コメディ・ライト小説(新)
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- 丘の上の声
- 日時: 2025/01/24 10:27
- 名前: 椎名 (ID: cRTbjk9J)
クチナシ(梔子・山梔子、学名: Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。庭先や鉢植えでよく見られる。乾燥果実は、生薬・漢方薬の原料(山梔子・梔子)となることをはじめ、着色料など様々な利用がある。
(引用:Wikipediaより)
- Re: 丘の上の声 ( No.1 )
- 日時: 2025/01/25 23:04
- 名前: 椎名 (ID: qfqCQ4n7)
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春風の暖かさをかき消すほどの潮風の冷たさは、磯の香りを孕んで帆貴を包み込む。
まだ桜は花を開かない3月のこと、この丘の上にある海を見渡せる高校______私立琥月ヶ丘高校の図書館。
司書すらいないこの図書館で、彼は自由を謳歌し好きな本を時間が許す限り読み放題。彼にとっては天国そのものなのだ。
「ん?」
視線を活字から逸らしたとき、紺色の少し大きいブレザーにチェックのスカートの女子生徒の姿が見えた。さらに視線を上げれば、そこには口元をスマホで隠したアホ毛の立ったボサボサの髪の毛に、不思議なものを見るように見開かれた目をした顔がこちらを覗き込んでいた。
「えっとー…」
帆貴が反応に困ると、慌てたようにスマホを触り始めた。画面に爪が当たり、カタカタと軽快な音が静かな図書館の空気を震わせる。
『ごめんなさい、邪魔して。』
「え?ああ、いや邪魔なんかじゃ」
『滅多に春休み中は人が来ないので、珍しいなと。』
彼女は目を細めてそっと微笑んだ。その表情は社交的な微笑みではなく、純粋に喜んでいるように見えた。
彼女は絞り出すように、「あ」と小動物のような小さな小さな声を出し、一言だけ発してスマホの画面をまた叩き始めた。
『申し遅れました、私2年5組の梔琴乃葉です。』
「えと、1年8組の八木澤帆貴です」
彼女______琴乃葉は、首を傾げて笑った。今度は社交的な笑みだった。
差し出された手を握れば、小さくて、冷たくて、少しでも力を入れればボロボロと崩れてなくなってしまいそうなほど華奢だった。
3月の春休み、帆貴は声を出して喋ることをしない不思議な〈口無し〉の先輩と出会った。
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