コメディ・ライト小説(新)

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ギャルと眼鏡。
日時: 2021/04/04 15:05
名前: 紫月 ◆GKjqe9uLRc (ID: w1UoqX1L)

 「この本体眼鏡野郎!! 眼鏡かち割ってやろうかばーかばーか!!」
「やれるもんならやってみろ!! だが、僕の学習を邪魔するなこのギャルがッッ!!」



 はじめましてダーク・ファンタジー版にて小説を現在執筆中でございます紫月です。しりあすしか書かないので手を出してみたく……紫月の情緒具合で暗く鬱が入ってしまうかもしれませんのでご了承を。
沢山の人にときめいて大笑いして貰えるような作品になりますように。



    ◎ 〇 ●

〇目次

◎最新話>>004
◎一気 >>000-

・登場人物紹介>>001
・000、五十嵐天>>002

第一章三一歳 ≪太陽を懐かしみ、そして___≫

・001、遠野綴>>003-004
・002、五十嵐天
・003、斎藤須美
・004、海瀬祥吾
・005、水無月琉生
・006、斎藤詩真

第二章一六歳 ≪太陽が大嫌いだったあの頃≫




○めんてなんす
・000、001を加筆____2021/3/21(日)
・001、更新_______2021/4/2(金)




●小説情報

・スレ立て日____2021/2/15(月)

【 登場人物 】 ( No.1 )
日時: 2021/02/21 15:33
名前: 紫月 ◆3qDMUSp0ng (ID: w1UoqX1L)


遠野とおのつづり
 「つづりん」「ガリ勉」「本体眼鏡野郎」。あらゆる分野、点において負けを知らない男。万年首席だが一度だけ首席から次席になったことがある。完璧主義者の頑固者。不憫、不憫でしかない。クール属性眼鏡系男子。

五十嵐いがらしてん
 「てんてん」「ギャルオタク」。外見はギャル、中身は陽キャのパリピ。顔、声、行動何もかも五月蠅い。とにかく五月蠅い。こんな奴だが腐を愛する者でアニオタでありドルオタガチ勢。

斎藤さいとう詩真しま
 「斎藤兄」「おかあさん」「無属性」。天とは幼馴染であり関わっているうちに腐に染まってしまった不憫な男。須美の双子のお兄ちゃんな筈なのに美少年ではない。天を駄目人間にする製造機、天と須美にはべったり。

斎藤さいとう須美すみ
 「斎藤妹」「みっきゅん」「美少女」。自分の可愛さを分かってるタイプのぶりっ子。小悪魔と言うより悪魔で悪い顔してる時が一番可愛いらしい天曰く。詩真と呼びだしたのはごく最近の事で「お兄」と呼んでしまうのが悩みらしい。天の投資処。

海瀬うみせ祥吾しょうご
 野球少年。数少ない綴の友人。よく喋るが本心をそのまま言葉にしない不思議な男であり踏み込んでならないところはどんなに親しくとも踏み込まない。

000、五十嵐天 ( No.2 )
日時: 2021/03/21 17:22
名前: 紫月 ◆3qDMUSp0ng (ID: w1UoqX1L)






  迷惑かけてごめん。さようなら、大好きだった人。

出会ったとき、電流が走ったみたいにこれだって思ったんだ。冷たくて、でも優しい貴方が好き。貴方の顔が好き。貴方の体温が好き。貴方の描き出す世界が好き。

 だから、逢いに行きたいよ。逢いに行くから。待っててね。

これは呪い。あたしを思い出す呪い、あたしを待たせる呪い。

 こんな脆くて痛い呪いをあたしは彼にかけることなんてできなかったのだ。ただ別れの時、泣いて喚いただけしかできなかった。

01.遠野綴 ( No.3 )
日時: 2021/04/02 10:57
名前: 紫月 ◆3qDMUSp0ng (ID: w1UoqX1L)

 「遠野くんって馬鹿だよね、そんなに好きなら引き留めとけばよかったのに」

ずずずー、と恐ろしい吸引力でカップに入った炭酸を飲み干す斎藤さんに僕は苦笑いで「そんなことできないにきまってる」と言う。

 視界の端に在る積み重なったハンバーガーの包み紙六枚とLサイズポテトの紙ケース五個、Lサイズコップ四個。まだ足りないと言うばかりに食べまくる斎藤さんが恐ろしく感じ粟立つ。
あーあ、頑張って働いているとはいえ給料の半分くらい持ってかれるのでは? 今日何円入れてたっけ、足りるかなと財布の中身を確認したくなる。

