コメディ・ライト小説(新)
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- 迷探偵ルーク
- 日時: 2022/04/06 18:06
- 名前: t (ID: vokdlDRO)
魚釣りが好きで、よく近くの海のほとりに来る。釣りといっても、本格的な釣竿などの道具は使わず、適当に作った自作の釣竿を使う。ゆっくり海水に糸を浸すと、「頼むぞ」と念じながら、獲物がかかるのを待つ。
30分後、多少イラつきながら、海を後にした。真夏日、太陽の光がギラギラと降り注ぐ。海水はきらめき、一匹の魚が顔を出すと、また戻ってゆく。
自宅に戻ったら、1人の男が待っていた。
「また釣りですか?」
座っていたソファーから立ち上がり、質問する。天然パーマで、黒メガネをかけた、一見大学生くらいに見える。
「ああ、一匹も釣れなかったけど・・・」
ドサッと天然パーマ男の真向かいのソファーに座った。小さいテーブルの上には、週刊誌、飲みかけのコーヒーが入ったカップ、カギなどが置いてある。
「で、俺が留守の間に依頼は?」
そう問いかけると、天然パーマ男が答える。
「さっぱりですよ」
「・・・そうか」
天井を見上げた。灯りの点いていない電球が視界に入る。現在昼の3時10分。開けっ放しの窓から日光が入りテーブルの上を照らす。週刊誌を手に取ると、パラパラとページをめくった。
「何か、依頼が欲しいなあ・・・」
「探偵事務所を立ち上げて、1年。お客様ゼロ。電話もゼロ。そろそろ店閉まいしませんか?」
週刊誌を読む手を止めた。そして、天然パーマ男を見る。
「・・・お前、それ本気で言っているのか?」
- Re: 迷探偵ルーク ( No.1 )
- 日時: 2022/04/09 17:57
- 名前: t (ID: KOGXbU2g)
2
部屋中に、カレーの匂いが立ち込める。キッチンの鍋の前に立つのは、天然パーマ男だ。
「できましたよ、カレー」
天然パーマ男がそう言うと、
「・・・ありがとう」
と言った。
テーブルの上に置かれた2つのカレー。水はない。カギ、週刊誌が横の方にある。黙々と食べていく。天然パーマは、料理がよくできる逸材である。
「須藤さん。これが、探偵事務所最後の晩さんになるわけですが、これから、須藤さんは何をされるつもりですか?」
天然パーマ男が言う。
「・・・そうだな。何をしようかなあ」
そう言うと、天然パーマ男が、
「バイトですか?まあ、40歳でも探せばありますから、頑張って下さいね」
と喋る。
「そうだな、バイトだな、まずは。伊藤くん、1年間、どうもありがとう。1年もやってこれたのは、誰でもない伊藤くんのおかげに他ならない・・・」
目の前に、サバが降ってきた。
驚いた。サバが1匹、ドサッとテーブルに落ちた。カレーの前に、サバがある。伊藤と天井を見上げたのは、おそらく同時だった。
「やべえ」
声を出したのは、天井に張り付いている、猫だった。猫といっても、顔は猫、そして首から下が人間だ。青いスーツを着ている。
「よっと」
そう言うと、猫はテーブルの横にストンと着地した。立っている姿を見ると、身長は180センチくらいある。
「な、な・・・!?」
伊藤が声を震わせる。
「すまん。食卓の邪魔をしてしまって」
猫が言った。そしてサバを手に取ると、肩にかついだ。そして喋り始めた。
「依頼があるんだ。私の飼い主を探して欲しいんだ。大丈夫かな?名前はタカシという。あ、飼い主の名前がね。私の名前はトラ。飼い主のタカシは旅行に出かけたきり、1ヶ月帰ってこないんだ。人探しといえば探偵ってことで、依頼に来た」
- Re: 迷探偵ルーク ( No.2 )
- 日時: 2022/04/15 15:01
- 名前: t (ID: KOGXbU2g)
3
快晴の下、伊藤と共に警察署の前に居た。午前10時。歩道と警察署の間にある門扉の前をうろついている。たまに、通行人が2人を横切る。
「警察に、タカシさんのことを本当に言うつもりですか?」
伊藤が言う。
「ああ、そうだ。その方が手っ取り早いじゃないか・・・」
そう返すと、見慣れない土地に足を踏み入れた。そして、警察署へ向かった。
30分後、伊藤と警察署を後にした。まだ天候は快晴だ。涼しい風がビルの間をすり抜けても、心地よさを感じる。
「・・・直前で警察には捜索願いは出さないと意見が変わるとはな」
そう言うと、伊藤が返す。
「我々探偵ですからね。やっぱり、警察の力は頼らずにタカシさんを探してみましょう」
とは言ったものの、初依頼、初仕事である。探偵事務所設立から1年間、誰の依頼も無かった。正直、精神的に右往左往していた。
探偵事務所に戻った。ソファーに座ると、これからどうするか、考えた。
森タカシ、34歳は、1ヶ月前に旅行に行ったきり、消息を絶った。1人旅であり、猫のトラにも旅の詳細を告げずに家を出たため、足取りが分からない状態だ。
コーヒーを飲むと、テレビを点けた。昼のニュース番組がやっている。テーブルを挟んで真向かいに座っている伊藤が言う。
「須藤さん、何か手はありますか?」
「・・・今の所は、ない」
そう言うと、伊藤は腕を組んだ。
「人探し、か・・・。初仕事ですもんね、これが・・・。何とか成功させたいですけど」
伊藤が言った。
「・・・必ず、見つけよう。事務所を閉める日に来た依頼だ。これは、きっとチャンスなんだ」
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