コメディ・ライト小説(新)

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成山君と鮫中さん 6
日時: 2022/11/23 14:58
名前: くろのも (ID: XL8ucf75)

「ごめんね、亮くん。急に歩き出したりなんかして」
学校を出た二人が向かったのは、小さい頃によく遊んだ近所の公園でした。
「いいってことよ!ほれっ」
ベンチに座ってぼんやりしている成山君に、坂城君は自販機で買ったコーヒーを差し出します。
「ありがとう」と、成山君はそれを受け取りました。
「何かあったんか?」
隣に腰かけた坂城君の問いに、成山君は力なく答えます。
「僕じゃ、なかったんだ」
「うん」
沈んだ声色の成山君の隣で、坂城君は静かに続きを促しました。
「始まってないのに、終わった」
「…………」
二人の間を、冷たい風が吹き抜けます。成山君は、オレンジに染まった空を仰ぎました。
「どうせ僕なんて、何の取り柄もない人間だからさ。当たり前の結末だったのかもね」
「んなことねえだろ」
「そんなことある。誰もが皆、亮くんみたいに取り柄だらけじゃないんだよ」
「お前の取り柄なんか、数えきれないくらいあんだろうが」
「ないよ。ないから、鮫中さんは僕の方を見てくれないんだ」
次第に込み上げてくる怒りを、坂城君は大きな溜め息と一緒に吐き出します。
それから、遠くの方を見つめながら言いました。
「お前さ、そうやって言い訳用意して、逃げてるだけなんじゃねぇの?」
「っ!違っ……」
「違わねえだろ」
反論しようとした成山君を止めた坂城君の声はさほど大きくありません。
けれど、有無を言わせぬ力があって、成山君は口を閉じてしまいました。
「僕には取り柄がないから。目立たないから。どうせ僕なんて。
そうやって傷付かないように言い訳用意してさ。そんなに自分が可愛いのかよ?」
成山君は、うつむいてしまいました。
そんな彼に構わず、坂城君は言葉を続けます。
「甘えてんじゃねえの?お前さ、ちゃんと向き合えよ」
「…………」 「…………」
しばらくの間、二人は沈黙に包まれました。
「……亮くんには分かんないだろ」
らしくない乱暴な口調で沈黙を破ったのは、成山君です。
「あ?」
「亮くんには分かんないだろ、僕の気持ち! 分かったような事言ってんじゃねえ!!」
高ぶる感情のまま、成山君は声を荒げました。
坂城君は少し目を見張ったあと、真面目な顔つきで成山君を見据えます。
「ああ、分かんねえよ。」
「なら……っ!」
「人の気持ちなんて分かんねえ。」
凛とした声に怯んだ成山君を睨み付けるようにしながら、坂城君は言いました。

「分かんねえから、あの子の気持ちも確かめた方がいいんじゃねえの、瑠威」

Re: 成山君と鮫中さん 6 ( No.1 )
日時: 2022/11/23 15:04
名前: くろのも (ID: XL8ucf75)

(どうせ恋なんて、上手くはいかない。
 だから、傷付かないように諦めるしかない。
 そう思ってた。
 でも、亮くんは違うって言った。
 それは、ただの甘えだって。
 目が覚めた。
 あの人のところに、
 鮫中さんのところに、
 大好きな人のところに、
 行かなくちゃいけない。)


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