コメディ・ライト小説(新)

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青一色
日時: 2023/03/16 14:00
名前: 叶汰 (ID: 5R9KQYNH)

あの日、僕らは不思議なことに巻き込まれた。

Re: 青一色 ( No.1 )
日時: 2023/03/16 14:33
名前: 叶汰 (ID: 5R9KQYNH)

登場人物


楠木夏希くすのきなつき 17歳 男
中学の頃に問題を起こし、少し離れた高校に進学した。
現在一人暮らし。

大宮黎おおみやれい 18歳 女
活動休止中の美人シンガーソングライター。
世界的にも有名なはずが...。

井出翔馬いでしょうま 17歳 男
夏希の数少ない友達。イケメン。
彼女持ち。

桐山真理きりやままり 17歳 女
ほとんど授業に出席しないが、定期テストで毎回学年一位を取るため単位はほとんど関係ない。
どことは言わないが大きい。

Re: 青一色 ( No.2 )
日時: 2023/03/17 11:44
名前: 叶汰 (ID: 5R9KQYNH)

第1話「面白いこと」


「...」
楠木夏希くすのきなつきは、図書館にて目の前に立っている少女を見て口を開けてしまった。
7月最終週、夏休み。
「大宮、黎...」
世界的にも有名なシンガーソングライター。大宮黎おおみやれいと出会った。
黎は、夏希に気付き近づいてくる。
「君には私が見えるんだ」
「ぇ?」
「私、なんかみんなから認識されなくなってるらしいの」
夏希は言葉を失った。
一体この人は何を言っているのだろう。認識されなくなっている?
言葉の意味を理解できず、ただ夏希はそのまま去っていく黎を横目に立ち尽くしていた。

「ってなことがあったんだけどさ」
「ついに暑さで頭やられたか?」
「翔馬よりは僕はまともだという自覚があるが」
「お前にだけは言われたくないね」
駅のホームで談笑しているのは、井出翔馬いでしょうまだ。
「しっかし、大宮黎がうちの学校の人だとはねえ」
「あんま人前で言うなよ。そしたら僕らの平和が脅かされるんだから」
「なに言ってんだ。俺らはすでに補習で夏休みを削られてるんだぞ」
「翔馬、それ以上言うな。悲しくなる」
別に赤点などではない。授業の出席日数が足りていないからである。
とはいえ、折角の夏休みを削られているということには、流石に夏希たちも危機感を覚えている。
しばらく経つと、黄緑とベージュの中々に歴史を感じる車両が、エンジン音とブレーキの音を辺りに響かせる。
「はーあ、にしても相変わらず蒸してるな」
「仕方ないだろ、古いんだから」
馬流駅を出発し、小海駅へと上っていく。
車内は人が少なく、女性の機械アナウンスが虚しく響いていた。

