コメディ・ライト小説(新)

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私の意味って、
日時: 2022/09/24 15:55
名前: 向坂緋月 (ID: jkQDRlZU)

〜1〜

「ねえ、佳音っていつもどんな練習してるの?私もピアノ上手になりたい!」 
「まあ、名前からして凄いよね。佳で美しいって意味があって佳音で美しい音。
 てか、苗字も鈴江の鈴!これも音楽系の言葉じゃん」
学校の休み時間、突如私の机にやってきた2人に曖昧に頷く。
野沢優子は凄い名前というが私はこの名前があまり好きではない。
だってまさに音楽関練の名前だから。
カノンは漢字もそうだけど、カノンという楽曲様式もあるのだ。
私は音楽よりも読書が好き。
出来れば本田読子みたいな名前だったら、みんな私がピアノを習っていても、
読書に目を留めてくれるのに。

「たしかに、私なんて佐藤日向だよ。なんか凄いありきたり。」

「いやいや、こっちは優子よ。日向なんて羨ましい」

2人の話題がわたしから逸れたので、目立たぬように席を外した。
窓の外を見ながら何気なく黒板に貼られた時間割を見る。
次の時間は国語だ。単元はオススメの本を紹介しよう。
「やった!」
本という言葉に、思わず声に出してしまった。
一瞬私に目が集まったが、みんなすぐに自分の会話に戻っていった。
ただ、声に出してしまった私を許して欲しいと思う
なぜって昨日の国語は前期の復習といって、漢字のプリントを何枚やったことか。
夏休みが一昨日終わった所なのに。
普通、前期がおわることよりも、今月末の修学旅行に目を留めた方がいいんじゃないか。
後期は10月、あと1ヶ月あるのに。
「三時間目始まるよ」
級長の声と共に各々が席へと戻った。

〜2〜

「佳音、ちょっと来い」
6時間目、修学旅行の班決めをしていると、担任の山下先生から呼び出された。
ちょっと抜けるとまわりの子に言ってから、廊下へと向かう。
叱られるんじゃないと茶化す声やコソコソとなぜ呼び出されたのか考えている声が聞こえてきた。
山下先生はこの川ヶ丘小1厳しい先生、呼び出された子は大体泣いているか怒りをあらわにして帰ってくるのだ
しかしそんな私すら無視している子がいる
高橋輝喜だ。
輝喜はみんなが班決めしている最中も窓側で何かをじっと見つめている。
今年転校してきた輝喜はいわゆるボッチだが、新学期当初は、注目の的だった。
少しつり上がった瞳。筋の通った鼻。引き締められた薄い唇。そしてウェーブのかかった茶髪の前髪を
いじっている様子はとても絵になった。
そして新学期から2、3日経った時、勇気を出して告白したものがいた。
藍沢成美。クラスで一番目立つ人だ。
いつも一緒にいる2人とよく輝喜を、どんな子がタイプかな。今、目があったよ、
とか喋っていたが、休み時間に堂々と教室で告白したのは大した度胸だと思う
ただ輝喜は悪くいうといつもうるさい成美のような子が毛嫌いだったらしく、みんなが注目している中、
ズケズケと不満点を述べ、成美のプライドを傷つけて、教室を出てった。
それからというもの、成美たちは輝喜の悪い噂をでっち上げたので
輝喜は新学期から1週間経った頃には、ボッチになっていた。
ただ、先生方からは成績優秀なため気に入られているらしい。
そんな輝喜を気の毒そうに見つめていると、先生に急かされた。
教室のドアをしっかり閉めて廊下に出ると先生からこう言われる
「佳音、今日から音楽を担当してくれないか」
ポカンとしてしまう。
意味がわからなくて、すぐに返事が出来なかった。
そんな私を見て苛立ちながら詳しく説明してくれた。
「実は、音楽を担当している増田先生がな、交通事故に遭ったんだ。
 命に別状はないみたいだが骨折をしてしまい、入院中らしい。
 そこで増田先生が復帰するまで、佳音に音楽を担当して欲しいんだ。」
「理由は分かりました。でも、生徒に代役を頼まなくても良いでしょう。」
今までだって違う先生が担当したことはあったから、わざわざ私に、と思う。
たしかに人より音楽の知識と実力のある私を使うことはできるかもしれない。
でも学校として生徒を使うのはおかしいのではないか。
先生は即答の私にため息つきながら、めんどくさそうにぼやいた。
「私が知っている中で、生徒を使った授業は前例がない。
 ただ、増田先生はもちろんのこと。他の先生方もお前の実力を見たいんだ。
 お前のお母さんからは、出来るだけ佳音を音楽のことで注目されるようにしてくださいと
 直々に言われたこともあるからな」
私のお母さんもか。
母は私に音楽の才能があると思った時、すぐに人に自慢した。
小学校を入学した時、音楽の授業でピアノのパートがあったら、一番に手をあげるのよとも言われた。
その時は意味が分かっていなかったが、大きくなるにつれて
母は私の友達にまでピアノを間接的に自慢したかったのだとわかった。
今回のことで私を推薦したことも頷ける。
でも、私はひとにおしえるじしんがない。
加えて、よく本で優等生の主人公が上の立場へとなったら
大体いじめられる。
いじめまでいかなくても妬まれはするだろう。
そんなのは嫌だ。
ここは拒否するのが正解だと思う。
「私には無理です。」
「いや、お前なら…」
「無理なんです」
先生の顔が怒りへと染まっているのがわかる。
返事が遅いだけで苛立つこの人、先生の声を打ち消した私はどれだけ叱られるだろう。
言ってしまったのは仕方がないのだ。
怒りの爆弾が頭に降ってくるのを覚悟して、目を瞑った。
「佳音が断るのなら仕方がない。お前のお母さんにもお詫びの電話を入れておくよ。
 呼び出して悪かったな」
思わず目を開けると先生の顔から怒りは消えていた。
戸惑いを隠しきれない。
私はこの厳しい先生に失礼をしたのに許してくださったのだ。
驚きとともに納得した。
教師歴13年目のベテラン先生、きっと私の嫌な気持ちを察したのだろう。
思わず飛び跳ねたくなった喜びも次の一言で消え去った。
「佳音にはピアノしか価値がないのにな」
この一言は普通は聞こえないぐらい小さく呟かれたが、
この耳にはしっかりきこえた
みんなはもう帰った教室へ戻って、あらかじめ6時間目の前に準備してあるランドセル背負い、
私の豹変ように驚いている先生の横を通り抜けた。
家へと無我夢中で走る。
こんなことになったのは全部名前のせいだ。
佳音なんてつけた親のせいなんだ。

