コメディ・ライト小説(新)
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- 孤独な私と使い魔の沖田くん。
- 日時: 2023/06/01 17:24
- 名前: オタクちゃん ◆garYubfI0Y (ID: quQfBDMh)
『あらすじ』
私立の名門・雨宮中学に通う中学3年生の文音。
ある日、友達が1人もおらず孤独なことに気付く。
大の新撰組ファンである文音は沖田総司そっくりの使い魔を作ることを決意し…!?
『登場人物』
・仲野文音→中学3年生。新撰組ファンで、沖田総司推し。剣道部。人気者になることを夢見て、中学生活を始めるも、友達ができず、孤独に。実はめっちゃ頭いい。
・沖田総司→文音の石に宿った使い魔。とにかくイケメン。文音のために尽くしてくれる優男かつ、史実と同じように明るい性格。
・佐藤梨花→文音のクラスの担任。文音と同じ新撰組ファンで、土方歳三推し。文音と新撰組の話で意気投合。新米教師。
・鏡見瑛翔→文音の幼なじみでクラスメイト。学級委員長。剣道の腕前は文音に負けない。優里亜達にいじめられている文音のことを気にかけてくれている。
・栗橋優里亜→文音のクラスメイト。いわゆる陽キャ。文音のことをなぜか敵視していて、意地悪をしている。
『目次』
・プロローグ>>1
《第1章 孤独との戦い編》
・第1話>>2
・第2話>>3
『コメント』
オタクちゃん史上初の小説執筆開始です。
今までは雑談掲示板にて活動していたのですが、小説を書き始めることにしました。
未熟な初心者ですが、頑張ります。
感想、いつでも、待ってます。
よろしくお願いします。
- Re: 孤独な私と使い魔の沖田くん。 ( No.1 )
- 日時: 2023/05/20 11:53
- 名前: オタクちゃん ◆vb3RuM0UK. (ID: aOtFj/Nx)
【プロローグ】
初夏の日差しが差し込む川崎駅のホーム。
電車の扉が開いた瞬間、人々が一斉に押し寄せ、人混みの中に、仲野文音は身を委ねる。
今は、学校へ向かう登校の最中。
しかし、その圧迫感は、文音が想像するよりもはるかに深刻だった。
漠然とした不安が文音の頭を巡り、文音は思わず立ち止まった。
「私は、この先どうなってしまうのだろう…?」
文音は、自問自答した。
中3になっても、友達がいなかった。
一人でいることが苦にならなかったわけではないが、時折、「友達」という存在について考えることがあった。
だが、推しに心を奪われていることで、文音は何とかなると思っていた。
しかし、本当にこのままでいいのだろうか。
「お前は…お前は、誰だ?」もう一人の自分が問いかけた。
まるで狂気のように、文音は自分自身を見失いかけていた。
- Re: 孤独な私と使い魔の沖田くん。 ( No.2 )
- 日時: 2023/06/01 16:09
- 名前: オタクちゃん ◆garYubfI0Y (ID: quQfBDMh)
《第1章 孤独との戦い編》
【第1話】
「わぁ…!」
空き教室の隅で弁当箱を開いた文音は、その中身に感激した。
優里亜たちがうるさいのでいつもここで弁当を食べることにしているのだ。
今日は、サンドイッチ弁当だった。
母は娘が空き教室で弁当を食べているとは思わないだろう。
そんな思いが一瞬、文音の胸を痛めた。
しかし、箸を手に取る。
「いただきます」
そう呟き、サンドイッチを口に入れようとした。
しかし、その瞬間、扉が開く音がして、肩をふるわせた。
「文音さぁ、またここで弁当を食べてるの?」
声の主は、文音の幼なじみでクラスメイト、学級委員長の鏡見瑛翔だった。
「どこで昼食を取ろうが個人の自由です。学級委員長がわざわざ訪ねる必要はないんじゃないですか」
と文音は冷静に答えた。
「でもさ、寂しくないの?」
瑛翔の言葉に、一瞬、返答に詰まった。
本当は小学校の頃のように、誰かと一緒に食べたいと最初は思っていた。
しかし、この3年間、こうして食べてきたので、何も感じなくなってしまった。
「中学3年間で『寂しい』という感情を感じない脳の設計になってしまったので何も感じません」
と言い、文音はサンドイッチを口に放り込んだ。
瑛翔はなにか言いたそうな顔をしたが、
「そっか」
と言って、空き教室を出た。
人間はなぜ、これほどにも仲間を欲しがるのだろう。
文音は不思議に思った。
友達なんて居なくても、生きていけるはずなのに。
そんなことを考えつつ、文音はサンドイッチを食べ、昼食を終えた。
- Re: 孤独な私と使い魔の沖田くん。 ( No.3 )
- 日時: 2023/05/26 11:10
- 名前: オタクちゃん ◆garYubfI0Y (ID: OxFItNy1)
【第2話】
「バンッ、バンッ」
という叩く音が響き渡り、黒板を消していた文音は身を後方を振り向いた。
その音の正体は、優里亜が黒板消しを叩き合わせていた音であった。
「うわっ」
と、舞い上がった粉が顔面に飛び散ると、文音は顔をしかめた。
それを見て、優里亜たちはキャッキャッウフフと騒ぎ立てた。
この頃、自分が敵視されていると感じることが度々ある。
また嫌な気分に陥ってしまった。
不安感にかられながら、文音は深いため息をついた。
このままでは、自分が壊れそうな気がしていた。
