コメディ・ライト小説(新)
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- イチノのトリセツ
- 日時: 2023/08/28 01:36
- 名前: ぶぅ (ID: CDmrGdY1)
自分こと西園寺一乃は、つまらない人間である。
自分で言うのも何だが、それはもうつまらない。例えばだが、星の輝く空を見上げたら、人々はなんというだろう。きっと、美しい、きれいだ、とつぶやくであろう。
しかし、この世には、空を見ると、「あ、空だ。」というだけの奇人が存在するのである。
まあ、自分のことだ。
感情が乏しい、とは幼い頃からよく言われていた。別に、笑わないわけではない。涙がないわけではない。“動作”に“感情”が伴わないのだ。
自分には一般に人が感じる人の気持ちをよく理解することができない。この前の修学旅行では、好き?だった相手に告白した。後で振り返ると、なんで告白したのかもわからない。
結果OKはもらうことができ、見事に付き合うことができた。が、付き合った期間は脅威の一ヶ月。相手いわく、つまんなかったそうだ。
そりゃ、そうだ。
そうなんだが、振られた瞬間、ものすごく辛かった。それと同時に、自分が今までに感じたことのない、“心の満ちていく”感じ。
“感情“の味を覚えてしまった。
気付いた。他人とか変われば、自分は“感情”を知ることができる。自分の知らない自分を見つけることができる。
これは、他人と関わり、すれ違い、自分を知ろうと苦悩する、少し変わった自分、一乃が見つていく自分自身の取扱説明書である。
- Re: イチノのトリセツ ( No.1 )
- 日時: 2023/08/29 00:52
- 名前: ぶぅ (ID: CDmrGdY1)
私、西園寺一乃の朝は遅い。
目を開ける。6時である。学校は8時30分までに着けばいいので、大丈夫。バスや電車を考慮してもまだ寝れる。一度目を閉じる。再び開ける。
8時15分である。
西園寺一乃の朝は速い。着替えながらパンを平らげ、顔を洗いながら髪をセットする。洗練された動きはまさに一流。どこにも無駄がない。
最終確認。靴を履くところで自身の髪が気になって鏡の前まで走っていく。よし大丈夫。靴を履き、ドアに手をかける。自分の髪が気になる。また走って鏡の前に。
「おはようございます!」
大声で教室に飛び込む私。
「遅刻だよ!」
先生が手にもつノートで私の頭を叩く。
「はい!すいません!」
ペコペコするあたしを睨むこの先生は保険体育の男の先生。色黒だが背が低い。来ている服は蛍光色のユニクロで、初めて着てきた色が紫色だったので、裏では“おおきづち”と呼ばれている。
「まさか夏休み明け初日で遅刻するなんてね。」
静かに席につこうとする私に、隣に座る親友、ミオが話しかけてくる。
「また遅刻しちゃったな。」
「あんたそんなんで高校いけるの?」
「わかんない。」
「わかんないってあんたねぇ、もう中三だよ?受験だよ?受験。」
そう、受験。私にとってこの世で最もどうでもいい、受験。何故か皆頑張る。そのせいで私は誰とも遊べない。正直高校なんてどこでもいいのだが、何故皆頑張っているのだろうか。私にはとうてい理解できない。
「ーじゃあ明日も遅れず学校に来るように。特に一乃!」
「っはい!」
急に呼ばれて元気よく返事する。クラスに笑いが起きる。
「じゃあ号令をよろしく。」
「「さようなら。」」
「さようなら」
ああ眠い。早く家に帰ろう。
帰ろうとする私の襟が掴まれる。
「あんたは今から部活でしょうが!」
そうだった。吹奏楽部。何が楽しいのか運動部は夏でとっとと終わるのに、我々文化部は文化祭で大勢の前で醜態を晒してから散らねばならないのだ。
「ねえ、偶には部活サボって、、、」
「遅刻して何いってんの!早く来い!」
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