あとがき
向坂緋月さきさかひづきです。
あ、これペンネームですよ。
この話、どうですかね。
最終的には明るく終わると思いますけど、それまでは暗いです。
鈴江佳音ちゃんみたいに名前に困った人はいますか?
そんな人の共感できる話にしたいです。
あの、このサイト初めてなのでよく分からないですが、
返信ってコメントのことですよね。
多分誰かが返信してくださったらそのコメントがみれると思うんですけど
あってますか。
感想よろしくお願いします。


〜3〜

「ちょっと、帰ったらまず練習でしょう」
玄関をで待っていた母も無視して自分の部屋までの階段をかけのぼる。
ベットにうつ伏せていると、落ちついてきた。
山下先生の声が忘れられない。
私はピアノがなければ無価値だったのか。
こんなこと言われるぐらいならあの輝喜のようにボッチの方がマシだった。
明日から学校あるの嫌だな。
思いっきり先生の横を無我夢中で走って挨拶もしずに帰ったから、
きっと先生の視線が怖いな。
家に帰ったらピアノピアノピアノ、もう疲れた。
それに自分も嫌い。
こんなにピアノが嫌いだけど、ピアノをやめることはなかった。
多分、自分でも気がついていたんだろう。
ピアノがないと自分じゃないって。
今まで何かと理由をつけてピアノ以外の存在価値を自分につけていたけど、
もう無理だな。
自分で分かっているだけでも辛いけど、他人から言われたっていうことは
先生以外にもそう感じている人がいるっていうことだ。
それにお詫びの電話を入れると言っていたから、そろそろ母に呼び出されるだろう。
「ちょっと降りてきて」
ちょうど来た。
声の感じから怒っているのが感じられる。
ピアノのことについて怒るときは油断が禁物だ。
少しでも生意気な返事をすると殴られるかもと思うぐらいの剣幕になる。
恐ろしさを噛み締めながら階段を降りる。
母はリビングでコーヒーを飲みながら待っていた。








 


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