「...?」
「あ、今日の後輩くんか」
「大宮先輩」
特に意味はないが、その名前を口にした。
「ねぇ、あれって中学の暴力事件の人じゃない?」
「それにもう一人は、大宮黎じゃない?待って、めっちゃヤバいじゃん写真撮ろ」
「すいませんねぇ、勝手に写真を撮るのは肖像権の侵害に当たると思うんですけど」
夏希はスマホを構えた女子の前に立ち、カメラを遮った。
「だ、誰よあんた!」
「その辺の男子高生ですが、とりあえずスマホ仕舞って。あなたたちも勝手に写真撮られて、知らない人のSNSとかに上がってたら嫌でしょ」
「うっ...だからなに!?」
「まだ分からないかなぁ...こちとら迷惑してるから、さっさとどっか行って」
言葉に威圧感は感じない。だけど夏希から出るオーラは、女子二人を圧倒していた。
「わ、分かったわよ!居なくなればいいんでしょ!?」
怒鳴りながら、女子二人は走って行った。
夏希は先程までの威圧的な態度とは一転し、溜め息を漏らした。
「はぁ...」
「ありがと、助かった」
「あれ、迷惑って言われると思ったのに」
「それを自分で分かってるなら、私が言う必要もないでしょ?楠木夏希くん」
「...僕のこと、知ってもらえてるなんて光栄です」
多少カタコトな日本語で返す。
黎はスマホに目を落としたまま。
「そりゃあネットで調べれば君のことなんかいくらでも出てくるよ。楠木夏希くん6月4日生まれ、中学は嶺岡みねおか第一中学校。相当な進学校出身なのね。中学3年の11月に暴力事件を起こして7人を病院送りにして謹慎、その後高校から行方が分からなくなったと。中3の妹が居る」
「...」
引きつった笑顔で、その半分本当で半分嘘の情報を聞いていた。
「でも所詮はネット。これが本当なのかも分からない」
「そう、ですね」
「...本当に君がやったの?暴力事件とやらは」
夏希は下を向いた。
ここで全てを打ち明けたところで、信じてもらえる確証なんてない。誰も巻き込まない自信なんてない。
「...最初は妹のSNSの投稿に対する誹謗中傷。それが嶺岡第一中に犯人が居ることが発覚しました。すると妹は先輩男子に目を付けられて、ほぼレイプ紛いのことをされてたらしいです。だけど僕は何もしてない」
何も出来なかった、の方が正しいのかもしれない。
夏希はただ妹を助けたかった。でもそれは裏目に出てしまい、いつしか夏希はいじめの標的となり、結果病院送りにされたのは夏希の方だった。
「じゃあここに書いてあるのはガセってことね。ネットはネットね」
「...」
また、言葉を失った。
「じゃ、私行くから。あんまり私と君が先輩後輩の関係とか言わないようにね」

Re: 青一色 ( No.3 )
日時: 2023/03/19 12:48
名前: 叶汰 (ID: 5R9KQYNH)

