コメディ・ライト小説(新)
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- 下書き置き場
- 日時: 2022/09/09 04:56
- 名前: 百舌 ◆oQCKXpsJ8s (ID: XWWipvtL)
完全系ではないですが、少しずつできかけのものもここに置いとくか、ってね。
- Re: 下書き置き場 ( No.1 )
- 日時: 2022/10/22 01:02
- 名前: 百舌 ◆oQCKXpsJ8s (ID: XWWipvtL)
・2,000~3,000文字以内完結目標で一本。
→短編って何文字以内だっけ? →定義はないが、4,000~32,000文字程度? 諸説あり。
・突発的な書きなので、そんなに作り込んでない。
ここまでで150文字くらい消費してる?
『無言の関係性』
私たちの集合場所は決まって学校の図書室。放課後に何とはなしに集合して、締め出される直前まで適温の図書室で読書をしたり、勉強会を不定期開催する。特別、会話はしない。そういう間柄。
そもそも、お互いに寡黙気味だから無理して話そう、ともならないのだ。でも、たまに手が触れてしまうとさっと手を引いて何故か謝ってしまうような関係性だ。友人以上恋人未満、きっとそんな関係なのだろう。私は彼とのこの何とも言えない関係を保ち続けていたいし、これ以上の関係性になりたいと現段階では考えていない。というか、そういう展開が考えられない。これが2年目の終わりごろの話である。
3年目。というか、3年生になった4月。初めての転機が訪れた。クラス替えだ。これまでは
同じクラスのまま過ごしていたからいつものように「今日も」「了解」という簡易なやり取りだけでいつもを取り決められていたのに別のクラスになってしまった以上、そのやり取りは廃止されてしまった。ということで、些細な変化が私たちに起こった。某無料トークアプリ。最早、多くの人間にとっては当たり前のように使用されるアプリケーションで連絡をしよう、と彼はクラス替え後の正午ごろ、今日は某ファストフード店で昼食を購入した後、近くの公園でそれを伝えてきた。どちらも恐らく不特定多数がいる知らない空間で相手を呼ぶ勇気はないのなら一番手っ取り早い方法だ、とさっさと相手のアカウントを追加し、トークを開設する。
「この後、どうする?」と彼からメッセージ。それくらいは話せよ、と思っていたことが顔に出ていたのか。口頭でごめん、と謝ってきた。うーん、と考えてみたが、何にも思い浮かばなかった。彼の方も考えてはいるようだが、すぐに妙案は思い浮かばず、しばらくそこそこ広い公園、芝の上、端っこのベンチを占領することにした。
あ、と彼が久しぶりに声を発する。どうしたの、とこちらが尋ねると、
「ゲーセンとか普段行く? まだ時間あるし、行ってみない?」
顔をこてんと傾け、こちらに意見を求める。ほんの少しだけ考えて、その意見に乗ることにした。
この公園から10分と掛からない位置にあったはずだ。彼の想像していたゲームセンターもどうやら行く方向からしてそこのようだ。
まぁ、一般的なゲームセンターだ。さっさと扉を開けてどうぞ、と促す。すると、それっていつもやってるの? 親切だね。と言う。それに対して、ただの癖だよ、と返す。ゲームセンター内は想像通りの騒がしさだった。
「何からするの? ていうか、占部(しべ)ってこういうところ来るんだ」
「そう? 意外だった? というか、普段話していても、自分たちのこと殆ど話してこなかったもんね」
そうなのだ。会ってる日数は多かれど、そこまで自分たち自身のことは話してきてない。ただ一緒に居るだけの時間が長いだけの存在。だから、例えばここで占部はどんな人間ですか、と問われたら返答するのにとても迷うくらいに互いのことに詳しくない。3年間クラスが同じでもそいつのことはうわっぺらしか知らないこともあるからしょうがないことだが。
「普段から来るってわけじゃないけど……たまーにかな。クレーンゲームとか音楽ゲームが好きだから」
「じゃあ、見てるからやる?」
「うん、そうする。加古は?」
「いやぁー、見たことないのばっかりだから一旦パスで」
「りょーかい」
会話が終わると、手慣れた様子で100円を機体に入れて、機体が声を上げた。
書いてはみたけど、ここからどうしようってなって進まなくなった。
もれなく、供養させてもらいます。
- Re: 下書き置き場 ( No.2 )
- 日時: 2022/11/22 01:51
- 名前: 百舌 ◆oQCKXpsJ8s (ID: XWWipvtL)
書き方がバラバラ過ぎた。って、書き始めから思ってた。
『ちょっといってる彼女』
全世界へ、僕に初めての彼女ができました。
全世界へ、初めての彼女の様子が少しおかしい気がするのですが、僕の彼女は普通なんですか?
