コメディ・ライト小説(新)

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あの桜の木の下でした約束を
日時: 2022/12/08 22:23
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

言うことないね、うん。
とりあえず新作です。久々のラブコメ

Re: あの桜の木の下でした約束を ( No.1 )
日時: 2022/12/08 22:37
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

人物紹介

晶宮帆希あきみやほまれ 16歳 男
中学生の頃に両親を亡くし、半年間不登校をしていた。
現在は普通の高校生だが、トラウマとなって記憶の片隅にへばりついている。
そこそこの身長で、地毛が茶髪。ちょっとだけ顔はいい。

三浦佑香みうらゆうか 17歳 女
帆希の幼馴染み。不登校になった帆希を毎日励ましに行っていた。
料理以外の家事ができない帆希の世話係。お調子者だが、わりとしっかりしている。
容姿端麗で、学校のマドンナ的存在。

花巻早苗はなまきさなえ 16歳 女
帆希のクラスメイトで、佑香以外で唯一不登校時代を知る人物。
真面目で何でもできる。
身長は低いが、顔つきは大人らしい。出るところは出ている。

眞田美空さなだみそら 17歳 女
帆希たちの先輩。
いつも何を考えているか分からないミステリアスな雰囲気が漂っているため、男子には人気。
長身で、文武両道、容姿端麗を兼ね備えた究極の美少女。

Re: あの桜の木の下でした約束を ( No.2 )
日時: 2022/12/09 21:08
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

第1話「寝かせてください」

春の陽気に包まれて、俺___晶宮帆希あきみやほまれは眠っていた。
俺の記憶が正しければ、今日は4月7日。明日が登校日だ。
「...きろ、起きろ」
「...んぅ?」
「起きろぉぉぉぉ!!!!」
「どわぁ!?」
布団を思い切り奪われ、俺の楽園は崩れてしまった。
重い瞼を開けると、紺色のブレザーに赤色のネクタイ。チェック柄のスカートを身にまとった女子がいた。
透き通るほど白い肌、漆黒のボブカット。これだけの特徴があれば誰かは当てられる。
「佑香...まだ登校日じゃないのに、何で制服なんか」
「帆希、今日が登校日だよ?というか入学式まであと20分しかないよ?」
焦ってる様子が見られない。
それもそのはず、佑香___三浦佑香みうらゆうかは元陸上部のエースなのだ。過去には、全国大会2回出場の経験がある。
家から学校まで1000m弱だが、佑香が全力を出せば10分ほどで着く。
「...え、やばくね?」
「だいぶやばいね」

そこから俺は寝起きとは思えないほどの速度で準備し、玄関から出た。
入学式まで残り16分、どう考えても間に合う確率が低い。
「帆希、走れる?」
「...文化部ナメんなよ」
俺は元々吹奏楽部に入っていたが、高校に上がってから写真部に入った。ちなみに佑香もだ。
佑香は趣味で写真を撮っていたので、好きなことができる部活があって良かったと思う。
「んじゃ、行こう」
その後、俺が1分前に到着したのは言うまでもない。

「___新入生のみなさんは、これを意識して高校生活を楽しんでいきましょう」
校長の若干掠れ気味の声が、マイクからスピーカーに出力されて、体育館全体に響き渡る。
ちなみに校長の話が終わるまで21分、長すぎる。イスに接している俺の尾てい骨が限界を向かえていた。
このあとに、担任発表があるが、ぶっちゃけ興味がない。
「っふふふふ...寝てやるぜ」
入学式で寝るというバカの所業、真似できるやつが居るだろうか。
「___続きまして、2-4担当の円山桜子まるやまさくらこ先生です」
「...帆希、いつまで寝てんの。もう閉会式だよ」
気付けば入学式は終わりを向かえようとしていた。
ここまでリラックスできた入学式があっただろうか。

「結局佑香の隣かよ...」
「なに不満?こんな美女が隣に居るのに、欲情の一つや二つしないの?」
「アホかお前」
教室が騒がしい空気で包まれるなか、若い先生がドアから入ってくる音で一気に静まり返った。
「はい、改めまして円山桜子です~。よろしくお願いします~」
少し抜けた雰囲気を醸し出しているこの円山先生は、セミロングの茶髪で美人だ。
担当教科は数学、らしい。

