コメディ・ライト小説(新)

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声を形にする君と音をカタチにする僕。【3】
日時: 2022/11/17 18:12
名前: 希空 (ID: /wnJrr00)

「……確かに、聴こえないよ」
僅かに開いた彼の口からこぼれた。
「じゃあ……」
「でもね、みんながみんな、手話とか筆記でなきゃいけないわけじゃない」
前髪で顔がよく見えないのに、声で苛立ちと悔しさがにじみ出ている。
――別に、そういうわけではなくて……
口から出そうになった言葉を飲み込んで、再び開いた口に耳を傾ける。
「僕は読唇術が使えるから、別に一見、普通に会話しているように見えるけど……本当はみんなの声聞こえないんだよ」
毒が絡まったような言葉が脳内に居座って離れない感覚がした。
じゃあ、なんで軽音楽になんて入ったの……?
聞きたかったけど、希葉を傷付けるような言いいいぐさで、いうことを諦めた。

気が付けば、時間はあっという間に去り、希葉ともこれ以上話は続かなかった。
「……きっと、もう、会わないんだろうな」
気が付けば口からこぼれていた。
先輩が不思議そうに私を見て首をかしげたけど、小さく横に首を振って「なんでもないですよ」と笑って見せた。

「ただいま」
玄関に声が響き渡り、「おかえり~」とお母さんの声も返ってきた。
家に帰ったころには12時を過ぎており、親と兄は昼食を食べ終わったらしい。
一人で食卓に座り、「いただきます」と、ご飯に手を付けた。
食べ始めてから少し経つと、お母さんが私に声をかけた。
「どうだった?他校の子との交流会、楽しかった?」
……そんなこと聞かなくても、私がなんて答えるかくらいわかってるはずなのに。
「うん、楽しかったよ」
作り笑いを張り付けて、思ってもいないことを口に出した。
「別にこんな奴、また浮いてるんだろ。嘘言ってるんだよ、母さん」
背後から声がしたと思うと、お兄ちゃんが立っていた。
「もう、そんなこと言わないの。初音はいい子だから本当のこと言うわよ。譜矢つぐやも正直者だけどね」
「こいつがいい子なはずねぇんだよっ」
そんな声とともにお兄ちゃんが私の頬を強くつねる。
「痛っ……」
反射的に目をつぶると、お兄ちゃんは鼻で笑って二階へ戻った。
お母さんはバツが悪そうに視線を手に向けると、そのまま立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
――ここには居場所なんてないんだよな……
前から知っていたことなのに改めて思い知らされると心がぎゅっと締め付けられる。
静まり返った部屋で一人、ご飯を食べ続けた。


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