僕にできた初めての彼女。大学生になるまで誰かに告白をすることもされたこともなかった僕。
そんな僕に天使が舞い降りたんです。彼女は『大橋和加』という女性。バイト先の後輩だけど、年齢は僕と同じ21歳。僕も彼女も同じ大学生で、たまにバイト先で会うようになり、何故か彼女の方から話しかけてくれた。どうしてなのかなって思ってたけど、彼女曰く「優しそうだったから話しかけちゃいました」と。たぶん誰の目から見ても愛らしい美人の彼女がどうして他の先輩とかじゃなくて、僕と話そうとしたのかも、その時どうして彼女には彼氏がいなかったのかも疑問だったが、超可愛い彼女に話しかけられてしまえば、そんなもやもやなんてどこかに吹き飛んでしまった。
バイト先で何回か話していると、彼女の方から「連絡先交換しませんか? 今度、映画とか見に行きたいです」と声を掛けられた。そのときも一瞬、どうして彼女みたいな如何にもモテてそうな子がと思ったが、遊び相手とか金づるとして使いたいのかな、と思って警戒しつつも、連絡先を交換すると、バイト後にすぐメッセージが飛んできた。「○○さんっ! バイトお疲れ様です。よければ、この後一緒に食事とかどうですか? ○○さんの行きたいところとかありますか?」と。こんないきなり、とは思ったが、食事くらいならと思って丁度バイト先から彼女も出てきたから「いいよ」とだけ声を掛ける。初めて見る私服姿の彼女は所謂大学生だなと感じさせるファッションで、バイト中は結われていた髪の毛も下ろされていたから普段以上に可愛いなとも、大人っぽいなとも感じてしまった。彼女の姿を見るのが恥ずかしくなり、ぱっと視線を外すと、「どうかしたんですか?」と彼女はこちらの視線の中に入ろうとしてきた。僕は首をぶるぶると振って、「どういうの食べたいの? 取り合えず、歩こう」と話題を持ち掛け、なんとか危険(?)を回避した。初めての彼女との食事。そもそも、これが家族以外の女性との食事だったから、警戒心もあったはずなのに、緊張の方が大きかった。目の前の美女と食事。またとない機会だ。結局、優柔不断な僕のことを気遣ってくれたのか彼女が「ここどう?」と提案してくれ、そこでの食事が決定。そこでは会話もそこそこに解散したが、それからしきりに彼女は僕を遊びに誘うようになった。彼女は僕の何を気に入ったのか一切わからなかったが、結局こんな美人に誘われるのは嬉しかったし、予定が合えば彼女と遊ぶことにした。
ある日、夕暮れごろに解散しよう、と彼女と駅まで歩いていた。が、突然彼女が
「公園、寄りませんか? もう少し、○○さんと話したくて……だめ、ですか?」
上目遣い、甘えた声でそう言われてしまうと、流石に無理だ。公園に寄ることにした。
鉄製の柵に囲われ、滑り台と砂場があってちょこんとベンチが置いてある。そのこぎれいなベンチに二人で座る。そして、彼女が言う。
「○○さん……私と付き合ってくれませんか?」
「……えっ?」
一瞬、言葉を失った。頭は真っ白だ。
「……だから私と付き合ってほしいんです」
「いや、なんで……僕なんかと」
「好きだから……じゃ、だめですか?」
「」
捨てとこ。
- Re: 下書き置き場 ( No.3 )
- 日時: 2023/03/04 01:38
- 名前: 百舌 ◆oQCKXpsJ8s (ID: XWWipvtL)
『漫画喫茶モノ』地文で書いてみた。
→漫喫としてますが、おおよそのイメージは快〇クラブです。
まぁ、一部設定無視している部分もありますが。
あー、最悪だ。最悪だ。今日からアパートの改修工事とか聞いてねぇっての。
それに気づいたのが今日の朝。こんな急にマンスリーマンションとか探す暇とかないっつーの。
しかも、平日だぞ? まぁ、今日が金曜で助かったけどよ。そんな訳で今日お世話になるのが近所にある漫画喫茶だった。漫喫。1日だけで改修工事は終わるってあの紙には書いてあったし、最低限必要なものを買い込んで漫喫に入っていった。さっさと受付を済ませると、あてがわれた番号のある部屋を探りながら探していると、ふと通路で誰かと目が合った。女だ。しかも、制服だ。