____
「先帰ってるよー」
「んー」
佑香は先に帰宅するとだけ言い残し、教室から姿を消した。
俺は階段を下り、校門まで少し早歩きで向かった。
「...お、帆希くん。久しぶりだね」
オーバーサイズのパーカーに、白のパンツ。腰まで伸びた銀髪は、さらりと靡いていた。身長は俺より少し高い。
見間違えるはずもない、俺がこの世で一番憎い人間。
「...俺はあなたに会いたくないと言ったはずです。薫先生」
瀬戸薫せとかおる、中学校教員だ。担当教科は英語、男子から多大な人気を誇っていた。
「辛辣だねー、君は。んま、今日はこの子を見せに来ただけ」
薫先生の後ろから、茶色がかったボブカットの幼い女の子が出てきた。
その子を見て、俺は一瞬で理解した。
「えっと...かすみです」
「恥ずかしがりやなんだよ、この子。霞っていうんだ」
「...」
「まーその気持ちは分かるよ?でもこの子は何も悪くない。...今度、どこかで話をしようか」
やはり変わっていない。
俺は混み上がる怒りを必死に抑えて、頷いてその場を立ち去った。
望まない妊娠のせいで、たった一回の行為で産まれてしまった子。
取り返しのつかないことをした。

1話終了でーす。

Re: あの桜の木の下でした約束を ( No.3 )
日時: 2022/12/13 22:27
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

第2話「活動してください」

この汐ヶ谷国際高校しおがだにこくさいこうこうは、横浜市に位置する私立校だ。
ここは、運動部よりも文化部の方が圧倒的に多いことが珍しいと話題の高校である。
その中でも特に強いのが、写真部だ。プロが参加するコンクールでは、3年連続日本一に輝いている。
しかし、部室がかなり散らかっている。
「こんちゃーす...」
基本的に部長の私物で散らかっている。
生活できるレベルで色々なものが置いてある。例えば、テントが置いてあるが、部長の私物だ。
「お、帆希よっすー」
胸の辺りまで伸びた髪に、パーカーの上からブレザーを着ているこの人こそ、部長である。
名前は、眞田美空さなだみそら。父親が大手企業の社長らしく、美空先輩はいわゆる社長令嬢というやつだ。
「先輩、そろそろ私物を片付けてください...」
「えー?いいじゃーん、私部長だしー」
頬を膨らませて余る袖を振っている姿は、年上とは到底思えない。
しかしながら、身長は169cmと高く、俺と並べば大差はない。
「よくないです。それに、新入部員だって来るはずですから」
「いやいや、来ないって。こんなギリギリ部活に来る人なんて___」
コンコンコン、と3回ノック。
俺らは誰も来ないと思っていたので、思わず声を上げそうになった。
「...ど、どうぞー」
「失礼します。お久しぶりです、帆希先輩」
そこには、150cmほどの身長で若干丸い顔、ピンクのセーターの上からブレザーを羽織る女子生徒。そして片耳にかけているボブは、色気を感じさせる。
「え、なに?知り合い?」
「ええ、まあ...」
花巻早苗はなまきさなえ、俺の中学時代の後輩だ。
彼女は吹奏楽部出身なので、吹奏楽部に入るかと思ったが、手に持った入部届けには写真部と綺麗な字で書かれていた。
「早苗はここにしたのか」
「はい、先輩が居ると聞いて」
「帆希ー、ついにモテ期とうらいー?」
美空先輩は私物のビーズクッションに寝転びながら、俺をニヤけた顔で見つめていた。
こんな微妙な顔の俺にモテ期があるはずがない。
「モテ期、かぁ...」
不意に溢した言葉は、誰にも届かずに消えていった。

