コメディ・ライト小説(新)

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兄と比べられて育った私の話
日時: 2023/04/09 11:28
名前: 津水まさな (ID: xkqmATKo)

私は無力だ。

そう思えって言われて育ったから。

それが事実だから。

それが私だから。







兄は本に出てくるような大天才だった。

運動、勉強、料理……なんでも言われればできた。

みんなそんな兄を慕った。みんな兄の元に集まった。まるで餌を与えられた犬のように。





私は本に出てくるような嫌われ者だった。

家に仕えてる使用人からも、クラスメイトからも、家族からも、誰一人の愛も感じずに育った。

だからなのかわからないが、あまり感情がない。





私は兄と同じように育てられた。だから、行く学校ももちろん同じだ。

中学、高校、大学の学校は国内で一番難しいと言われている学校。毎日食べる量も同じ。毎日着る服も兄が私くらいの年に着ていた服の女子バージョンのような服。

ただ、一つ違うのは勉強時間だ。

兄は一時間の勉強だけだったらしいが、私は10時間以上は余裕で自学をする。

家庭教師には何度も何度も何度も何度も

「お兄さんの方が優秀でしたよ。」

と言われた。

兄がなんだ!私は私の人生を楽しみたいだけなのに…と思いながら生活する日々。そんな日々を皆は暮らしたことがあるだろうか。人に縛られ、何もできない…







時間は流れ、数年後。

突然私は体の調子が悪くなった。医師によれば無理のしすぎといわれ、入院することになった。

と言っても学年主席を維持するための勉強をひたすらにすることは変わらなかった。学校で習う解き方には飽き飽きしたものだ。別のやり方でした方があきらかに効率が良いのにな…などと思いながら解き進めていった。一週間経つと退院できた。家に帰っても特に何も変わらなかったが、一人の使用人に「クラスメイトの方々が来ていましたよ。」

と言われ

「ふーん。」

と返し、どうでもいいと思った。



次の日



いつも通り学校に行くとクラスメイトが私の周りを囲んで「大丈夫?」と言われた。でも、その「大丈夫?」は心配を全くしていない人の言い方だと私はすぐにわかり、「邪魔」と言った。

私を囲んできた人たちの親から恩を売っとけとでも言われたのだろう。

今更そんなこと言われても何も思わないのにな。そんなことも気づかないなんて…一番空気読めてないじゃん。

などと考えながら授業を受け、家に帰り、勉強。

いつも思う。『友達とは。家族とは。絆とは。』

ある人はこう言うだろう。

「なくてはならないもの」

と。

ある人はこう言うだろう

「支えられてきたもの」

と。

ある人はこう言うだろう

「感謝するべきもの」

と。

果たして、私はそんなことができるのか。いや、そんなことができたら良いな。

私は知らない間に眠ってしまっていた。起きると、日が室内に差し込んでいる。今日は休日だったが私はなぜか無性に部屋から出て、社会というものを肌で感じて逃げ出したくなった。

思い切って窓から出て、ずっと走ると都内だったからなのかすぐに高ビルが建ち並ぶところが見えてきた。私は思わず「すっご」と言ってしまった。

楽しい時間はそう長くなく、すぐに使用人に捕まった。

家に帰っても使用人のリーダーみたいなやつに怒られただけ。次こそは逃げ切ってやる!とその時心に誓った。

神が存在するならこの運命を変えてほしい。もしも兄が生まれてこなかったら…私は普通の令嬢として生活できたのにな。私はその時からおかしかったのかな。一度瞬きするとありえない存在が見えた。

なんだろう。幽霊のような…と考えているとそいつはこういった。

「ぼくは君の願いを達成したら消えるよ。それがぼくだから。」

と意味不明なことを言った。

「そもそもぼくを生み出したのは君だからね。簡単に言えば神は存在したってことさ。でも、神というのはわたしたちにとって人間には見えないただの動物のようなものだ。だから、君のお兄さんのような大天才よりは正直言ってザコなんだ。」

と言われ

「あ、そう。じゃあ幽霊だからユウね。」

と言い話を終わらせた。

次の日からそいつは私に着いてきた。「ついてこないで」と言っても「無理」って言われるもんだから呆れた。変な気持ちだった。

とある日にユウがこうつぶやいた。

「なんで努力をしている君の方が慕われないんだ。」

「…天才だったからだよ。生まれた時からね。」

と皮肉のように言ってしまった。

実際、兄も嫌いだ。

努力もせずに生まれ持った才能で周囲は勝手に集まり神だと崇めたてた。…馬鹿馬鹿しい。

才能があるやつだけを褒めるなんて…人類皆平等なんてよく言えたものだ。

そんな奴でも怒られて人を憎むんだろう?