見た目から察するに高校生か? なんで、女子高生なんかがこんなとこに? そんな俺の疑問が顔に出ていたのだろうか、黒髪を高めのツインテールに結わえた妹系の顔をした彼女はこちらに近づいて、ほぼ距離ゼロまで迫ってきて、
「んっ……って、何してんだよお前っ」
背伸びしてきた彼女は何故だろう、俺の耳をべろっと舐めてきた。
一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、すぐに冷静さを取り戻して相手に言葉を投げつける。絶対年下であろう目の前の女子高生は無表情で口を開いたかと思えば、
「あんたの部屋、お邪魔するよ。なんでもするから」
そう言って、俺の右手を掴んで勝手にどこかに進みだしたかと思えば、
それまでの行動の真意に気付かされた。通りすがったスーツ姿だが大した清潔感もない若い男が、
「おいれんかちゃん、その男は誰だよ。僕の部屋に入りなよ、ほら昨日みたいにアレしてよ!」
と、必死な声で彼女に呼び掛けていたが、それを一切無視して。
「あんた誰? 別に大人の友達とちょっと遊ぶだけなんだけど? 邪魔しないでよ、訴えるよ」
その言葉に若いスーツ姿の男は黙り込み、棒立ちになっていた。
そういえば、いつの間にか個室の番号付きの鍵は彼女に取られていて、
仕方なくその細い腕に引っ張られる他なかった。
個室の鍵を彼女がさっと開けると、彼女はさっさと部屋の中に入り込んでしまった。
どうぞ、と彼女は言うが、そもそもここは俺が借りた部屋なんだけど、わかってんのかよ。
しかし、彼女は切り出した。
「あの……ま、まずは申し訳ありません。いきなり耳舐めちゃって、それから勝手にお部屋に上がり込んで」
その言葉に思わずえっ、と拍子抜けした声を漏らすと、彼女は困惑を浮かべながら、
「あ、あのぉ……さっきの人は昨日泊めて下さった人なんですけど、でも」
「でも……?」
「……その、よくないことを勝手にしてきて。だから、強引に逃げるためにあなたに無理やり協力してもらいました。本当にごめんなさい」
と、彼女は深々と頭を下げて謝罪をした。
「いいよ、顔上げて。訳アリなのはわかった……でさ」
そうじゃなくて、根本的なことが聞けていない。
「なんでこんなとこいるの? 女子高生さんがこんな場所になんか用ないでしょ?」
そう言い出すと、彼女はバツが悪そうに
「別に……そういうあなたこそ、どうして来たんですか。
聞くのなら、先に話すのがマナーではないんですか?」
露骨に話を逸らそうとしてきたが、こちらには都合の悪い事情なんてものもないから素直に話してしまった。あまりにもあっさりと話してしまったからか、また彼女はなんでさっさと話してしまうの、なんて表情をしていた。
「で、俺は話したけど? まぁ、話したくないならしょうがないよ。この話はもうお終い。で、そういえば聞きそびれたんだけど、君名前は?」
「本名じゃないとだめですか?」
「さっきのれんか、ってのは偽名ってこと?」
「まぁ、そうです……この時代って怖いじゃないですか、個人情報とかなんとか」
「どう考えても知らない男と一泊する方が危険だろ」
「そ、それはそうですけど……そうだけど……じゃあ、私のことは『ほのか』って呼んで」
「りょーかい。あ、俺は『谷崎』。よろしく」
よろしく、という俺のその言葉に反応せず、なんだか物足りない、というかなんで、って感じの表情をしているのは何でだ、と思ったら、
「下の名前は?」
「え、いる?」
「いります! 私が谷崎さん、って呼んでるのにそっちがほのか、って呼ぶのは不公平じゃないですか」
「なら、お前も適当な苗字名乗ればいいじゃんかよ」
「それはなんか違うんですぅ~だ」
腰に手を当て、むっ、と唇を尖らせてなんだこいつ。
「『谷崎潤』……これでいいだろ? ったく、面倒くせぇな」
「うんうん、それでいいのだ」
バカボンのパパかよ、というツッコミは通じないと思ってそっと胸中に仕舞いこむ。
「で、お前ご飯は食べたの?」
ほのかは顔をふりふりと横に振り、
