ…」

前世の記憶を取り戻して三日。ようやく私はこの世界を乙女ゲームの世界だと認めた。クリスは書庫の机につっぷしている私を怪訝そうに見つめる。

「ティナリ様。また体調が整っておられないのですか?」

私は否定という意味で首を横に降る。
クリスはほっとするとまた、無表情でぼーでとする。
さて、これからどうすれば良いのか…
私は絶望に近い感情で目を閉じていた。

『フォーチュンラブ』サブタイトルは『平民でも好きになってはダメですか?』訳してへー好きと呼ばれている。
私はそのゲームの悪役令嬢『ラティス・ティナリ』だ。頭が切れて美人。魔法も使え、身分も高いキラキラお嬢様…なのだが、欠点は性格の悪さ。人の不幸を大変好むのだ。まぁ、それには深い理由がある。私が0~4才の頃私のお父様、『アダルト・ラティス』はかなり下の貴族だった。そのため回りからはとてもバカにされていた。私も例外ではない。私の不幸話は散々笑われ、幸福話はねじ曲げられて不幸話、あるいは私が悪いことをした話になりひろめられた。そのストレスはスミス家の召し使いに矛先を向けていた。しかし、お父様もお母様も私もそれでは足らず、隙さえあれば自分達がされてきたように人の不幸話を笑ってきた。それが進化し続け、人の不幸を喜ぶ性悪になってしまった。因みに父上は人の不幸話をどんどん発掘していくうちに上位の貴族になっていた。

悪役令嬢というだけで厄介なのに家庭事情まで厄介なんて…
ここまででも頭が痛くなるのに問題はまだある。それはこのゲームでの私『ティナリ』の結末と難易度だ。

このゲームの攻略対象は四人+一人。
まず一人目は私の目の前でぼーっとしているクリス。もとい『クリスティアルド・スミス』だ。
実は彼。隠しキャラだ。
このキャラを攻略するには『ラート・ジリアール』の好感度が一定にないとできない。二人の出会いはラート様とヒロインに嫉妬したティナリが、クリスを連れて来て意地悪をする所から始まる。その際。ヒロインはクリスに「どうしてそんな悲しい顔をしているの?」と言われる。ここの選択肢は四人の攻略をした後にランダムで現れ、しかも現れる確率はかなり低いという鬼畜っぷりだ。クリスはそんなことを言ったヒロインにひかれて恋に落ちる…
クリスの攻略のポイントはどうティナリから奪うかだ。クリスは道具のように扱われてきたため優しさに弱い。私がクリス呼びをするだけで泣かれるほどだ。ティナリはクリスの優秀さに目を付けて利用するためにクリスにこれほどかというほど優しくしており、クリスもティナリにゾッコンなのだ。
そして、なんやかんやあり、ハッピーエンドはクリスがティナリの思惑、性格に気づき恨みでヒロインとラティス家を壊滅。バットエンドはヒロインと結ばれたいがティナリへの執着が残り、楽になるためにティナリを殺すしてしまう。そしてクリスは国外追放。

うん。クリスが怖い。そして、私は破滅しかない。

次に私に婚約をせまるラート・ジリアール様。
彼はこの国の王様の息子。第一王子で次期王様で、眉目秀麗。勉学でも雑学でもスポーツでも完璧なスペックを持ち合わせている完璧王子だ。しかし彼は完璧すぎて昔からいつも退屈しており、そのうち人としての感情が著しく欠けてしまったのだ。因みに六歳の時に同い年のティナリと婚約を結んでいる。また、彼は退屈なため、高い貴族をおとしめようとしていた。それで目をつけられたのがラティス家だ。ラティス家に近づくために彼はティナリと婚約をしたのだ。
攻略方法はまず、入学式の出会いイベントで彼に興味をもって貰わねばならない。因みに彼に興味をひかれないと他の攻略者と出会えないため彼とのイベントは必須だ。
彼とのエンドは三つあって、ハッピーエンド一つ、バットエンド二つである。ハッピーエンドはラートがティナリとの婚約を破棄し、主人公と結婚してハッピーエンド。二つ目は逆上したティナリに魔法で殺害されてバットエンド。三つ目はティナリが主人公にしていた意地悪をラート様が目撃。怒ったラート様はティナリを剣で殺すが、婚約者に手を掛けたことによりラートが国外追放される。

他も大体そんな感じだが、共通点がある。

「全てのエンドでティナリは死亡する。」

せめて国外追放とかならまだしも!
死刑やら婚約者に切りつけられるやら最悪だ。そして攻略対象はティナリに一定の好感度をもっている…
クリスも、ラートも(ラートにとってラティス家をおもちゃだが)
しかし!
このままでは私は破滅する。シナリオに沿って「破滅する!」

「い、いやぁぁーーー!」

思わず私は叫ぶ。いや、叫ばずにはいられなかった。このままいくと私は死ぬのだ!