「___んでー、私の私物あるけどあんま気にしないでー。使ってもいいよー」
「先輩、説明を放棄しないでください。それと早苗、お前ミラーレス一眼とかやべえな」
「私、実はvlogやってるので...」
ちなみにうちの学校は私立のクセして校則が緩いので、高額な物を持ってきても問題はない。
まあ、この美空先輩に関しては部室を住めるほどまでに改造してしまった。
「ちっこくーちっこくー...こんちゃーーーーっす!!!」
佑香が思い切りドアを開けて、なおかつ運動部もびっくりの挨拶で入ってきた
「うるせえよ!!それとお前1時間遅刻ってお前何してたんだよ!?」
「桜の木の下で寝てました!!」
「バカかお前は!?分かる!?今2時!4限お前保健室と見せかけて外で昼寝か!!」
佑香は別に常識はある、ただ頭がおかしいだけだ。
「とりあえず、帆希は私と寝ようかー」
「ちょ、美空先輩!?」
俺の肩をがっちりと組んだ美空先輩は、そのまま後ろのソファーベッドに倒れた。
甘い香りが鼻腔を支配し、いかがわしい気持ちになってしまう。
「あ、ズルいー!!私もー!」
佑香が、俺の上にダイブし肘が鳩尾に入る。
声にならない悲鳴を上げ、佑香は深い夢へと落ちていった。
「花巻ちゃんもおいでよー、帆希と寝るとよく寝れるよー」
「え、あの...ま、いっか」
ニコニコの笑顔で優しく飛び込んでくる早苗は、天使以外の何者でもなかった。
...ん?活動は?
「...どうすんだよ」


2話終了でーす。

Re: あの桜の木の下でした約束を ( No.4 )
日時: 2022/12/22 18:12
名前: ぷれ (ID: tEZxFcMB)

第3話「話しかけないでください」

2年生としての生活が始まってから、早1か月が経過していた。
5月といえど、横浜の街は少し冷える。今朝は15℃と暖かったが、それでもまだブレザーだけでは寒い。
「うぅ...佑香は寒くないのか?」
「ん?普通かな」
佑香はついこの前までスラックスをはいていたが、いつのまにかスカートに戻っていた。
しかし俺は、カーディガンを脱ぐことができずにいた。
「帆希先輩」
後ろから聴こえたおっとりとした声に、俺は思わず背筋を伸ばしてしまった。
普通ビビるくね?誰も居ないと思った後ろに人が居るんだぜ?ビビるよ。
「早苗ちゃん!おはー!」
「佑香先輩、おはようございます」
1日の内で一番うるさいのが通学中である。
佑香はうるさいし、早苗が居るともっとうるさいし、この閑静な住宅街では勘弁していただきたい。

「___でさー、お!帆希、おはよう!」
「おはよう。何かいつになくうるせえけど、どうしたんだ?」
俺の目の前で話しているイケメンの名前は、東颯寿あずまそうじゅ。俺の高校からの友達なのだが、ムカつくほどにイケメンなのだ。女子からはちやほやされ、おまけに性格も最高。唯一の救いは、彼女が居ないことだ。
「あんまデカい声じゃ言えないんだけどさ、転校生が来るらしい」
「ほーん...」
俺はカバンを机に置き、スマホに目を落とした。
すると、颯寿が呆れた表情を浮かべる。
「お前もっと興味示せよ...ほんっと、無関心だよなー」
「だってめんどいじゃん。それにあっちだって、質問攻めとかにされたら困るだろ」
確かにな、と颯寿は俺の目の前に座る。
「ぶっちゃけ、お前と結構相性良かったりして」
「バカ言え。俺がモテたことあったか?無かっただろ」
「いやいや、そんなことないぜ?案外お前のそういう飄々とした雰囲気が一部の女子では人気らしいぞ?」
「そんなんどこで聞いたんだよ...」
颯寿は、ノートパソコンを取り出し、エクセルで何かの統計データを見せた。
「お前の魅力が何かの全校アンケートの結果」
「アホくさ」

「はい、ホームルーム始めようか~」
円山先生のふわふわとした声が教室中に響き渡る。
「今日は~転校生が来てくれました~。入って~」
すると、ドアが開き黒髪ロングの女子生徒が入ってくる。
男子はざわめきだし、教室が騒がしくなった。
楪葉紗雪ゆずりはさゆきです、よろしくお願いします」
漆黒の瞳には、何も映っておらず、雪のように透き通るほどに綺麗だった。
俺はその容姿に息を呑んだ。
「はい、みんな色々教えてあげてねー。じゃあ...晶宮くん、楪葉さんをよろしくねー」
...え、俺?
「は、はい...」