そんな様子を遠くから見ていた瑛翔は、優里亜たちの様子に、何か引っかかるものを感じた。
取っかかりをつかめ。
奴らの本性を暴きだせ。
傍観者になるな。
文音の腕を引っ張ることのできる人になれ。
今まで学校生活でいじめを防ぐため、散々言われてきたことを思い出した。
学級委員長として、幼なじみとして、瑛翔は文音を助けるための方法を模索していた。
「待ってて、文音。絶対、助けるから」
と瑛翔は心の中で決意すると、自分自身に向き合い、精神的な強さを養った。
大切な幼なじみのために、自分の力を使い切るつもりであった。
「おい、優里亜」
「委員長じゃん。なんか用?」
「お前、なにをする気だ」
「別になんにも。ただ黒板消しパンパンやってただけ」
冷静を保つ優里亜に瑛翔は軽い動揺を感じ始めていた。
彼女は一見すると優等生のように見えるが、実際にはいじめの加害者であった。
それも、徐々に心を蝕んでいく頭を使ったいじめの。
受験して入った名門校である。
いじめも一筋縄では解決できない、深刻なものだった。
たとえ、自分が立ち向かう相手がどれだけ強力だろうと。
文音を守るためには屈しない覚悟でいた。
- Re: 孤独な私と使い魔の沖田くん。 ( No.4 )
- 日時: 2023/07/02 13:44
- 名前: オタクちゃん ◆garYubfI0Y (ID: bp91r55N)
【第3話】
「始め!」
文音の体に、緊張が走った。
放課後、剣道部の練習が始まった。
今回の相手は瑛翔。
部員がかなり少ないので、異性とも対決することがあるのだ。
瑛翔は文音より若干腕は劣るものの、部内ではトップクラスの腕の持ち主。
油断してはいけない。
相手との距離を、目視で測る。
このまま計画通り、攻撃と防御を繰り返せば1本取れるはず。
そう考えながら、文音は徐々に距離を詰める。
「面!」
ついに来た。
防御しようとした瞬間、瑛翔の竹刀は文音の面を直撃していた。
その瞬間、文音の周りから、一瞬、音が消えた。
審判が斜め上方に旗を上げているのを見て、文音は自分が瑛翔に1本取られていたことを自覚した。
あと一本を取られないようにと、改めて正面に向かい合う。
しかし、その後も互いに攻撃しては防御されの繰り返しで、ジリジリと時間だけが過ぎていった。
瑛翔の腕前は文音の想像以上だった。
制限時間が来て、
「勝負あり!」
と審判の声が響き渡る。
結局瑛翔の1本勝ちに試合は終わった。
まさか負けるなんて。
自分の唯一の取り柄と思っていた剣道。
辛さや悲しさを全て忘れるように、打ち込んでいた。
最初は単に新撰組への憧れで入部したが、強くなって勝てるようになる度に、竹刀を振ることが楽しくなっていた。
部活仲間と呼べるような人は居なかったけれど、剣道をしている時は人間関係の悩みさえも吹き飛んで、ただ竹刀を振っていた。
だからこそ、こんなひどい負け方をしてしまったことが、文音にとってショックであった。
- Re: 孤独な私と使い魔の沖田くん。 ( No.5 )
- 日時: 2023/08/12 11:22
- 名前: オタクちゃん ◆garYubfI0Y (ID: lvVUcFlt)
【第4話】
次の日、文音はとうとう、学校を休んでしまった。
別に何か理由があるわけではない。
強いて言えば、体がだるかっただけだ。
親は別に何も言わなかったし、学校を休むことにした。
1日、新撰組の羽織を着たまま、テレビを見て過ごした。
夕方になって、さすがに羽織を脱いで、コンビニに出かけた。
コンビニの唐揚げが、少し美味しく感じた。
午後7時を過ぎて、夕食を食べた。
食器洗いをしようとしたら、インターホンが鳴った。
また着直した羽織のまま、玄関に出ると、そこには瑛翔が立っていた。
「はい、今日のプリント」
「ありがとう。わざわざごめんね」
「いや、平気だよ。それより、家でもその羽織着てずっと生活してんの?」
「うん、そうだよ」
瑛翔は少し眉をひそめたが、言葉を続ける。
「今日学校来なかったから、みんな心配してたよ。大丈夫?」
「へ…?あ、うん。大丈夫」
まさか。
こんな私のことを、心配するクラスメートなんかいないだろう。
瑛翔が嘘をついているように文音は感じた。
きっと、学級委員長だから気を遣っているのかもしれない。
「あのさ、鏡見くん」
「うん」
「学校でもあんまり私に話しかけなくていいよ。本当は鏡見くんだって、私と話すの嫌なんじゃないの?」
「そんなことないよ。文音は、大事な幼なじみだし、栗橋とのことだって解決しないと」
「大丈夫だよ、私、1人でなんとかできるもん」
「もしかして、俺が文音に気を遣ってるとか思ってる?」
「えっ、そうなんじゃないの?」
「いや、そんなことないけど」
「誰だって、人と話す時には気、遣ってるんじゃないの?例え親友だろうと、所詮は他人なわけだし」
所詮は他人。
その考えは、中学3年間で文音が身につけたものだ。
「あっ、ごめん。私なんか変なこと言っちゃったよね…。じゃあ、気をつけて帰ってね」
「あ、うん。またね」
所詮は他人────
その言葉は、瑛翔の脳内で、ぐるぐると回り続けていた。
まるで、自転する地球のように。
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