そわそわと体を揺らす。彼女の前で鞄の中にある財布を取り出し札を確認するのは流石にみっともないと思いひたすらに我慢して隣にある鞄をできるだけ見ないようにする。見たら終わりな気がすると思い、食べまくる斎藤さんだけを見つめる。

 本当に嫌だ。僕ってなんでこう、格好悪いって言うか、斎藤さんの言った通りに馬鹿なんだろう。
金銭を心配するしこうやって食べる女子を見て可愛いなとも思えない。
 酷く恐ろしい。僕には食べられない量を平気で食べる。別腹だと言ってスイーツを頼みまくる女子が苦手だ。払う方のことを考えて欲しい。

 格好悪い。胸を張って、いくらでも食べちゃってなんて口が裂けても言えないんだ。


 「出来るわけないって……ちきんすぎるでしょ、あんた。だから高校の時ももてなかったのよ、ただのガリ勉で運動は天ちゃんよりできるけど目立たず地味系男子に入ってたからねえ、隣にいる海瀬くんの方が話題になってたしさーなんであんなガリ勉眼鏡と一緒に居んだって」

ピンポイントでぐさぐさと刺してくる斎藤さんに出血を促された胸を僕は青ざめた顔で抑える。うう、そんなにはっきり言うかよ。
可愛い顔でひっどいこと相変わらず言うなと思いながらマグカップに入れられたブラックコーヒーを口に運ぶ。
 ああ、苦いなあ。温かい熱が手から伝わってきて傷付いた心も次第に癒されていく。
ごちゃごちゃと物申してくる斎藤の声を片耳に、視線をずらして僕は窓の外から見える人、青空を見つめた。


 この空を、彼女は飛んでいる。
大好きな彼女は、太陽のような笑顔を浮かべて流星のように輝いているのであろう。
僕の前を向く理由だった人。僕の希望だった人。僕の太陽で僕の夢だった人。

 彼女は、もう、隣では笑っていてはくれない。他の誰かを救う為、飛び立ってしまった。出来るものなら過去に戻りたいよ、僕だって。

 思い出すはあの日。あの公園、あのベンチ。あの空。僕はあの頃から変わったのだろうか、今度、彼女と再会したとき、上手く笑えるだろうか。上手く話せるだろうか。
悔やむは夏。引き留められなかったあの時。僕は笑っていた。不器用にも涙を呑んで。


 「わたし達、大人になっちゃったんだね。あーあ……早く婚活しなくちゃなー三十路だし、売れ残るのはごめんだからなー誰か良い人居ないかなあ」
「斎藤さんならすぐ見つかるよ、高校の時、可愛くて有名だったんだから」
「……遠野くん」
曖昧に頷く斎藤さんの顔が太陽の光が反射し、邪魔されて見えない。一瞬だけ。そう、一瞬だけ。
ごろごろとストローを回す音ががやがやとした人との会話に溶ける。


 「ほんとに馬鹿だね」


その言葉に僕はすぐさま言い返す。心底そう思っているような冗談のかけらのない斎藤さんの表情に流石の僕も少しだけいらっとした。

 「馬鹿じゃない、僕は普通より出来ている男だよ。それにガリ勉だけの眼鏡じゃないし、眼鏡が本体じゃないし」
「ばっかみたい、自分で言うのそれ! ってか、懐かし~天ちゃんよく遠野くんと喧嘩したら言ってたよね、この本体眼鏡野郎って! あ~……逢いたいなあ」

もやっとしていた空気が明るくなる。五十嵐さんの事を出しただけで。此処に居ないのに、五十嵐さんの存在は記憶に残っていてとても大きいのだと思い知る。それが、嬉しくて彼女がいれば伝えられて一緒に笑いあえるのにな、と寂しく感じた。
僕らは二人だけで何時ものように笑う。あの日のようにじゃれあう。
くしゃくしゃっと顔に皺を寄せて思い切り笑う斎藤さんはやはり輝いていた。高校時代、多くの男子の心を奪った小悪魔な笑顔。無邪気な笑顔。