「食べてないけど、何? おごり?」
満面の笑みで勝手なこと言いやがって。
「まぁな……俺は食べたからほら。これでなんか食ってこい。釣りはお前がありがたくもらっとけ。いいな?」
まぁ、そのつもりだったけどさ。なんか、いらつく。
「うん、そうする! じゃあ、ご飯買ってくるね。いい子でお留守番しててね、潤くん!」
なんだあいつ。お前より何個年上だと思ってんだよ、俺のこと。
まぁ、仕方ないのでこの間に漫喫内の設備のシャワーでも浴びてあいつの帰りを待つことにした。
シャワー中、突然現れたほのかの存在をぼんやり考えている余裕もなく、さっさと済ませてしまったが、ほのかは俺の個室の前にいた。
「ん、なんで? 食べに行ったんじゃないの?」
「ここのお店でも売ってるんだよ……で、注文して食べようかなって思ったけど」
「……俺が注文しろってことだろ? わかったよ……」
にこにこしてれば許されるわけじゃねぇぞ?
特別広くもない個室に成人男性1名、制服を着た女子高生1名。あちらはそこまで気にしてないようだが、こっちは気になってしまう。小さくもない体をぎゅっとし、目の前の備え付けPCでどうにか暇を持て余す。やっぱり、自分のスペースに他人がいるとどうも気が散って、落ち着けない。今からでもあいつの部屋取れないか、とフロントに確認するため、後ろを向こうとすると、動けなかった。いや、動けないことはないのだが、腰部分に抱きついてくる存在があった。お前、そういう気でもあるのか。
「……おい、動けないんだけど」
「うん。動けないようにしてるから」
「……なんでだ」
「今、私の個室取れないか聞きに行こうとしたんでしょ? ね?」
「よくわかったな。お前も知らない男と一緒より個室の方が落ち着くだろ?」
「やだ」
「え?」
「やだ。なんでもするから一緒の部屋で寝よっ、おねがい」
予想外の答えに俺は鳩になった。豆鉄砲を食らった。混乱を起こした脳でも言葉を吐き出すことはできた。
「なんでもするから、って言うのはやめろ。さっきみたいになるから」
「じゃあ、なんでもはしないから一緒にいてもいい?」
「なんでそんなに一緒に居たがるんだ」
「だって、一人じゃ寂しいもん、寂しいもん……駄目なの? 潤くん困るの?」
「……あぁ、もう! 勝手にしてろ」
ということで、もうフロントに行く気力は無くなり、ならばもう寝ようと横たわると、
「あれ? もう寝ちゃうんですか? おじさんなんですか?」
「お前から見たら俺はじじいだよ。お前も好きなタイミングで寝てろ。もう俺は寝るから」
でも、こいつは言いたいこと言って寝ることを許す気はないらしい。
目をつぶってしばらく、動く気配は感じたが、そのまま無視していた。すると、
「……はぁ、お前なんだ?」
「お前、じゃなくて。ほのか、って呼んで。お前、とかやだなんだけど」
「それは悪かったって……で、この状態は何なんだ? ほのか」
どのような状態か。仰向けで寝ている俺に覆いかぶさるような形でほのかがいる、と。
簡潔に申すと、このような状態。どいてくれないか。
そっちが万が一その気があったとしても、俺にはその気はない。
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この後、少しそういう展開まで書ければ(勿論そうなれば書く板はここではなくなるのだが)、
よかったんだけど、そのようなものは読まないし興味もないし書く技量もないので諦めてます。
ここに放置しておきます。
昔なんか調べていた時にそういうのを書けば文章書くのが上手くなる、って見た気がしたんですが、もしそうであったら自分は諦めたいと思う。長く書くのも難しいし、短く書くのも難しい。
- Re: 下書き置き場 ( No.4 )
- 日時: 2023/06/17 12:20
- 名前: 百舌 (ID: XWWipvtL)
『視線』
