コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

明日の生き方
日時: 2023/05/29 23:00
名前: いくら (ID: UIQja7kt)


体育大会
修学旅行
学校祭

あと残すは…卒業式だけ。


〜明日の生き方〜

「おはよう!」
「…おはよ。」
康介は直樹の机に押しかける。
「あと半年もしない内に卒業だ。なあ、やっぱ今のうちにどこか遊びに行こうぜ。」
「仮にも受験生なら、まずその言動から改めるんだな。」
冷たく言い放ち、直樹は席を立った。
「おい待てって!」
「予鈴聞こえてるだろ。早く行くぞ。」
直樹は一足先に教室を出、康介もそれを追いかけた。


直樹は昔、今ほど冷たい人間ではなかった。


「康介!明日暇?どこに行く?」
「明日は家族で出かけるんだ。」
「え〜、僕がつまらないじゃないか!」
「小学生だから、行けるところは限られるし…そうだ!明後日なら空いてるぞ。」
「じゃあ公園前集合で!」

直樹から康介に遊ぶ予定を申し込むことなど、当たり前のことだった。



「次の問題、佐澤。」
「はい。」
今、彼は頭脳明晰で物静か、いつも独りな中学三年生となった。

カッカッ
「正解だ。さすがだな、佐澤。」
「すげえな直樹!」
「これくらいできて当たり前だよ。」
康介も気づいてはいた。直樹が、暗く、自分を閉ざすような人間に、いつからなったのかを。その日から、なぜ直樹が変わってしまったのかを知りたがっていたが、それを本人に伝える術は、今のところ彼には無い。

しかし、その日は何かが違った。

「今日も図書室か?」
「ああ。」
「なあ、大丈夫か?無理すんなよ。」
「してない。」
「そうだ、ジュース奢ってやるよ。」
「余計なお世話だ。」
流石にムッと来た康介は、思わず口にした。
「お前、高校には行かないって言ってたのに、なんでそんなに勉強してんだよ。」
「…」
康太はハッとし、慌てて謝った。
「あっ、ごめん…今のは…」
「すまない。僕も、最近の当たり方は強かったかもしれない。焦っていたから…だいぶ。」
彼は自販機のボタンを押すと、冷えたドリンクを康介に差し出した。
「少し僕の話を聞いて欲しい。」
「…おう。」


2年ほど前

「母さん」
「どうしたの直樹。」
その日はすこぶる調子が悪かった。
「具合が悪いんだ。」
「今日は休む?」
「いや、行くよ。学校行って具合悪くなったら、保健室行けばいいし。」
「そう。無理しないのよ。」
「はーい。行ってきます。」

次に目を覚ましたのは、ベッドの上だった。
「あれ…」
「直樹!!」
「母さん?」
その日は本当に、調子が悪かったらしい。僕の思いすごしとかじゃなくて。



そうとだけ言われた。
どこの癌とか、あと何年生きられるかとか、医者の説明は難しくてよく分からなかった。でも、数年も生きられないことは理解した。


「高校に行かないんじゃなくて、行けないんだよ、僕は。」
「…なんで黙ってた。」
「言ったって、状況は変わらない。」
「んな事言ってんじゃねえ!!」
康介は立ち上がった。
「お前は!最後まで隠し通すつもりだったのか!?お前が死んでから、真相を俺がお前の母親から聞いて、その時俺がどうなるかなんて想像もせずに!!」
直樹は俯く。彼も考えなかった訳ではない。しかし、康介にはどうしても言い出せなかった。親友を悲しませたくなかった。それが彼の本音であった。
「俺…何年も…俺ずっと…お前のこと心配してたんだぞ…?」
康介は泣いていた。
「そんな…俺の気持ちもよそに…追いやって…お前さ…ほんと…」
上手く喋れなくなってしまった康介は、直樹に背を向けた。
「…帰る。」
直樹は引き止められずに、ただその背中を見送るばかりだった。


目を擦り、帰路に着く康介。
「…あいつ、あんなやつだったのか。」
(そういや、ずっと一緒だったな。幼稚園も、小学校も。休日はいつも一緒にいて…)
康介は立ち止まった。
「そうだ…いつも、あいつからだった。」
「康介っ!!」
「…!」
「はあっ、はあっ、」
「お前っ、体良くないんだろ!」
「いいんだ…今日は調子がいい…」
「だからって!」
「後悔したくなかったんだ…!康介に、心配の眼差しで見られたくなかった…。」
直樹は座り込み、荒い息を整えた。
「ごめん…本当は康介と遊びたい…もっと、色んなことしたい…でも、遊んでる時に具合が悪くなって、倒れたらって思ったら、怖くて…悟られるのが怖くて…。」
「そんなもんか?」
「え…」
「そんなもんなのか?俺たちの友情って。いや、そうじゃねえだろ。親友ってのは、そんなもんじゃねえだろ…」
「でも…半年後には僕が死んでるかもしれないんだ。そう考えたら、やっぱり怖いだろ?」
康介は直樹を立たせた。
「そんなの俺だってそうだ。誰だっていつ死ぬかなんて分からない。それを受け入れることは難しい。でも、明日どう生きるかなんてのは、俺が決めることだ。運命なんかに左右されてたまるかってんだ。」
康介はニカッと笑った。
「今を大切に。在り来りだけど、一番難しいことだ。」
彼は大きく伸びをしてから、言った。
「明日どこ行く?」
「えっ」
「今を大切に、な?」
「…うん。」
「どこでもいいぞ。もう中学生だからな。」
「じゃあ、公園前集合で。」
拍子抜けする康介は、どこか懐かしそうに笑った。


明日の生き方
・楽しむ
・笑う
・自分で決める

メモ:今を大切に

end

Re: 明日の生き方 ( No.1 )
日時: 2023/05/29 23:03
名前: いくら (ID: UIQja7kt)

こんにちは、いくらです!
この度は作品を読んでくださり、ありがとうございます!
シリアス・ダーク小説にも、長編の作品を投稿しています。よろしければ、是非そちらの方も読んでみてください。
こちらには、短めの作品を投稿していきたいと思っています。読みやすく、後味の良い作品を目指していますので、よろしくお願いします!


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。