コメディ・ライト小説(新)
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- 彩心製薬技術部にて。
- 日時: 2022/05/04 11:55
- 名前: SuRuMe (ID: WEVaA//0)
プロローグ
『人の感情を採取し、混ぜ合わせ、ナニカを作る組織が存在する!?
今回はそれについて私なりに調べてみました!』
深夜2時、寝ようと思い布団に寝転がり、ついダラダラとスマホを見てしまっていた。
そうしたらこんな記事が目に飛び込んで来た。
「胡散臭いなぁ...」
秒でページを閉じ、私はそそくさと体に毛布をかぶせて寝た。
朝。
私を起こそうと奮闘するアラームの音で目が覚める。
目をこすりながらカーテンを開ける。
朝食、歯磨き、着替え、いつもの三点セットで私は仕事に向かった。
青々とした木々とまだ少しだけある桜の花びらを見ると、もう5月なのだと実感する。
「おはようございますー。」
「あぁ、桜木さん。今日もよろしくね」
私の名前は桜木凛。ここは██食品という街に一つはある食品会社である。
朝礼やらなんやらを終え、各自仕事に入っていった。
(4月に終わらすはずだった年度始めの仕事を終わらせなくては...)
いつのまにか12時。お昼の時間だ。
食堂に行き、弁当箱を開ける。
「桜木さん、お疲れ様。」
弁当箱の横に缶コーヒーが置かれる。
「森芝さん」
同期のいかにも仕事ができる、自分に厳しそうな人だという第一印象だったが...
人は見た目で判断してはいけないという事を身をもって知った。
「や〜っ!近頃はみんなピリピリしてていやんなっちゃうよねー!」
「そうだね。私みたいにまだ年度始めの書類が残ってる人もいると思うから...というかいて欲しい」
「まぁねー。それより桜木さんは弁当箱毎日自分で作ってくるの?」
「うん、母に叩き込まれて...」
「すごいなぁ、私は数日で疲れて今日もコンビニだよぉ...」
「あはは...」
「それよりさー!!」
話題を数秒で変えられるボギャブラリーの多さの方がすごいと思う。
こっちは困らないからいいのだが。
「製薬部門って知ってる?」
先程とは打って変わって小声だ。
「いや...というか、ここは食品会社では?」
「噂になってるんだよ。ほら、一階奥のの関係者以外立ち入り禁止ってとこあるじゃん?
そこをこっそり覗いた変な社員がいて、その人によると
『彩心製薬 技術部』ってプレートが下がってたんだってー!!」
「はぁ...本当なら怖いというか、不気味だね」
「そうそう!私そういうの好きなんだよね!」
「好奇心旺盛なこった」
23時。今日で絶対に終わらせるという信念を貫いていたらこんな時間になってしまった。
帰ろう。
カバンを背負って電気を消した。その時、森芝さんの言っていた噂が頭によぎった。
‘せっかくだから見に行けば?’
心の中の好奇心が疼く。
ダメだダメだ。そもそも立ち入り禁止なんだし、大人がそんな噂に振り回されてどうする。
でも足はその方向へと向かっていく。
着いてしまった。
とりあえず眠いから、森芝さんから貰った缶コーヒーを飲もうとした。
「あっ...!」
カッカーン...
落とした缶コーヒーが床に転がる。
いかんいかん。よっぽど眠いのだろう。
えーと、どれだ?さっき電気を消してしまったのが悪かった。
お陰で殆ど見えない。
「これかな?」
缶型の何かを掴みとり、開けて飲んだ。
よかった、コーヒーの味がする。
缶が少し小さくなったような気がしたが、些細なことだ。
扉のノブを回し、恐る恐る開けてみる。
「え?」
あった。『彩心製薬 技術部』と明朝体フォントで書かれているプレートが下がっている。
プレートの下がっている扉の向こうは電気がついており、なにやら話し声が聞こえる。
逃げろ。と本能が警告してくる。さすがにやばいかもしれない。
私はそそくさと早足で、かつ音をなるべく立てないように会社を出た。
子供のころ音を立てないように家を歩いていたのが役立った。
フラッフラになりながら車に乗り、大きく息を吐き家の玄関を開けた。
なんだったんださっきのは。
あまりの衝撃と睡魔で体がよく動かない。
やっとの思いで寝室につき、部屋着に着替えて寝た。
プロローグ 終
- Re: 彩心製薬技術部にて。 ( No.1 )
- 日時: 2022/05/04 21:34
- 名前: SuRuMe (ID: WEVaA//0)
〈第一話 謎の玉的物体〉
朝だ。
昨日の…あれは一体なんだったのだろうか。
「うーん...」
まぁ、とっとと支度しないといけないことだけは確かだ。
支度を終え、車を運転し職場に向かう。
「ん?」
何か変だ。
街を歩いている人達の体の周りに……玉?真珠のようなものが見える。1cmいくかいかないかくらいの。
気のせいだろうか。
職場に着く。
朝礼を終える。
各自仕事に入る。
これは普通に昨日と同じ。だが、明らか不自然なのが……ここに居る人間全員に、先程の
玉がまとわりついているのだ。
それを誰かに聞いてみても怪訝な顔をするだけだ。
昼。
1階の食堂に着く。
うーん...やっぱり、みんな玉がついてる。頭から足まで。
ただ、玉の色が違う人も居る。個人差があるのだろうか。
「桜木さーん!」
「あ、森芝さ...」
あれ?
彼女の体には玉がついていない。昨日と同じだ。
「どうしたの?まじまじ見つめちゃって?」
「いや、別になんでも...綺麗だなーと。」
「もー!!心にもないこと言っちゃってー!!」
その後、私はなぜ森芝さんだけ例の玉がついていないのか考えていた。
疑問だけが頭にはりつくもので、会話がだいぶ生返事になってしまったのは申し訳ない。
「……ぎさん」
「...」
「……らぎさん」
「...」
「桜木さん?」
「はっ!?」
「本当に大丈夫?何が悩みとか愚痴とかあったら聞くよ?」
頼もしい人だ。この人に話すとスッキリするかとしれないし、話すことにしよう。
「あるっちゃあるけど...笑い話として聞いてね?」
私は謎の玉が見える現象について話した。
昨日の夜、彩心製薬について見たことも。
もっとも、それは少し恥ずかしかったが。
「……てな感じなんだけど、おかしいよねー。やっぱ疲れてんのかなぁ...」
「桜木さん。」
「何?」
「今日、帰る前に一階奥の部屋の前に来て。その例の部屋。」
「へ?あ、あぁうん...」
「よろしくね。」
彼女は行った。
やけに神妙な顔をしていたが、心当たりがあるのだろうか。
あるのならさっさと教えて欲しいものだが。
〈第二話 終〉
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