「そんでここが自習室。基本的に参考書が置いてあるけど、テスト期間のときと3年生以外は使用禁止になってる」
楪葉は何も答えることなく、俺の方向を見ていた。瞳には光が宿っておらず、何を考えているのか分からない。
「...晶宮、だっけ?あんた、何か隠してるでしょ」
突然口を開いたと思えば、訳の分からないことを言ってきた。
「え、いや別に」
「...あっそ、ならいいけど」
一体この人は何を考えているのか分からない。
「晶宮、私はこれで戻る。あんたも戻るんだったら、私にはついてこないで」
「...は?」
「だから、私にはついてこないで」
呆れたように吐き捨てる彼女は、俺のことを本気で嫌悪しているようだった。
そして楪葉は、教室へ小走りで戻っていった。

「___んで、ここが...」
「ねえ帆希、楪葉ちゃんとは仲良くなれた?」
小声で喋りかける佑香に思わず背筋が震える。
「全く。これ以上にないくらい俺のこと嫌いだと思う」
「...うし、中途半端だからあと自習でいいよ」
現代文はなんとか乗り越え、残りの20分は自習。地獄のような時間から一気に解放され、心は踊っていた。
俺は睡魔に襲われ、欠伸をした。
「帆希~、何寝ようとしてんだよ~。紗雪さんとこ行こーぜー?」
「パス。合わない人と無理して話す必要はない」
つれないなぁ、と颯寿が微笑みながら言った。
楪葉は恐らく俺のことを疫病神か何かだと思っているのだろう。

「...んー?」
スマホの着信に気付いたのは、授業終了2分前だった。それまでずっと寝ていたのだ。
ディスプレイに表示された文字を見ると、そこには俺が一番嫌いな人間からの着信だった。

薫:今日の5時からいつものカフェで会おうよ

何のつもりかは知らないが、俺は気が乗らない。
俺がディスプレイのキーボードに指を近付けた途端、新たな着信が来た。

薫:ただでとは言わない、君の知りたいことは何でも教える

俺は固まった。ここで交渉を持ちかけてくるとは想像もしていなかった。
最初こそ躊躇いはしたが、このチャンスを逃すわけにはいかないと思って、悩んだ末OKをした。
5時まであと5時間45分。

3話終了でーす

Re: あの桜の木の下でした約束を ( No.5 )
日時: 2023/01/05 22:47
名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)

第4話「教えてください」

ようやく最後の授業が終了し、下校の準備を始めていた。
俺は楪葉の方を見るが、そこにはもう楪葉は居なかった。みんなよりも早く帰ったのだろう。
「佑香、早苗と先帰っててくれ」
「えーまたー?最近帆希と一緒に帰ってない~...」
がっかりとした様子に俺は少し嬉しくなった。
「悪い、会わなきゃいけない人が居てさ」
「まあそういうことなら...」
何とか佑香を説得することに成功し、昇降口へ向かう。

日は傾き、雲を茜色に染めていた。
目的地へ向かう足は重いが、どうしてもあの人に訊かなければいけないことがある。
「...ん?」
異変に気付いたのは、カフェまで600mほどのところだった。
視界の端に映る倒れている"それ"は、人だった。
慌てて俺は倒れている人に駆け寄った。
「大丈夫ですか!?...!」
倒れているのは、予想もしなかった楪葉だった。
買い物帰りだったのか、右手には野菜などが入ったレジ袋を握っている。
「呼吸が浅い...!ここは人通りも少ないし、救急車を待っている時間なんてない...!どうすれば...」
幸いにも俺の家が一番近い。それに待ち合わせまで、2時間ほど時間がある。
俺はぐったりとした楪葉を背負い、自宅へと向かった。

「...ここ、は」
「ん、起きたか」
20分ほど経ったころ、ようやく楪葉は目を覚ました。
安堵半分の気まずさ半分で、空気が重くてできれば早くこの場から立ち去りたかった。
「...は!?晶宮、あんたなんでここに居んの!?」
「うわぁ!!??ここ俺の家だし、お前が倒れてるところ見かけたんだ。救急車呼んでる暇なんてなかった」
面倒くさそうに説明して、スマホを覗く。
ようやく状況が理解できたのか、楪葉は俺の目の前に座った。
「あ、あんたのお陰で助かった。その、ありがとう...」
頬を赤らめながらお礼を言う彼女は、中々に好印象だった。
「...なぁ、何か隠してることあるだろ」
俺はタブーだと分かっていてこの質問を投げ掛けた。何か隠していることがあるのだと、なんとなく察していた。
「...なんでそう思うの?」
「なんで?そうだな、俺の勘だよ」
全くもって根拠のないような理由で、我ながらアホだと思った。


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