「ティナリ様!」

いつの間にかクリスが机の上に水を用意して、私の汗をタオルで拭いてくれている。

「ティナリ様!大丈夫ですか!どこか具合でも…」

クリスの顔は真っ青だ。こんなに心配してくれているのは嬉しいが、将来私を殺めると考えると複雑だ。

「大丈夫よ。そんな宝物を扱うように扱わなくていいわよ。」

私は苦笑いしながらクリスに話す。クリスは はい というと、また椅子に座ってぼーっとする。

さてと…ここからが問題だ。
もちろん死ぬなんてゴメンだ。前世で途中退場させられたのにその次の世界でも途中退場なんて冗談じゃない。だから、ティナリ・ラティス破滅フラグをへし折らないといけないわけだが…
『強制力』というのがあるかもしれない。ここはゲームの物語の世界だ。だからこそ、シナリオ通りに事が動くはず。だから、私が生き延びるルートはないのだ。そして私が前世の記憶をもったままになるとも考えられない。

この世界の強制力、「運命」が勝つか、私の意思が勝つか…

絶対に勝ってやる。そのためにはまず下準備だ。この世界のシナリオの共通点は「攻略対象は私に一定の好感度があること」だ。なら、「攻略対象に嫌われればシナリオはめちゃくちゃになる。」
なら…なら…!

全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせる!!

Re: 全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます! ( No.5 )
日時: 2021/02/16 19:36
名前: ストロベリー (ID: XGjQjN8n)

◯ラート殿下攻略◯

この世界が乙女ゲームだと気づいて数日後。
私は、攻略対象に嫌われることで自分の破滅を逃れることにした。しかし…

「ティナリ様!お庭に綺麗な薔薇が咲いております!お散歩に行ってはいかがでしょうか?」

クリスティアルド・スミスこと、クリスがいつものように無表情で私に聞く。しかし、それは心なしか少しワクワクしているように感じる。彼は私の専属の執事で、なんやかんやで私に懐いてしまい、嫌われるどころか逆に好かれてしまっている。今のところ一番の強敵だ。

「そうね。気晴らしにでもいくわ。」

私がそういうや否やいつの間にかクリスが日傘を用意していた。
相変わらず仕事が早い…
私は、クリスの日傘を受け取り外へ出る。クリスの言う通り、庭には色とりどりな花が咲き乱れており、特に目立っているのは日の光を反射してキラキラと輝いているように見える真っ赤なバラ達だ。

「そういえばティナリ様」

ふと、クリスが口を開く。
私は、歩くスピードを緩めクリスの方をチラ見する。相変わらず無表情な顔だ。

「なにかしら。」

貴族っぽく振る舞いながらクリスに聞く。

「明日、ラート・ジリアール殿下がいらっしゃいます。」

あ、そうなんだ。確かに、ラートが…あ、呼び捨てはダメか、ラート殿下が婚約を結ぼうとした時に私倒れちゃったからなー。

「そう。」

と、私はクールに言葉を返す。こうやってそっけなく返していれば好感度も下がる…かも?それと、悪役令嬢感が出てちょっと楽しい。

「ですので、殿下の前で、庭でのランニング、変な階段の登り下りのくりかえしなどの奇行はお止めください。」

「えぇ。え?!」

私は思わず叫ぶと、つい、ドレスの裾を踏んでしまいズッコケる…前にクリスが支えてくれる。
あ、危なかった…の前に…

「ククク、ク、クリス?!何故それをっ?!」

庭のランニング、変な階段登りというのはうさぎ跳びのことだろう。どちらも運動不足改善のために前世の記憶を取り戻してからひっそりとやっていたことなのに…バレないように、ランニングは夜に、うさぎ跳びはほぼ使われなくなった離れでやっていたというのに何故バレたのだろう。

ちょっと?!今クリス目をそらしたわよね?!
ねぇ!なんで知ってるの?!怖いわよ?!