隣の席の北塚くんが私を凝視しているのは何でだろう。視線を感じるのは授業中が一番多い。それでも最初は勘違いだろう、と思っていた。北塚くんが一番窓側で一番後ろからひとつ前の席、私がその隣。だがらちょっと斜め右に見ることは当然で仕方ないことと思っていた。でも、同じクラスの友達の絵理ちゃんに言われた。絵理ちゃんは私の後ろの席だ。
「北塚くんって授業のとき、いつも優佳の方見てるけど、何かあったの?」
いや、何もないのに見られてるんですか。絵理ちゃんがここで噓をつく理由もないし、そもそも絵理ちゃんは良くも悪くも正直な子。だから、私の感じた視線というのは北塚くんからのものであることに違いないと判断した。休み時間は友達と話すことも多いが、自分の席で読書をすることもある。珍しいね、と絵理ちゃんに言われたことがある。現代では珍しいのか、読書する人間って。北塚くんこそ、友達と話してればいいのに。というか、友達がいないわけではないし、なんならスクールカースト上位の静かな子ってポジションのイメージがあってやはり友達がいないわけがないし、昼食時間にはほかのクラスの男子が北塚くんの名前を呼んでいるくらいだし。そんな時も視線を感じる。ぶっちゃけ怖い。私はただの一般生徒で北塚くんの隣の席にいるってだけで、過去に何かがあったとかそういうのもない。勿論、これまで話したことがあるわけでもない。となると、私が知らないうちに北塚くんに何かをしてしまったのではないか、ということになる。そうでもないとこんなことになるはずがない。最近は帰宅してから自室に籠って寝る前にそんなことばかり考えてしまう。あぁ、最近は寝不足だ。明日からテストなのに……。
テスト最終日の金曜日。いつもより早く学校が終わるテストの日は嬉しいような、そんなことないような。今日は午前中に学校が終わる。絵理ちゃんたちと遊ぶわけでもないし、さっさと帰ってしまおうか、とも一瞬考えたが、こんなに時間があるなら今日は本屋に行こう、と自転車は学校付近の書店へと走り出した。
平日のお昼時。だが、私と同じ考えの人もいたのか。同じ学校の制服を着た人もいくつか見受けられた。その1つは今1番見たくない人の姿だった。その人は漫画コーナーにて何かを探している雰囲気だったため、そちらには向かわずに文庫のコーナーへと足を急かした。書店を出てしまう、という選択肢もあっただろうが、折角来たのにそれだけで無下にしてしまおうという気分にもなれなかった。どうせすぐにいなくなるだろうし、相手のことを気にしているのはこちらだけだ、とも思ったし。ただ、現実は甘くないようでその人は漫画コーナーはもう物色し終えたのか、文庫のコーナー、私のいる棚の列にきていた。それを確認したから私はその場を離れようとしたが、できなかった。何故。踏み出した左足とは逆の右手は振りかぶり、その手を掴まれたからだ。相手は誰かわかっているのに、恐る恐る振り返ると、やはりその人だった。はぁ。
「……この手がどうかしたのかな、北塚くん?」
きっと今の私の顔は残念だろうけど、相手を刺激しないようにできる限りやわらかい口調で尋ねてみた。そうすると、ポーカーフェイスだと私が勝手に思っていた彼の表情が変わる変わる。最初はいつも通り仏頂面をしていたのに、一度手を見て、顔を赤くさせていた。それまではこちらをじっと見ていたのに、今は北塚くんの方から目をそらしている。のに、手はそのままなんだ。どういうことだ。表情がわかってもこちらはなんのこっちゃって話だから、まだ聞いてみることにした。
「どうして目をそらすの? なんでそんなに顔が赤いの? 手はまだそのまま掴んだままなの?」
聞こうと思ったこと全て、ではないけど、一気に聞いてしまった。質問攻めか。でも、北塚くんは答えようと口をぱくぱくさせているようだった。ここまで来ると、北塚くんに対する恐怖感は薄れつつあったが、だとしてもこの状況は理解しがたいが。私は彼のことをよくは知らないが、北塚くんは表情が乏しい印象があったからこそ、何故今彼がこんな表情をしているのかがただただ疑問でしかない。
「恥ずかしい、から……照れてるだけ……その、これはごめん」