大人でも、子供でもそれは変わらないのに…なぜ、自分以上の才能があるやつを崇め、自分よりも下だと思うやつは嫌うんだ…意味が分からない。

「今君が思ってることは正しいよ?でもね、それが人だと割り切るしかないんだ。僕だってそうしてきた。そう…してきたはずなんだけどね。」

私はいきなり言われてビックリしたが、今は心底どうでもよかった。







私の使命は兄に追い付くこと。





それ以外はありえない。





外を見ると子供の楽しそうな声が聞こえる。

何をしているんだろう。私も混ざりたい。羽を広げて羽ばたきたい。こんな牢獄から逃げ出したい。

と思ったとき、ユウに手を引っ張られ窓から外に連れて行かれた。

「まずいよ…すぐ捕まえに来るよ…きっと出禁になるよ…」

と私が心配していると、ユウは「はぁ~」とため息をつきながら

「え?出禁が何?それくらいの覚悟がないと逃げられないよ。

死ぬのは終わりだけどさ。出禁になるのは生きてるんだから停止状態みたいなものでしょ。停止だったらまだ可能性はあるんだよ?その手助けの為にぼくが生まれたんじゃない?自分でもよくわかってないけどね。」

と言い走り続けた。

ユウは流石と言っていいのか走るのが速かった。

そりゃあ?私だって?それなりに?頑張ってるはずなのに?速すぎる…

「ちょっと待って…」

「やだね」

「ちょ、ちょっと待ってって…本当に!待って!」

「わかったよ。ったく…」

はぁぁぁぁぁぁぁ。とんでもないやつを召喚(?)してしまった…

顔はかっこいいくせになんだよ。めっちゃマイペースやん。性格どうなってるんだよ。ユウ速すぎるでしょ。

「あれ?ぼく速すぎた?」

「うっざい(ボソッ)」

「え?(怒り)

「あ、なんでもない。行こう!」

そして数分走った。先日見たビルが見えてくると人が多かったが、私はお構いなしに人にぶつかりながらも走って行った。

「すいません…」

そして、公園を見つけ休んでいると使用人に見つかった。

「お嬢様!ダメではないですか!お嬢様のお兄様は家で静かに研究をしていらっしゃいますよ。帰りますよ。」

そう言われ強引に車に乗せられて家に帰った。移動中は説教だった。

後から知ったことなのだが、さっき私がいなくなったあとにビル前で事故があったらしい。

いやぁ、間一髪だった。危ない危ない

家に帰ったら風呂に入り、ご飯も食べずに寝た。

ユウも私の隣で寝るのだが、邪魔でしょうがない。

次の日

人だけではなく幽霊も理解できないなんて、この才能もないのか…

いや、才能関係ないか。あるのか…?

と思いながら本を読んでいると

「お!遂にぼくのことをわかる気になった?ぼくは君のことがわかるけど君はぼくのことがわかってないみたいだったからね。困ってたんだよ」

「わかる気になったのは認めるけど、そもそもなんで私の心を読めるんだよ」

「それは極めて簡単。君がぼくを呼んだ…というか、ぼくに声が聞こえたから。君の心からの願いの声が。これでもぼく、天界では結構優秀なんだよ?」

「そうですか。天界は私にとってかなり先にお世話になりそうだから今はあまり知りたくないんだけど、一つ質問しても?」

「え?あ、うん」

「何を戸惑ってるんだよ… 天界ってどんなことをしてるの?」

「なにその厨二病みたいな質問…え~っとね、あまり人間と変わらないよ。稼いで、生活する。お金を払って生物に転生するよ。植物はあきらかに安いけど、一番高いのは人間だったね。たしか。ちなみに、ぼくはちょっと独特な方法で天界に行ったんだけど、普通は死んで天界に行く。」

と言われ独特な方法というのを考えてみた。何度も聞いてみたのだがどうやっても教えてくれない。なぜ教えてくれないか聞いてみるとそれは教えてくれた。

「だってさ…簡単に天界に来てもらうとバランスが完全におかしくなるじゃん…実際教えてあげてもいいけど、天界を管理するものとしてめんどくさいんだよ…」

「それが本音か…まあ、理由はわかった。だから自分で考えろと?」

と、呆れたように言うと

「それはちがう。ぼくが言ってるのはぼくのことを理解し、ぼくと意思疎通できるようになればいいってことだよ。」

「はあ?じゃあそれは一生無理だね。やめだやめ。私はもう諦める」

「そのうちわかるさ。」

と言われ、意味がよくわからなかった。

ユウは私と会話をしたいようだったが、私には興味がなかった。

そんな話をしているうちに日は落ちていた。

兄は今日も研究をしているようだ。

私は兄のことを凄いと思ったことはない。いや、嘘をついた。物心があまりついていないときは「凄い」「天才だ…!」と憧れていたのだろう。だが、今ではただの憎むべき対象である。

