コメディ・ライト小説(新)

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死んだって、この恋心は忘れない
日時: 2023/01/26 23:08
名前: 黒ユリ (ID: /NiQbooQ)

 教室のドアを開ける。新しい教室、新しい友達。そんなものに俺はワクワクしていた。
 優斗「おはよう」
…誰も返事をしてくれない。ただよう陰キャオーラからだろうか、教室にいる生徒は誰も振り向かない。
「(ああ、やっぱ俺は陰キャだなあ)」そんなことを思いながらすみっこの席に荷物を下ろす。そこで威勢のいい声が聞こえてきた。
 桜「おっはよ〜!!」
 モブ女「なにあの子、すごい美人!」
 モブ男「めっちゃ可愛いんだけど!惚れたわ」
春風桜(はるかぜ さくら)、保育園時代からずっと一緒の幼馴染。まさか高校まで一緒になると聞いたときは、少しびっくりした。名簿番号順に並べられた席で、桜は俺の席の前に座る。
 桜「優斗おはよ〜!組も一緒なんてホントビックリ!ヤバすぎでしょ〜!」
 優斗「…うん」
やはりうまく返事を返せない。なぜだろうか、中学生のころから桜の言葉にだけうまく返事できなくなった。すごく心拍数も上がる。
 〜10分後〜
 先生「……春風桜」
 桜「はい!春風桜です!趣味は読書とゲームと食べること!放課後はだいたい暇だからみんなもよければ遊びに誘ってくださ〜い!待ってます☆」
 「パチパチパチ !」たくさんの拍手。このあとのやつは普通の倍以上緊張する。
 先生「日野森優斗(ひのもり ゆうと)」
 優斗「はい。日野森優斗です。これから…よろしく…」
急にめっさ静かになる。これが死にそうなぐらい辛い
俺はいつになったら陰キャを卒業できるのだろうか。前にはいつも陽キャの桜がいて、もっと陰キャに見える。やっぱダメだな、なにやっても無理なものは無理なんだ。
 そんな感じで、今日は過ぎていった。桜は案の定友達に誘われたらしいからボッチで下校する。帰宅すると、桜から一通のメールが来ていた。
 桜「明日、一緒に帰ろ!」
俺は急いで返信した。
 優斗「もちろんいいよ」
中学時代にテーマパークで友達と映った写真が、桜のアイコンになっている。俺は…うちの猫の写真。ここもだいぶ違う。なのになぜか、桜と話しているとワクワクドキドキが抑えきれない。この感情は一体、何なんだ。
 次の日、昨日言われた通り一緒に帰った。桜はおすすめの漫画の話とか、昨日の面白い出来事とか、いろんな話題を振ってきてくれる。俺はせいぜいその話題を長持ちさせることしかできない。このコミュ力の無さにもうんざりする。
 桜「今の話で思い出したんだけど、質問していい?」
 優斗「うん。」
 桜「ズバリ!優斗には彼氏、いる?」
 優斗「…は?え…い、いるわけねえじゃん…」
 桜「だよね〜!じゃあー、好きな人は〜?」
少しドヤり気味の顔で桜が言った。
 優斗「いねーし!」
赤面して怒鳴ってしまった、最悪なやつだと思われたかもしれん…
 桜「え〜!好きな人もいないの?まじやばたにえんじゃん!」
 優斗「…そう言う桜はどうなんだよ。」
 桜「ふふ、私はいるよ?好きな人、まあ?優斗がいないんだったら恋バナに何ないか、じゃあ別の話しよ」
その日、桜はいつも別れるところの少し手前の分かれ道で「今日こっちだから!」と言って走っていった。
   目線チェンジ!!優斗⇨桜
 桜「私、なにやんてんだろ、」
私は家についた途端、クソデカため息をついてベッドにダイブした。
 桜「そろそろほんとに伝えなきゃな〜」
スマホをいじって検索する。「好きな人 自然な接し方」
 桜の母「桜〜、夕飯できてるわよ」
 桜「よし!明日、伝えよう」
   目線チェンジ!!桜⇨優斗
今日も一緒に帰りたいって言われた。陽キャと話すのは普通ならちょっとキツイんだが、桜ならなぜかキツくない。
 優斗「何でまた誘ったの?」
俺は帰り道で、そう言った。
 桜「伝えたいことがあるから。」
 優斗「何だ?」
桜はにっこりと笑ってこう言った。
 桜「私、もうすぐ死ぬの」
 優斗「…………?」
 桜「だから〜、私、秋の初めに死ぬの〜!」
 優斗「お前、急になに言っ…」
次の瞬間、俺は桜に両肩をガシッと掴まれた。顔を下に向けて、少し大きい声で喋りはじめた。
 桜「…わだしはっ…!秋ごろに死ぬんだって…!」
泣きながら急にそんなことを言われた。俺は一瞬頭の中が真っ白になり、なにも言えなかった。そして10秒後くらいに、やっと声を出せた。
 優斗「…嘘、だよな?」
 桜「うぞじゃないっ…!わだし、ずっと前がらっ!癌があっでっ…!取り除けないようないぢにっ…あるんだっで…!」。
 優斗「と、とりあえず!泣き止んで!」
  〜5分後〜
 優斗「少しは落ち着いたか…?」
 桜「…うん、さっきはごめん、でも私…秋に死ぬのは本当。一番に、優斗に伝えたかったの」
 優斗「……いまだに信じられない。詳しく…教えてくれないか…?」
 桜「うん…。私、中学二年生の時、入院したの。春休みに。そこで検査して、癌だって言われて……しかも、すごく取り除きにくいところにあって…手術はリスクが高すぎて、成功するのはほぼ不可能なんだって。だから、私、秋の初め頃に死ぬの。」
 優斗「でも、まだそうだって完全に決まったわけじゃ…………」
桜はそのあと首を横に振り、話し出した。
 桜「重い癌だから、それはホントに奇跡の中のさらに奇跡ぐらいの確率。だから、もうこれはどうにもならない。」
 優斗「……本当に、死んじまうのか?」
 桜「うん!でもね、いいの!全然思い残してることとか、ないし。むしろ今のまま死んだ方が、未練残して死ぬよりいい!まあ、未練があるとしたら、好きな人と両思いになりたかったなあ…。まだ時間あるし、叶うかもだから頑張るね!」
…………俺は気づいてしまった。自分が………………この春風桜が好きだということに。
 桜「優斗?何で優斗が泣いてんの?おーい、大丈夫?」
 優斗「……ごめん。これは、秘密にしておいた方がいいよな?」
 桜「うん、まあそんな感じ。そろそろ分かれ道だ、バイバイ!」
俺はそのあと桜とどう接したらいいか分からず、そのままあっという間に七月になってしまった。そこで俺は、勇気を出して桜に話しかけた。
 優斗「そのっ…八月の花火大会、一緒に行きたいんだけどどう?」
そうすると桜は目をキラキラさせて言い放った。
 桜「まじで!?もちろん行く行く!…うっ………!」
 優斗「桜!大丈夫か?」
 桜「…うん、へーきへーき!じゃあっ、八月の二十八日の二時に、噴水ひろばで待ち合わせね!」
 優斗「ちょっと早くねーか?」
 桜「お店見て回りたいから早めに!」
そこからまた日々がすぎ、とうとう八月の中旬になった。そして急に桜の母からこんなことをいわれた。
 桜の母「…桜、急に倒れて……今、入院してるの。だから、花火大会は行けないかもしれないわ。本当にごめんなさい。」
 優斗「それは全然いいんです、でも桜はっ、桜は大丈夫なんですか!?」
 桜の母「うん…きっとすぐ目が覚めると思うから…桜ももうすぐ死ぬってわかってるのに、やっぱり辛いわね。それじゃ……ツーツー」
 優斗「……何で桜ばっかり!」
俺は無力すぎる自分に嫌気がさし、思わず勉強机に台パンしてしまった。