ほんとだね、と相槌を打ってまた笑う。時間が流れる。こうやって集まればあっという間に空は暗くなっていた。


 ああ、貴方に逢いたいな。この気持ちが僕だけじゃないことを、君も抱いていること願わくば何十万キロ先にいる貴方へ。はるか彼方へ。

01.遠野綴 ( No.4 )
日時: 2021/04/02 10:56
名前: 紫月 ◆3qDMUSp0ng (ID: w1UoqX1L)

斎藤さんと別れ、軽かった足取りは次第に重くなっていく。寂しいな、という感情が自分の心を埋め尽くす感じがぞわぞわと感じる。

 あの日、あの時の公園。久し振りに帰って来たこの土地の空気を一杯に吸って吐いて、想い出す。      
五十嵐さんと喧嘩を頻繁にしていた場所、皆でを買い食いした色んなお店、呻きながら勉強した図書館、幼稚園以来に女子と手を繋いだ道路、馬鹿みたいに二人乗りをして怪我しかけた急な坂。

 ──────『海外で勉強して就職しようかなって思ってる……』引き留めることも出来なかった無念の坂。

 ああ、ああ、懐かしいな。じわぁっと音立てて睫毛の淵から涙が零れそれを機に溢れ出てくる自身の涙に慌てて声を上げてしまう。周りに見られたらどうしようと焦りも焦るが涙の勢いは止まる一方もなくて。
 「僕って、こんな感じだったっけ……五十嵐さんに、逢いたくて、逢いたくて……うさぎみたいだ」
「うさぎだよ!」

漏らした一言に言葉が返って来ることなんて想像もしていなかったから驚いてびくりと、顔を上げる。何でかどうしたって止まらなかった涙がひゅっと風を切るように秒で引っ込む。


 かつかつ、と自信満々にヒールを鳴らして近付いてくる音が後ろから響き聞こえる。
 「へーへぇー? あたしに逢いたくて? つづりん、前よりうさぎ化進んだね?」

揶揄からかうようなわざとらしい声を出して、くしゃくしゃっと皺を刻んで明朗快活にけたけたと笑う姿にトレードマークの金髪……はワントーン暗くなっていて、でも面影はあって。


 ああ、ああ。嘘みたいだ、嘘だよ。嘘だ、こんなの夢に決まってるさ。

「い、が……らぁじ……じゃ、ん……?」
そう涙交じりの情けなく掠れた声を出して言って見る。すると、彼女は柔らかく桜の花のような優しい微笑を浮かべふんわりと鳥のように一歩、二歩と大股でこちらに近付いてくる。



 「ただいま、綴」



ふさあっと風が頬を撫で過ぎ去っていく。空は、紫色に染まりかけた朱色だった。星々が煌めき始めたそんな午後六時。
 願いを叶えてやったというようにまあるく濃厚な蜂蜜色の月が僕らをジッとただひたすらに見つめ返していた。

 また願わくば十センチ先の君へ、いつか贈るであろう長い長い恋心。片想いの気持ちとドドドドッと高まって止むことも知らない、また溢れ出してくる涙の訳を気付きませんように。心臓の音が、心臓の声が聞こえないように不器用に何度も微笑する僕は「おかえりなさい」と口にする。

 「ねー鼻水出てるよー!! 汚いってばーっはい、ちーんして」そう言ってポケットティッシュをほらほらと鼻に当ててくる五十嵐さんが近くて、唸ってしまう。


 「ぅうううぁぁあぁあ……うぇおえ、げほごほっっ」
「何その地獄の底から這いあがってきたようなキモい声、つかまじ汚いしー」
って五月蠅く言ってくる言葉も、全部、愛おしくて苛つきもしない。

 ああ、大好きだよ、大好きだよ。ぱちぱちしゅわしゅわはじけるサイダーのような感情を教えてくれた青春を連れて来てくれた嵐のような唐突さと太陽のような眩しさを兼ね備えた貴方へいつか贈る、この気持ちが届きますように。

 「五十嵐さん……遅いよ!」僕も歩み寄って、五十嵐さんの隣に。ばしっと叩いた背中は温かくて、近くで見たらわかった。五十嵐さんの首元に汗が伝って頬は紅潮し、はあはあと息を忙しなくしていた。
その汗の、紅潮している頬の、忙しない息の、意味を僕は気付かないふりをして微笑む。


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