そう言ってようやく私の右手は解放された。改めて、彼の方に向き直る。北塚くんは何センチかわからないけど、男子の中だとそれなりに大きかったと思う。私は人よりちょっと小柄だからそんなつもりはなくても北塚くんを見上げる形になるが、どうも目が合わない。
「あのさ、色々聞きたいことあるんだけど、いい?」
私がそう尋ねると、北塚くんはゆっくりとうん、と頷いた。答えてくれるようだ。
「今回なんで私の手を掴んだの?」
「えっ……それは……逃げようとしてたから反射で……その、それはごめんって」
「次。普段、授業のときに視線を感じてて。それって北塚くんが私のこと見てたりしてた? まぁ、私の勘違いかもしれないけど」
「……授業中は日下部さんのこと見てた、うん」
正直すぎる。否定してくれ、と思っていたが、あの視線の正体はやはり北塚くんであったわけで……となると。
「なんで見てたの? 北塚くんに私何かしたっけ? もし私が北塚くんに悪いことをしてたのなら謝るし、弁償とかそういうのなら言って? 見られても私わからないから」
この質問に対しては先ほどまでと異なり、すぐに答えなかった。ただ、首を小さく振っている。それから
「日下部さんはなんも……うん、なんも悪いことしてない。その……ぼ、ちがぁ、お、俺が悪いから気にしないで……ごめん、これからは日下部さんの邪魔しないから。じゃあ」
一瞬何か考えていたようだったが、最後は無理やり強引に逃げられてしまった。何にもわからない。なんだ。視線の正体、私は何も悪くない、それはわかってもこれではもやもやが収まらない。結局、その日も寝不足を決めてしまった。
そのまま月曜日がやってきた。テスト返しはまだのようで、そのままいつも通りの授業に入る。あの言葉の通りなのか、以前のような視線も感じなかった。が、それは突然のことだった。隣からバン、という音と一部女子の悲鳴。音のなる方、すぐ隣。北塚くんの方を見ると、まさか倒れていた。これには先生もやむを得ず授業を中断せざるを得ない。
「保健委員か誰か、北塚を保健室まで運んでやってくれ」
その言葉でふと我に返る。いや、私よりによって保健委員じゃねぇか、馬鹿やろう。
何人かの男子生徒が北塚くんを運び、念のために保健委員の私、それからもう一人の保健委員の優月ちゃんで保健室に向かう。私たちは何も話さなかったが、男子生徒の方は世間話のように今日の北塚君について話していたからそれが聞こえてくる。大方の内容はこんな風だ。今日あいつ元気なかったよな。顔色悪そうだったし。結構ふらついて心配だったからここで倒れてくれて逆に安心した。今日のあいつ、なんかいつもと違ったもんな。つまり、今日の北塚くんは単に体調がすぐれなかった。そう、それだけだ。そう信じ込ませるように自分に何度も言い聞かせる。保健室に到着し、北塚くんは無事ベッドに横たわる。保健委員である私たちと男子生徒たちがこんな感じで倒れて、と話したり今日の北塚くんについて話す。保健室の先生はう~ん、と頭を悩ませていたが、
「ひとまず、安静にしてもらいましょう。しばらくして反応がなければまたこちらで対処しますのでみんなは帰っていいよ、ありがとね」
その言葉を最後に保健室を後にした。その後の休み時間は各々の雑談で教室が盛り上がっていたようだったが、一部には北塚くんの話も聞こえてきた。女子なんかは後で大丈夫か見に行こうよー、なんてお気楽な奴もいるけど。
「さっきはびっくりしたね……いきなり倒れちゃって」
絵理ちゃんが後ろから話しかけてきた。
「そうだね……運んでくれた男子曰く今日顔色もよくなかったし、そもそも体調がよくなかっただけなのかもね」
「そういえば、北塚くん今日は優佳ちゃんの方見てなかったね……本当に調子悪かったのかもしれないね」
「そ、そうなんだ……」
一応、それでもあの言葉の通り、邪魔はしない、らしい。保健室の先生には、もう教室に戻っていいよ、とお言葉を頂いたのでさっさと教室に戻らせていただいた。教室に戻った後、何人から北塚くん大丈夫だった? などと質問をされたが、無難に北塚くんは保健室で休んでるからきっと大丈夫だよ、とかそんなことしか言うことができなかった。