第2話「研究室の主」


空を赤く焦がした夕焼けは、緑の山々を赤く染め、田んぼはその水面に夕空を映し出していた。
小学校の近くで川の音とひぐらしの鳴き声が、耳に響いていた。
「...」
夏希の目の前に座っているのは、同級生である桐山真理きりやままりである。
「何してるんだ」
「家を追い出されたんだ」
「そうか。お帰りはあちらだが、今日は白なんだな」
「っ!?...死ね!変態!」
パチンという乾いた音が閑静な住宅街に響き渡った。
そして真理を家に入れた。
「なんだ、意外と普通じゃないか」
「僕のことをなんだと思ってるんだ君は...。それで?なんで家追い出されたんだよ」
「そんなの、私が聞きたいくらいだよ」
「ふぅん...お帰りはあちらだが」
「だからなんでさっきから私を追い出そうとするんだ!」
真理のツッコミを無視し、そのまま話を続ける。
「まあいいや、着替えは?」
「あるわけないでしょ...。部活用のハーフパンツぐらいしか持ってない」
「僕のTシャツ貸すわけにもいかないしなぁ...」
「我が儘言ってられないし、楠木のTシャツ借りるよ」
ソファーに腰を下ろし、テレビを点けるとニュースが放送されていた。
内容は、学校のいじめ問題や強盗など、どれも物騒な物ばかりだ。
「...」
「はぁ...」
「どうした、溜め息なんかついて」
「いや、どうして私はこんなダメ男のところに世話になったのか不思議でしょうがないんだが」
確かに家事と勉強ができること以外は、全てにおいて夏希はダメ男だ。
ひねくれた性格に、平均より少し下ぐらいの運動神経。顔もかっこいいかと言われたらそうでもない。ダメ男というより、半端男である。
「そりゃどうも」
「やっぱり、楠木は変態だね」
「まあな」
褒めてないと言いながら、真理は夏希から距離を置いた。
夏希の性格がひねくれるようになったのは、中学最後の登校日の2日前だった。
夏希の親友で初恋の相手である伊東凜奈いとうりんなが、卒業式まで1週間のところで転校してしまったことがきっかけだった。まだそれだけなら、良かった。
凜奈が元気か、それだけ訊きたかった夏希は連絡をしようとした。だけど連絡先が見当たらない。連絡先は確かに交換したはずなのに、どれだけ探しても見当たらない。
ならば知っている人に訊けばいいと思った。だが期待していた答えは返ってこなかった。
「伊東...?誰だ、それ」
おかしい、知らないはずがない。生徒会長で、学校中の生徒が知っているはずだ。
色んな人に訊いた。とにかく訊いて回った。
次第に夏希は壊れ、いじめで更に壊れ、そして夏希は孤立した。
「...楠木?」
「ん?」
「君は何で泣いてるんだ?」
言われて気づいた。生暖かい涙が頬を伝っていた。
慌てて涙を袖で拭い、隠すように鼻をすすった。
「なんでだろ。あれかな、ドライアイだから」
「嘘だね。楠木は嘘をつくときに首をかく」
真理に指摘され、首をかく右手を下ろす。
「...中学の時の話、そろそろしてくれてもいいんじゃないか?」
「...いや、高校卒業するまではしないよ」
かたくなに喋ろうとしない夏希に対して、真理も流石に諦めた。それは申し訳ないとかではなく、こうなった夏希は本当に喋ろうとしない。
少しの沈黙があったあと、突然鳥の群れが羽ばたく音がして、思わず体を揺らす。それは真理も一緒だった。
「...びっくりしたなぁ」
「あれ、なんで家の鍵が」
「持ってたんじゃなかったのか?」
「持ってないから君の家に来たんだろうが」
「そっか」
それは夏希でもやっていた。鍵があれば普通に家に入るだろうし、帰る場所がない夏希にとっては鍵がなかったら死活問題だ。
ピンポーンと、インターホンの音が鳴った。
「はーい」
ドアを開けると、真理の姉が立っていた。
夏希は一応代が被っているので、顔見知りで話したこともある。
「妹さんなら、来てますよ」
「そう?ありがとね。真理って今日、遊びに行くとか言わずにそのまま行っちゃったから」
「追い出されたの。というかお母さん言ってたでしょ?姉さんもその場に居たじゃん」
「え?お父さんとお母さん今日、出張でしょ?」
真理の口ぶりからするに、両親は家に居てそれで追い出された。だが、真理の姉が言うには両親は出張で居ない。
もうすでにここで二人に与えられた情報が食い違っている。
「一体どういう...」
「まあいいや。楠木くん、ありがとね」
「は、はい...」
空は紫だった。

Re: 青一色 ( No.4 )
日時: 2023/03/23 14:36
名前: 叶汰 (ID: 5R9KQYNH)

第3話「希望の朝とは」


「ふわぁぁ...」
夏休みの朝とはいえ、補習があることは代わりはないため、起床時刻は普段と同じである。
小海線は非常に空いており、1両目も2両目もがらりとしている。そんな中、夏希は席に座りスマホを眺める。
『次は、馬流、馬流駅です』
女性の機械アナウンスが車内に流れ、今にも寝そうな体を無理矢理起こして、席を立った。

「っはいざまーす...」
間抜けな自分の挨拶が教室内に響き、きちんと揃えられている窓側の席に座る。
外の景色は見慣れたものであり、何一つとして特別なものはない。
「よ、楠木。今日は井出、欠席らしいから」
「あー、そうなんだ」
ジャージ姿の爽やかイケメンは、夏希の担任である小池一也こいけかずやだ。
年齢23歳で、独身。それゆえに禁断の恋に歩み寄ろうとする女子生徒も少なくない。
そしてあまりにも距離感が近いため、友達感覚で接することができると人気である。
「うし、俺も早く帰りたいし、さっさと終わらせよう」
「へいへい...」

「...先生」
「ん?」


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