花火大会当日、俺はベッドに横たわっていた。すると桜からメールが来た。
 桜「七時からの花火ショーなら行けるかもしれない、噴水ひろばで六時半に待ち合わせ、できる?」
俺は超大急ぎで返信した。
 優斗「もちろん。じゃあまた後で」
俺は急な報告に胸が高鳴っていた。急いで支度を済ませ、六時半に噴水ひろばに行った。すると桜はもうついていた。しっかり浴衣姿で、いつもの桜だった。俺はあまりの嬉しさに、走っていって抱きついた。
 桜「優斗…!会えてよかった!」
 優斗「俺も会えてよかった!このまま桜が死んじゃったらどうしようって!」
 桜「…じゃあ、花火、見に行こう!」
桜に手を引っ張られ、俺は走っていった。するとすごい絶景の橋の上に来て、そこで止まった。
 桜「ここで見よ!」
 優斗「いいけど…いいのか?ここで」
 桜「うん、最後の花火は優斗と見たいから!」
 優斗「え?それってもしかして……」
 桜「そう言うこと!」
どんどん最後の花火に近づき、寂しくなっていく。そこで桜がこう言った。
 桜「ねえ、こっち向いて」
 優斗「なんだ?」
一瞬、なにも考えられなくなった。桜の顔がめっちゃ近くにあって、唇になにか柔らかいものが当たっている。そう、キスされた。
 桜「ずっと前から好きだったよ。短い間でいいから、付き合って!」
 優斗「…ああ、俺も好きだった。いいよ」
2人で手を繋ぎながら、最後の花火を見た。
 その十日後、桜は亡くなった。優斗と幸せそうに手を繋ぎながら。桜の最後の言葉は、
「死んだって、この恋心は忘れない」だった。

          完


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