コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

力が抜ける調べー雅也と夕音ー
日時: 2024/12/30 18:22
名前: 乾 (ID: UDh8jCot)

雅也は、どこにでもいるような男だった。ムードメーカーで、自己中心的な性格。常に元気で周りを笑わせ、思いつきで行動するタイプだ。だがその一方で、計画的に物事を進める姿勢も持ち合わせており、何事も自分の成果を最優先に考えている。今日は、友人たちとの集まりのために彼なりの計画を立てていた。

「さあ、みんな!今日は楽しいことをしようぜ!」雅也はみんなを集めて言った。しかし、いつものように、すぐに思いつきで行動を始める彼に対し、夕音は冷静に反応した。

「雅也、無駄に騒がないで。私たちはちゃんとした目的を持って集まっているんだから。」

夕音はどこか冷徹で、勝利を目指す性格の持ち主だった。計画を立てて慎重に行動するタイプであり、他人の成功を批判することを厭わない。今日は雅也の「楽しいこと」の提案に少し苛立ちを感じていた。

雅也は少し肩をすくめて言った。「そうかもしれないけど、まずは力を抜いてリラックスしないと、何も始まらないだろ?」

すると、夕音は彼をじっと見つめた。「あなた、いつもその調子だね。でも、それで本当に得られるものがあるの?」

雅也は考え込むふりをしたが、やがて口を開いた。「もちろん!力が抜けるからこそ、心も自由になって、思い出せないような大事なことを思い出すんだよ。」

夕音は黙って湖のように静かな目を向けた。「私にはそんなこと、無駄に感じる。」

その瞬間、部屋の隅に置かれた古びたベルトが目に入った。雅也がそのベルトを手に取ると、まるで何かを思い出したかのように一瞬固まった。ベルトには、湖底に沈む鐘の音のような不思議な音が響いていた。雅也は不安そうに言った。「このベルト、どこかで見たことがある気がする。」

夕音はその音に何かを感じ取ったようで、急に直感が働いた。「それ、あなたがずっと忘れようとしていた記憶と関係があるんじゃない?」

「記憶?」雅也はしばらく考えたが、思い出せないままだった。

そのとき、何気ない会話の中で、夕音はこう言った。「あなたが言っていた‘永遠の調べ’って、結局は自分を見つけるための方法だったんじゃない?それを追い求めることで、何かを失い、そして何かを得る。」

雅也は驚いた表情を浮かべながらも、彼女の言葉が心に深く響いた。彼が無意識に感じていた“力が抜ける”瞬間、それこそが、彼にとって最も大切な時間だったのだろう。

夕音は静かに笑った。「あなたも少しは変わったのかもしれないわね。」

雅也は照れくさそうに肩をすくめた。「まあ、無理して変わろうとは思わないけどな。こうしてリラックスしていると、何かを得られる気がするんだ。」

夕音は軽く息を吐いた。「うん、それが大事よ。無理に変わる必要はない。」

その日、彼らは過去の記憶と向き合いながらも、何か新しい感覚を得たようだった。力を抜くことで、彼らは気づかなかった感情や思い出を感じ取ったのだ。そして、雅也と夕音の間には、以前とは違う理解が生まれた。

物語の結末には、湖底に沈んだ鐘の音の正体が明かされることはなかったが、彼らはそれを聞き取ることなく、新たな一歩を踏み出す準備ができていた。それが、彼らの「永遠の調べ」だった。


小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。