コメディ・ライト小説(新)

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秋はきっとはやく過ぎ去る
日時: 2022/11/10 04:54
名前: 星夜 月 (ID: krJqPyRx)

「彼女ができたぁ!?」
涼しくて過ごしやすい秋がだんだんと終わりに近づき、厳しい寒さを連れた冬がもうすぐやってくるであろう今日この頃。俺・真島隼斗は、友人である成瀬千秋の言葉に驚きを隠せなかった。
「ちょ、どういうことだよ!俺なんも知らねーんだけど!」
「言ってないからねぇ」
目の前でのんきに笑う千秋の手には、ポッキーが握られている。
「なんで言ってくれねーんだよ!俺ら友達だろ!?」
「あ、だいちゃん、そのグミちょーだい」
「はいよー」
「聞けよ!!!」
八神大輝からグミをもらってご満悦な様子の千秋は、こちらの話など聞いちゃいない。それにしても、ゴリゴリのスポーツマンである大輝の好物がグミだというのは、未だに謎だ。
「てゆーか、なんで隼斗はそんなに怒ってんの?」
「それは、なんというか......」
一ノ瀬優馬からの質問に、隼斗は言葉を詰まらせてしまう。
「なんかこう、心がグァーっていうかさ、モヤァっというかさ、分かんない?」
「ははっ!分かんねーよ!」
優馬が笑ってそう言う。大輝も優馬の言葉に頷いていた。どうやら、このよくわからない感情は隼斗だけが持っているようだ。
「あ、ごめん。彼女から呼び出されたからちょっと行くわ」
「ヒュー!お熱いねぇ」
「うるせーよ」
千秋は笑いながらそう言って教室から出て行く。
「あ、おいっ!待てっ!」
「隼斗〜、無理無理。付き合いたてのカップルの行動力はえげつないからな〜。誰にも止められねーよ」
そう言うなり、優馬も大輝も各々好きなことをし始めてしまう。隼斗は教室からチラッと千秋が歩いて行った方向に目をやった。そして隼斗の目は、彼女らしき人物と歩く千秋の姿を捉えた。
「なんだよ、その顔......」
千秋が彼女に向けていた顔は、隼斗が見たことのないような表情をしていたのだ。全体的にやわらかな笑みを浮かべているが、その目にはしっかりと想いがこもっている。なにより、とてつもなく幸せそうな顔をしていた。たまらず、隼斗は呟いてしまった。誰にも聞こえないように。
「早く別れればいいのに......」
大切な友人が幸せになることは喜ばしいことのはずなのに、そんな気持ちを抱いてしまった自分に嫌気が差した。それでも、感じずにはいられなかったのだ。
そんな顔、俺には見せたことないのに、と。

「いや、それ恋だろ」
翌日。友人の話と偽って、優馬と大輝に昨日の感情を相談してみたところ、このような言葉が返ってきた。
「え?いやでも男同士だぜ?」
「恋愛に性別なんて関係ねーだろ。なぁ、大輝?」
「うん、多様性だよ多様性。ダイバーシティ。授業でやったじゃん」
「そういうもんなのか......」
隼斗はこの気持ちを恋だとは認めたくなかった。今まで友人だと思って付き合ってきた千秋に対してそんな想いを感じていただなんて、なんだか気が引ける。しかし、恋という言葉が胸にスッと落ちた感覚もあった。
「やはり恋なのだろうか......」
「だと俺は思うけどね」
「俺も〜」
「うーん......」
集中していた。とてつもなく集中していた。だからこそ気がつかなかった。
「3人とも何話してんのー?」
「うわっ!!!」
背後から近づく人影に。
「千秋!」
「やっぱ隼斗はいい反応するね〜」
そう言って千秋の腕が隼斗の肩にのる。これではバックハグ状態だ。
「ち、千秋。近いって、近い」
「え〜いつもしてるじゃーん」
先程まで千秋のことを話していたからか、どうしても意識してしまう。顔が見れない。
「隼斗どしたのー?」
そう言って千秋は顔を覗き込んでくる。
無理!無理!心臓止まる!
「ちょっと外の風あたりにいってくる!!」
「え、隼斗?」
教室を飛び出した隼斗は、人気の無いところまで必死に走り続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
無事誰もいないところまでたどり着き、息を整え、落ち着いた瞬間、隼斗は全身から力が抜けたかのように座り込んでしまった。
「はぁ〜、もうやべぇよ。こんなん、」
恋じゃねぇか。
認めたくない。信じたくない。気づきたくない。けれどそう思うには、もう想いが大きすぎていた。
「これはきついな」
自分の気持ちの正体を自覚した途端、隼斗の頭の中には千秋の顔しか思い浮かばなかった。あの忘れられない顔。やわらかな、けれどしっかりと想いのこもったあの顔。
「あぁ、うらやましいなぁ」
涙がこぼれそうになる。しかしぐっと堪え、溢れないように上を向いた。
この気持ちは紛れもなく恋だろう。真島隼斗は成瀬千秋に恋をしている。けれど、大丈夫。この想いはきっとすぐになくなる。
「だって、もうすぐ秋が終わるもんね」
だから、一年の中での秋のように、この想いもきっと、はやく過ぎ去る。


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