それから北塚くんは教室に戻ってくることはなく、そのまま放課後を迎えてしまった。帰りのホームルームの時にも特段連絡はなかったが、まぁ大事になっていないのならいいのだが。帰宅してから絵理ちゃんとトークアプリで話していたが、絵理ちゃんが北塚くんの話題を出してきた。そしていきなり送られてきた、北塚くんってもしかして……? って。本人はどんなつもりで言ってるのか画面越しじゃわからなかったけど、言い方的によくない顔をしているのだろう。いつもより少し遅く眠りについた気がする。
翌日のHR。北塚くんはいつも通り、教室にそこそこ人が増えてきたくらいで静かにやってきた。パッと顔色を見たが、マスク越しではわからなかった。でも、姿勢は安定しているようだった。北塚くんが机に荷物を置いていたのを確認して、
「おはよう、北塚くん。昨日は大丈夫だったの?」
と、声を掛けてみた。いつもは挨拶もしないし、必要最低限くらいの言葉しか交わしていないのだが。北塚くんは一瞬動きが止まって、目をぱちぱちさせて、ゆっくりと顔をこっちに向けて、聞いてきた。
「……え、えっと、俺に言ってる、の?」
戸惑い、驚き。そんな表情だった。うん、とこちらが首肯すると、困ったような(実際困っているだろうけど)表情はそのまま、徐々に耳とか顔が赤くなっているような気がする。お互い何も言えないまま、会話は完結し、北塚くんも何もなかったかのように友達と話していた。4限目が終わってあれは何だったんだろ、とぼうっと思ってると、後ろからとんと肩を叩かれる。振り返ると、絵理ちゃんだった。満面の笑みで絵理ちゃん自身のお弁当箱を突き出して、一緒に食べよ? って。集合場所は自由使用可の空き教室だった。
空き教室に揃ったのは私、絵理ちゃん、そして私たち共通の友人で隣のクラスの千里(ちさと)ちゃん、千里ちゃんの友達の那実(なみ)ちゃんの4人。初めて会った那実ちゃんもちょっとふんわりした可愛い女の子でその場の空間が幸せに包まれながらお弁当を食べ進めていると、
「で、優佳さ……北塚くんといい感じなの?」
千里ちゃんがぶっこんできた。
「でも、うちのクラスの女の子たちは北塚くん恋してるんじゃね、とか話してたよ」
那実ちゃんも何かぶっこんできたらしい。というか、どうやら千里ちゃん、那実ちゃんのクラスの女子によって結成された秘密裏のグループ『北塚防衛隊』なるものがあるらしいが、基本は北塚くんの幸せを祈る実に平和的なグループだそうだが、その団員がそのような内容を話していたというのだ。例えば、
「最近の北塚くんなんかぼんやりしてるよね~。心ここに在らず、って感じ?」
「昨日北塚くん倒れちゃってうちの男子が見に行ったけど、ずっと顔赤いから熱でもあんのって聞いたらさ、違う。違うから、って否定してたけど、じゃあなんで倒れたってなるじゃん」
「北塚くんやっぱ恋してんじゃね?」
まぁ、抜粋しただけでもこのような話をしていたようだ。私が正面衝突されかねないグループだったらどうしようかと思っていたので、グループのトーク内容を聞いて安心した。確かに恋をしているのならば、何かの拍子にその子の何かを思い出して赤面させたりなんだかする恐れもあるか。ガバ推理だが、これに妙に納得してしまう自分がいた。にしても、勝手に誰かに恋して倒れられるのも隣の席であるこちらとしてはそれは迷惑なのだが。
昼休み終了20分前、という微妙なタイミングで千里ちゃんがスマホを見つめていた。そして、驚いた顔でトークアプリのトーク画面をこっちに向けてきた。グループ名が『北塚防衛隊』だったのには触れないでおこう。というか、お前防衛隊だったのか、と視線を向けると、千里ちゃんは違うよ、と首を振って否定していたが、注目すべきはそこではない。話している内容だ。何やらグループ内は盛り上がっているようでぽんぽんと各々の言葉が表示されていく。まるで盛り上がっているスレッドのような反応速度とコメント量だ。
(今日朝、北塚くんの教室行ったの見た?)
(え、うちも見たんだけど。あれは流石に恋でしょ?)
(隣の子誰だっけ、誰かわかる?)
