コメディ・ライト小説(新)

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【四月。雪の降る日に冴えない君を忘れる。】
日時: 2021/05/11 11:07
名前: purine (ID: gHpB4F6k)

常夏。一つの鉄の塊を鉄の塊と接触させ。
それを認識させる。ボタンを押し、〈それ〉から水入りペットボトルをはき出させる。
偶にこの様な関係に上下関係を感じ。
それはまた少し可哀想だと思うこともある。
だがそれとは裏腹に、この自販機とやらはその為だけにこの世に生まされた、作られたのではないか。ならば仕方の無いことであり、この関係は必然的なものであるだろうといえるだろう。
コカコーラの自販機の中でよく冷えたペットボトルを右手に握り、左肩からリュックのショルダーを下す。
そして右手のそれを左手に持ち替え。
器用にチャックを開け中に入れる。
このリュック自体は大きいわけでは無いが
横にペットボトルの入る場所はある。
だが何故か僕は中に入れた。
再度リュックを背負い直し近所の映画館へ歩き始めた。



蜜月。
そんなものは早く終わるものである。
甘く、とろみがかったその時間。
誰もが知らずの内に有頂天に達するだろう。
その為か落ちるのは早い。
「別れよう?」
こんなことになってしまったのは僕らが、いや、僕が蜜をあまりに吸いすぎたからだ。
もう来年まで蜜は成らない。
その長い苦潮(にがり)を耐えなければいけない。あの、人間関係に渇く惨めな大人の様に。
「…」
何も言えなかった。
いや、沈黙ですら言葉の種類ではある。
沈黙という手段を取り、相手に補足を求める。
「私。知っちゃったんだよね。」
彼女は今きっと僕に何を?と聞いて欲しいのだと思う。しょうがない。
「何を?」
「琉果(るか)ちゃんと仲が良いの。告られたんでしょ?」
そうか。仲が良くてただ告白という名 名札をつけられた会話の中で言葉を交わすだけで、終わってしまう蜜だったのか。
そう考えれば仕方が無いとも言えるが、
わかった。というと人間的な価値が下がってしまうので、こういう時に便利な言葉を提出しておく。
「ごめん。悪気はないんだ。」
悪気がないと言うのは本当である。
決してごめんとは思っていないが。
「いいの。もう別れるから。」
地雷を踏んだ。面倒臭い自体になりそうだ。
きっと彼女は言い止めて欲しいのだろう。
だが敢えてそうはしない。そう。面倒くさくなるからだ。
僕は沈黙を言った。
「ねぇ。そういうところだよ?そうだから、つまんないの。やっぱり別れるね。」
好きにすれば良い。関係に名前をつけただけだ。別に失うものはない。つまらないという定評は今後広まるだろうが、絡む人が減ればそれでいい。
こういう所で甘絡みを求め。ある意味では蜜を求めている彼女は大人になるにつれ身体的、精神的に沢山のものを失って気づくのだろう。そんな下らない物は然程重要じゃないと。だが。僕は彼女にこれだけは言いたかった。
「ありがとう。」
彼女はもう家に帰るだろうその足を僕の為に止めはしなかった。

3月21日。
入学してからそろそろ一年になるこの高校の目の前のコンビニで僕は少し息をついた。
家に帰りたくない訳ではないが。
家に帰るのは何か失ってしまう気もする。
空気感の違う外と家。
家に帰ると現実を見させられる気がする。
この淡い色使いの施された写真に濃色を重ねるかの様に。
だが。ここに来て何もしないのも本質を失ってしまった店員らに叱責を受けるだろう。
きっと創業者なんかはこの本質を「人の笑顔や、休息の為だ」とか言う癖に。
それが本当だとしたらこの使い方は決して間違ってはいないだろう。
だが、叱責、注意されるのも面倒くさいのでとりあえず高校のテキストを広げ、筆箱を開き、シャーペンを一本。忘れて出した消しゴムを一個机の上に乗せる。
「はぁ…」
窓に貼り付けられる様に設置された机に肘をたて、一つ息を吐く。
人間は憐れで、愚かで可哀想だ。
なんて、言っている僕ですら人間なんだ。
憐れだな。
そんな事を思っていた時、ブレザーの右ポケットで携帯のブザーが鳴く。
前の席の男子からのLINEだ。
“最近なんか暗くね?w”
“話聞くぞ?ww”
文字の一つでも立派に意味を持つのだ。
語尾に笑っている動作表現である“w“をつけた彼は僕を揶揄っているのか。
まぁいい。無難に僕はこう返した。
“いや、大丈夫。ありがとう。“
すぐに既読が付き、次の文面はこう
“おう、自分のことは自分が1番知ってる、なんて言うもんなw”
だからその“w“はどうなんだ。
彼の言っている事は的を得ていない。
多くの人から聞いた言葉だが。
気づかない事にも気づいていないという可能性は考えられないのだろうか。
それだから人間は愚かである。
そんな事を考えながら椅子で7分を過ごし、ギリギリ罪悪感を感じない、違和感を与えすぎないであろうその時間でコンビニを後にした。


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