コメディ・ライト小説(新)
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- 夢の中で君は、笑っていたのに。
- 日時: 2021/03/10 20:31
- 名前: 久瑠 くる (ID: cakHq5Qm)
夢の中で君は、笑っていたのに。
なぜ笑ってくれないんだ。
夢はどうせ、自分の想像でしかないのか?
妄想でしかないのか?
君は、僕の前で、今、ピクリとも表情を変えない。
怒られることよりも、悲しまれることよりも、侮られることよりも、嗤われることよりも、何よりも、悔しい。悲しい。
「どーして、笑ってくれないんだよおおおおお!!!」
「なんでって、面白くないからじゃん」
目の前の君は、呆れたような顔で言う。
こちらに目も向けていない。
彼女の目線の先は、彼女の手元にある小説にあった。
「昨日、だって! 徹夜で考えたんだぞ⁉︎」
僕は訳が分からなくて、涙目で訴えかけた。
君は、大きなため息をハァっとついた。
「いい?」
僕に目線を合わせる。
いつものだ。と、僕はグッと身構えた。
「いくら徹夜で考えたって、面白くないネタは面白くない。スベる人が考えたネタはスベる。あんたは、面白くないの」
ぐうの音も出ない。
君は続ける。
「いくら話が面白くても、面白い人が言わなきゃ、面白くない。つまんない人が言ったら、スベる」
君は、スゥッと息を吸う。
「あんたは、面白くないの」
大事なことだから2回言いました。
みたいな顔で言い放つと、君は、また目線を小説に向けた。
君はいつも、笑ってくれない。
僕は悔しさに顔を歪める。
「また! 明日! 来るからな! 覚えてろよ!」
君に張り合うように、どこかの悪役のようなセリフを言い放つ。
また、今日もネタを考えよう。
夢の中以外で、君を笑顔にさせるために。
あいつが、今日も悔しそうに学習室を出て行く。
学習室は、教室に行けない生徒が行く場所。
ーー私は不登校である。端的に言うと。
そしてあいつは、懲りずに毎日やってくる。
最初、面白くないと指摘したのが運の尽きだった。
それから笑わない私を笑わせるために毎日のようにやってくる。
毎日。本当に。
「とんだ迷惑」
ああ、明日もあいつは来るのだろう。
今度も、面白くないネタを持って。
くすりと、笑う。