(ん~、うちわかんない)
(私もわかんないんだけど)
(でも、絶対にその子のこと好きでしょ? 北塚くんさ)
(それはそうでしょ。じゃなきゃ、人前で北塚くんあんな表情しなくない?)
(あの顔見れただけでもう嬉しすぎるからマジ感謝つか最高なんだが)
(北塚くんって恋するんだね、って謎の安心感得て最早母性生まれちゃうw)
(母性草。でも嬉しくなったのはマジ共感だわ)
(北塚くんの恋実るのかな~)
(どうだろ……知ってる子で雰囲気わかるならこっちがどうにかさせたい気持ちもあるけど)
(まぁ、成り行きを見つめることしかできないよね~)
(まぁ、引き続き見守りっすね~)
あ~、これもしや私のこと書かれてますね。もしかしなくても書かれてる。というか、北塚くんって私にそういう感情を抱いてる……?
「え、マジで抱いてんの……?」
「優佳ちゃん、たぶん心の声漏れてるよ」
絵理ちゃんの冷静なツッコミを頂いて、少し落ち着きを取り戻す。
「というか、そういう意識なかったんだ……あんたって、天然? それとも、鈍感?」
「鈍感なんだと思います……たぶん」
私が否定する前に鈍感という烙印を私に押す絵理ちゃん。昼休み終了まで残り10分。皆で教室にそろそろ戻ろうか、と動き始めて私もそれに倣って動き始めたが、心の大きなもやは上手く処理することができないまま、千里ちゃん、那実ちゃんとさよならして、教室にたどり着いてしまった。北塚くんが席からこちらのことを一瞬見てきたような気がしたが、気のせいだろう。そのまま迎えた5限目は現代文だった。
帰宅。ちょっと本日の情報量が多すぎる。考えることは放棄だ、と思考を停止させて、さっさと寝ることにした。これでまだ火曜日。明日を迎えても水曜日。
アラームが鳴る前に起きてしまった。朝の4時。おじいちゃんおばあちゃんの起きる時間かよ。暇でしょうがないのでまだ読んでなかった本を手に取り、読み始めた。すると、いつの間にか本来起きるべき時間になっていたのか、アラームがちゃんと鳴り、慌てて準備を開始した。早く起きたのに何をしてるんだ。読みかけの本はそのまま学校に持ってくリュックに突っ込んでいくことにした。
いつも通りの朝。いつも通りに時間に教室に入り、今日はあの続きを読み進めようと本に視線を落としていたから最初は気づかなかった。
「……日下部さん、おはよ」
「えっ、あ……あ、お、おはよ?」
うん、今自然に笑えてなかったと思う。昨日私が挨拶したからやり返されてるのだろうか。妙なところで義理堅いというか、なんというか。再び、本に視線を移す。この気まずさから逃げ出したわけでは決してないのだ、そう決して。どこかからか妙な視線を感じたような気もするが、今日は何もないまま一日の授業を終えられたので満足していたが、帰りのHRが終わると、隣から声を掛けられた。ん、とだけ声を出してこちらに何かを差し出している。なんだ、と思いつつもそれを受け取ると、北塚くんはうん、と頷いてさっさと行ってしまった。何なんだ、あいつは。しかし、これを教室で確認してもいいものなのか、という気分にもなり、本日も素直に家への直帰をすることにした。活動日が殆どない文化部に入って正解だったと今日ほど思うことはない。そんな訳で自室、ベッドに横たわり、受け取った紙を折りたたんだものをまじまじと見る。見た目は普通の紙。何の変哲もない、ただの紙。昔女子がやってた紙をお手紙の形にしてるあれみたいにしていたから、それを開けて中身を確認すると、その紙には文章が書かれていた。念のために、と教室で読まなかった自分をこの瞬間は褒め称えたいと思った。
自信がないのか、小さくて覇気のない字はやけに整っていた。文章の内容はこんなものだった。これまでの謝罪が1枚の便せんに込められていた。これが異性からもらう初めての手紙かぁ……。考えることを放棄して、その日を追える選択をした。
水曜日。まだ水曜日。最低限北塚くんと関わる気力は回復せず、ならば関わらせないようにと私なりの見えないバリアを張った。寝たふり。これで話しかけられることはなおはずだ
面倒になった。放棄。
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