私はそんな視線をクリスに向けていたがクリスは華麗にスルーする。

「とにかく!気をつけてくださいね。」

ジトッとした目でみられる。それはあまり良い気分ではなかった。

Re: 全力で攻略対象に嫌われる悪役令嬢になってみせます! ( No.6 )
日時: 2021/08/22 02:43
名前: ストロベリー (ID: FLOPlHzm)

「お久しぶりですティナリ様。体調の方はもう大丈夫ですか?」

私の目の前に居る破滅への原因になりかねない忌まわしき人物。ラート・ジリアール殿下が笑顔の模範解答のような笑みを浮かべる。
金髪に晴天の青空のような透き通った水色の瞳。
幼いため目がくりくりしており、ほっぺは触らなくてもぷにぷにそうだ。

ー可愛い…!

その場にいた誰しもがそう思った。小さい子は大体が可愛いが、顔のパーツが綺麗に揃ってるラース殿下は格別に可愛い。今すぐにでもほっぺをぷにぷにしたい。

しかし、しかししかししかぁし!

見た目は幼い子供でも、中身は頭がかなり切れる子供離れしてるこの国の時期王様候補だ。
もしかしたら精神年齢6歳+16歳の私より賢いのかも…!
そう思うと目の前の天使が閻魔大王様に見えてきたよ…

「ティナリ様…?」

考え事をしてボーッとしてた私をラート殿下が訝しそうな顔で私の顔を覗く。

あ、やっべ。考え事をしてたせいで返事を忘れてた。

「あっ、すみません。もう体調は大丈夫です。殿下自らラティス家へ出向いて頂けるなんて光栄でございます。どうかごゆっくりなさってください。」

私は最上級てあるカーテシーを行う。
ラート殿下もそれ相応の挨拶をしてくださった。
そしてお高いお菓子が置いてある机を挟んだソファーに座り向き合う。
ラート殿下は相変わらずニコニコしている。
その笑みが怖い!怖すぎるってラート殿下!
い、嫌、私には前世の記憶もとい、この世界の未来を知っている。なにも恐れることはない。まずはラート殿下についておさらいをしよう。

彼の名前はラート・ジリアール。我が国ミネストフォレスの王様のご子息で、長男である。早い話時期王となるお方だ。
そして彼も六歳。地位も含め早いうちに婚約者を決めなければならない。その婚約者に見合う地位は大公爵、公爵。うちは最近だが公爵に上り詰めているため婚約者範囲の中に入っているのだ。
なぜ家なのかー それはラート殿下の人柄が関係してくる。
勉学、運動、美術その他諸々何をやって完璧という異常なスペックを兼ね備えている。そのため常日頃から退屈を感じているのだ。
そして悪い噂や相手の汚点をでっち上げたりして成り上がってきたラティス家。お父様は上手く隠しているけどラート殿下のような頭が切れすぎる人にはばれてしまうらしい。
そのため、貴族の中で良いとは言えない行為をしているラティス家を潰すためにラート殿下はラティス家である私と婚約を結ぼうとしている。でも、本当の目的はラート殿下の暇潰しなのだ。

そんなラート殿下の暇潰しに付き合ってられる訳がない。
それは非倫理なラティス家が悪い。自業自得だ。でも私にそれは関係がない。巻き込まれたくないのだ。そしたら私は何がしたいのだろう…

破滅を避けるために攻略対象から嫌われることを目指してるけど。破滅しないためにはどんなエンドを目指したら良いのだろう。
クリスと一緒に誰かに使えるのもいいな…
国外でゆっくり待ったり暮らすのもいいかな…
でも国外追放はやだな。追放先が分からないから探索ができない。やるならラート殿下にラティス家が行った悪行の証拠を提出し逃げる…!あとクリスの主も探す!よし!決まった!

「ーということがあり、ティナリ様はどう思われす?」

「へっぁ?!」

やばい。またもや考えすぎてて話を聴いていなかった。

「ティナリ様。婚約についてどう思われるか聞かれております。」

クリスがすかさず私に耳打ちをしてくれる。

スミスさまぁーー!!ありがとうございます!

私はクリスに抱きついて頭ワシワシしたいぐらいの感謝と嬉しさに溢れかえった。

しかし、今はそんな気持ちを押さえてラート殿下に向き直る。
ジリアール家とラティス家は何気に仲が良いため、婚約しなくともラティス家の悪行の失態は渡せる…筈だ。
なら、ラート殿下と婚約を結ぶ必要は…ない!

「ラート殿下との…婚約はお断りさせて頂きます。」

『?!』

その場の全員が騒然とする。
この国には婚約についてきちんとした法律があり、例えばお互いが了承しないと婚約はできないとか、未婚女性にふしだらな行為をした場合は責任として婚約か罰金とか。とにかく、他の国と比べてきちんとした法律がある。そして、『婚約はお互いができない』 という法律に基づいて、拒否した私はラート殿下とは婚約できないのだ。


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