ユウと話していてもやはり憎い気持ちは変わらなかった。

ある日、兄が研究所で倒れたと聞いた。

「は?あの人が倒れるわけないでしょ?ありえないわ。」

と私が言い放つと

ユウは

「ぼくにもわからないけど、実際に倒れているんだから仕方がないでしょ?信じたくなかったら、自分だけを信じていればいい。」

「それもそうね。」

そして病院に向かった。

「お、お前がどうしてここにいるんだ……」

「……見舞いに来たから。で、いつ死ぬの?」

「……は?なにいってんだよ……」

「いや、死ぬのかなって。別に、死ぬなら死ぬでどうでもいいし。」

「……そっか……」

「なに今更共感求めようとしてんの?」

「……は?どういうことだ?」

「そのままの意味だけど?あなたの研究は確かに素晴らしいものだと思う。でも、そのせいで私は不幸になる。だからお前が死んだって私には構わない。私は2年後どうせこの家から出ていく。そうだったらさっさと邪魔者が消えても何も思わない。あ、ごめんごめん。嫌われたことがない人に言っても意味がなかったね。」

「なんでそんなに言うんだ?俺、いつお前をいじめた?」

「いじめてない?なにいってんの?ずっと前からいじられてる。」

「はぁ?俺はいじめたことなんてないぞ!ふざけるな!」

「るっさい…私たちの財閥が管理してる病院だからって大声出さないで。」

と言って部屋を出ていった。

ユウは少し悲しげな表情をしていた。

兄が入院してから3日後、ユウから話しかけてきた。

「お兄さん…亡くなったって…」

「そうとでも死ぬんだ~。で、なんの病気?」

「癌……」

「へぇ~。ま、私には全く関係ないけどね。」

「は?なんで関係ないんだよ。家族なんだから関係ないことないでしょ。」

「私と兄の間には何も無い。」

「はあ……じゃあ、なんでお兄さんのところに行ったんだよ……」

「それは…なんでだろう?」

「は?」

「なんか、行かなきゃいけない気がした。それだけ。」

「ふぅ~ん(こいつも……)」

「ふぅ~んの後になにか言った?」

「なんでもないよ。ん?聞こえたの!?」

「こいつも……って聞こえたよ。」

「そっかぁ!やっとだ!ぼくのことを理解できたね。それはぼくが思ったことだよ」

「そうなの?」

「うん。あと、約束して。」

私は何を言われるかわからなかった。すると、驚くことを言われた。

「死にたいって思わないで。絶対に」

私は唖然としていた。

なぜ、私が死にたいと思うと思ったのだろうか。

そもそも、私は一度も死ねたら楽だろうなとは思っていたが、自殺する気はさらさらなかった。

なぜわかったのだろう……

だが、ここで変な態度をとるとまた何か言われそうだから平然を装った。

その後、兄の葬儀が行われた。

参列者は多かったが、私の知り合いはいなかった。

葬儀が終わり、家に帰ると父が部屋に来いと言った。

部屋の中に入ると父は椅子に座っていた。

「……お前は今、幸せか?」

「はい。まあ、それなりに……」

「そうか。…実はな、お前の兄が残した研究があるのだ。その研究は人体実験が必要だ。だから、それをやってくれないかい?」

「嫌です。」

私は即答した。

「……どうしてだい?これは君の兄の願っていたことだよ?」

「兄は死んだんです。それに、兄…ソウトのことは嫌いです。」

「はぁ……残念だ。仕方がない。別の人に頼むとしよう……」

「はい⁉他の人を犠牲にするつもりですか?」

「ああ。それがどうしたんだい?」

「それがどうしたじゃないですよ。そんなことをしていいと思ってるの?」

「いいと思っている。」

「はあ?あんた、頭おかしいんじゃないの?」

「おかしくはない。これが当たり前なのだ。お前が今までやってきたことが普通ではないだけだ。」

「なにいってんだよ……私は何も悪いことをしていないし、人殺しの家庭なんているつもりはない!」

と言い、家を逃げ出してしまった。

ユウには申し訳ないが、今は1人で考えたかった。

外はもう真っ暗だった。街灯が光り輝いていた。

家に帰りたくない。どこに行こう? そう考えているうちに、無意識に自分の足は走っていた。

「逃げなきゃ…逃げなきゃ…」と言っていると、ユウは

「もう大丈夫だと思うよ。」と言い私は安心した。

すると、倒れてしまった。

(私、これからどうしよう…)と本気で考えていると一つのことを思った。





(私…死ぬかも)





「え⁉ちょっと!やめて!!!!!死なないで!!!」

とユウが叫んだ瞬間私は破裂した。次に眼を開けたときはユウが目の前にいた。

「君は死んだよ、サイカ。」

とユウに言われた。

「…は?」

「うん。死んだよ。だからほら、目の前にいるんだよ、ぼくがね」

「え?まってまって。ということは私は天界にこれから住むの?」

「そうだよ?ぼくが手伝うよ。っとそのまえに自己紹介をさせてもらうよ。」

とユウが言うと話し始めた。

「天界第二王子 ユウ・リンラルティ・サクリスと申します」

「え?王子?どういうこと?」

「天界の王様、女王様、王子、王女は天界にきた順番を表すんだ。だから2番目にきたぼくは第二王子ってこと。ちなみに王族は十人しかいないよ。そのあとに来た人たちは天界でのんびりと暮らしてる。」

「へぇ~」

「あれ?あんまり興味ないみたいだね」

と言われたので、「そりゃあ関係ないもん」といい、私は天界で暮らすことにした。


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