コメディ・ライト小説(新)
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- サバ人間。
- 日時: 2023/05/12 16:18
- 名前: t (ID: QNWf2z13)
1
隣のクラスに、「サバ人間」という人がいる。もちろんあだ名だ。私はあまり詳しくないのだが、聞くところによるとサバがとんでもなく好きらしい。高校1年の夏。今も、彼のことを詳しくは知らない。
私の名前は田中圭。初対面の人は大抵驚くが、本名だ。見た目も遠く及ばないのだが、イケメン俳優と同姓同名だと、なんだか生きづらい感覚があった。部活は野球部だったが、3ヶ月で退部した。そりゃあそうだ、金髪ロングの私が野球部に在籍できた期間があっただけでも大成功だ。「明日までに髪を黒く染め、切ってこい!」という監督の言葉を無視し続ければ、部活をクビになって当然だ。
来週から夏休みである。私は、今日も暇だった。
1時間目の授業のあとのつかの間の休み時間、教室の窓から風を受けながら、たそがれていた。青空が広がる。
- Re: サバ人間。 ( No.1 )
- 日時: 2023/05/12 16:28
- 名前: t (ID: QNWf2z13)
2
今日もサバ人間の話しをクラスメートがしている。
「昨日のライブ配信見た?サバ大食いやばかった!」
なんだ、サバ人間はライブ配信者でもあったのか。
昼休み、弁当を丁度食べ終えた所だったのでスマホを取りサバ人間の動画を検索してみた。YouTubeに「サバ人間」でアカウントがあった。顔出しもしている。これまでにたくさんの動画を上げているようだ。
サバ人間、やるじゃないか。
放課後。カバンを背負い帰り支度をしていると、肩を叩かれた。振り向くと、そこにはサバ人間がいた。
「田中圭くんだよね?初めまして」
私は戸惑った。今まで接点がなかったサバ人間が、話しかけている。
「そうだけど」
私が返すと、一緒に帰らないか、と誘われた。訳が分からなかったが、用事も無かったので、一緒に帰ることにした。
数分後、私はサバ人間と肩を並べ街中を歩いていた。
- Re: サバ人間。 ( No.2 )
- 日時: 2023/05/13 10:58
- 名前: t (ID: QNWf2z13)
3
サバ人間が話しかける。
「田中くんは、魚で何が一番好き?」
唐突な質問だ。私は魚は好きでも嫌いでもなく普通の感覚だった。しかし、答えを返さないと失礼だと思い、
「うーん、私はマグロかな」
と返した。
「マグロかあ。マグロが一番好きと答える人って大多数だよね。サバが好きと答える人は少数だ」
サバ人間が言う。確かにそうだが。
「サバ人間は、どうして今日私と下校しようと思ったの?今まで、話したことも無かったよね?」
一番の疑問をぶつけてみた。すると、サバ人間は、数秒黙った後、
「信じてもらえないかもしれないけど、実は、僕たちは宇宙人なんだ」
午後の風が緩やかに流れる。曇り空。私はサバ人間に聞き返した。
「宇宙人?」
サバ人間のギャグか?
「いいや、違うんだ。ガチで本物の宇宙人さ。」
- Re: サバ人間。 ( No.3 )
- 日時: 2023/05/13 11:22
- 名前: t (ID: QNWf2z13)
4
「僕らは、地球から3億光年離れた『Y's』という惑星の生物なんだ。地球上にはY's人が3割いるとされている。実は、江戸時代にY'sから宇宙船が漂着したんだ。5隻。その中にY's人が数億人乗っていた」
サバ人間が続ける。
「見た目が地球人と同じであることから当時の人間はY's人を受け入れた。この事が公表されることがなかった。何故かって?人類が分断され新たな争いになるのを避けるためだ」
私はサバ人間が何を話しているのかよりも、何故その話しを私にしているのかが疑問だった。
「待ってくれ。それは、どういうギャグなんだ?(笑)」
私が言うと、サバ人間は笑いながら、
「そうだよね。信じるわけがない。でも、僕らY's人には、ある特殊能力が使えるんだ。それを見てもらえば信じるはずだ」
サバ人間は少し深呼吸をした。
「となりの客はよく柿食う客だ、となりの客はよく柿食う客だ、となりの客はよく柿食う客だ、となりの客はよく柿食う客だ、となりの客はよく柿食う客だ」
- Re: サバ人間。 ( No.4 )
- 日時: 2023/05/14 16:16
- 名前: t (ID: QNWf2z13)
5
「というように、早口言葉がY's人は得意なんだ。田中くんもできるはずだよ」
私は困惑した。ギャグなのに、空想をも入り交じる新しい独特のセンスに脱帽した。
「早口言葉かあ。じゃあ、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙・・・」
私は驚嘆した。早口言葉が、すらすらと言える。今まで私は早口言葉を口にしたことが無かったから初めての事だったのだが、早口言葉がすらすらと言えてしまう自分に驚いた。
「サ、サバ人間・・・!」
サバ人間はフッと笑った。
「そうさ、田中くんは早口言葉が得意さ。何故なら、Y's人だからだ」
その日以来、私の日常は変化した。
起床。学校へ行く準備のかたわら早口言葉を言ってみる。東京特許許可局、東京特許許可局、東京特許許可局・・・
やはり、言えてしまう。
学校へ着いてもその現実にさいなまれた。何故だ。何故今まで気付かなかったんだ。私に早口言葉という能力があったなんて。
サバ人間の言う「Y's人」というのも信じがたいが、事実なのだろう。何故だか確信できた。
私は、地球人ではない、Y's(ワイズ)人・・・
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