コメディ・ライト小説(新)

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だから私は成長できない
日時: 2025/05/26 16:56
名前: 翠 (ID: ylrcZdVw)

いやだから距離きょりをとっては駄目だめですか?』
                『いやってってはいけませんか?』

―これは、いつも悩んでしまう私が、ある男の子との出会いで世界が変わるまでの物語―

 学校に通う途中、ガラガラの電車の中でどうしてかなぁ、とふと思った。
どうして、私はこんなにも悩んでしまうんだろう。
学年委員長なのに、皆のお手本にならなければいけないのに、いつも悪い方向に悩んでしまい、
なかなか答えを出すことが出来ない。
……いつも思うけれど今の私ではどうすることも出来ないので、『まぁいいや』と心の中に溜め込む。
 ふぅ、と息を吐いて立ち上がる。次の駅で降りて徒歩10分の学校へ向かうのだ。
学校に近づくに連れて、足取りが重くなる。
 今日も誰かに言われて働かされるんだ。ずーっと断れなくて引き受けていたらこうなってしまった。
『嫌なことは嫌ってきっぱり言っていいんだからね』…なんて数えきれないほど聞いた。
でも嫌ってきっぱり言ってしまったら、絶対嫌な思いになるでしょう。そんなこと分かってる。
だから嫌って言えないんだと思う。もう引き受けるしかない。

 そんなことを思っていると学校についた。
いつもと同じように偽物の笑顔を作って校舎へ入る。
今日も、長い長い一日が始まるのだ。


Re: 愛の告白は君にだけ ( No.2 )
日時: 2025/05/16 17:02
名前: 翠 (ID: Fbf8udBF)

ガラッ
『秘密の教室』の扉を開く。
やっぱりここは落ち着く。誰もいないし、静かだし。
和奏「ふぅー…」
深呼吸する音が教室内に響き渡る。
??「なんだよ、誰かいるのか?」
急に声がした。男っぽい声だ。私はあたりを見回す。
すると…、さっきまで寝ていたのであろうか。髪がボサボサの男の子を発見する。
和奏「ひっ…!」
思わず悲鳴をあげる。
??「なんだよ、『ひっ…!』って。俺、人間だから」
機嫌悪そうに言い返された。
和奏「えっと…。こ、んにちは」
??「おう、こんちわ」
一応、日本語は伝わるようだ。
和奏「私は、和奏…です」
かすれた声で言う。未だに、驚きよりも恐怖が勝っている。
??「俺は、河崎瞬。だ」
和奏「え、?瞬…?」
その言葉に、私は一瞬驚愕した。
河崎俊と言えば、この学校でトップクラスの優等生ではないか。
瞬 「あ、今、河崎瞬って優等生の名前だって思ったろ?」
和奏「え、あ、はい」
瞬 「ちょっとな、面倒くさくて授業サボり中。」
瞬 「まぁ、優等生ってのは授業を受けなくても良い点数取れちまうからいいもんだ」
なに、それ。自慢ですか?と内心イラっとする。
私達が馬鹿みたいに授業受けているのをケラケラと笑って見ているのだろうか。
和奏「そうなんですね。優等生ってのはいいですね」
瞬 「ま、優等生になるまでが大変なんだけどな」

Re: 愛の告白は君にだけ ( No.3 )
日時: 2025/05/17 16:32
名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)

和奏「優等生って、どうやったらなれるんでしょうか…」
独り言のようにボソッと言った。
和奏「相手の気持ちが分かって、勉強もスポーツも出来る人が優等生なのかな…」
和奏「どっちにしろ、私には程遠いものですが」
瞬 「そうか?」
瞬 「俺は、お前の事優等生だって思ってるぞ」
え?今なんて?と、聞き返したくなった。私が?私なんかが優等生?
和奏「なんで、ですか?」
瞬 「だって俺の事、気持ち悪がらなかったじゃん」
瞬 「普通は、こんな教室に寝てられるの、人間じゃなくない?」
そういわれてみればそうかもしれない。この教室はほぼ物置。
使わなくなったものが置かれていて、こぢんまりとした部屋で暗い。
でも、その代わり静かで落ち着くのだ。
和奏「それも…、そうですね」
和奏「でも、静かだからすぐ眠ってしまいそうなので私も同感です」
和奏「実際、眠ったことあるし」
そう、あるのだ。静かすぎて眠ってしまいHRに遅れたことがある。
その時、瞬がふふっと笑った。
瞬 「俺に同族がいるなんてな」
和奏「ど、同族?」
瞬 「いや、何人かにここの教室バレてんだけど、共感されることなかったし」
一つ、間をおいて瞬が喋った。
瞬 「ま、冷静に考えればそうかもな」
瞬 「俺、お前の事…」
キーンコーンカーンコーン…
次のHRの合図だ。行かなければ。
和奏「行かなくては。」
瞬 「おう、いってらっしゃい」
和奏「行かないんですか?」
瞬 「俺はもうちょっと寝る」
と言って、ぐぅぐぅと寝てしまった。

Re: 愛の告白は君にだけ ( No.4 )
日時: 2025/05/19 15:06
名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)

あの続き、なんだったんだろうな。
瞬 「俺、お前の事…」
で途切れちゃったんだよね、チャイムの音で。
もしかして、嫌い…って言おうとしたのかな。好き…は無いわ。
どんどん最悪な方へと考えが進む。

先生「はい、ではこれを答えなさい。えーっとそれじゃ和奏」
和奏「は、はい!」
声とともに立つ。どこだ、どこ…? 焦りながら黒板を見る。
分からない。でも、今習っている所は一次関数。きっと、これだ。
和奏「y=5x、です」
先生「お、正解だ。よくわかってるじゃないか」
ほっと席に座る。

キーンコーンカーンコーン…
授業が終わる鐘が鳴る。
あの教室にいったらいるかな。10分間しか休憩は無いけれど、行っていなかったら帰ってくるだけ。
そう考えて、教室から出て、移動する。
なんで、あの教室にいたんだろうな、なんて思いながら。

ガラッ
秘密の教室のドアを開ける。
さすがにもういないだろうとあたりを見回すと、足が見えた。
ぐぅぐぅと教室に鳴り響く音。
これは……いる…!

Re: 愛の告白は君にだけ ( No.5 )
日時: 2025/05/23 17:50
名前: 翠 (ID: wJnEuCOp)

何故かは分からないけれど、早く話したくて探し出す。
和奏「せんぱ~い?瞬せんぱーい」
と、呟きながら、机の下、椅子の下、ブルーシートの下などを探す。

―その時。
グッと足首をつかまれた感覚があった。震えながら下を向くと、にやにやと笑っている瞬先輩がいた。
和奏「………せん、ぱい」
へなへなと崩れ落ちる。幽霊かと思ってびくびくしていたのだ。
瞬 「どした?忘れモンでもあんの?」
和奏「いや、瞬先輩いるかなーって思って」
瞬 「ふぅん?そんなに俺の事好きなんだ?」
にやにやとこっちを見てくる。私は顔を赤らめた。
和奏「そ、そんなんじゃないです!」
瞬 「んじゃどうして?」
和奏「え、あ、あのーえっと…さ、ささっ」
また、だ。『瞬先輩、さっきお前の事…って言ってチャイムの音で途切れちゃったじゃないですか。
お前の事…の続きってなんですか?』 ただ、これだけ。
これだけを聞けばいいのに、言えない。怖いのだ。お前の事、嫌いとかだったらどうしよう。
瞬 「ささっ?」
勇気を振り絞って声に出す。
和奏「さっきの続き…。」
瞬 「続き?」
和奏「『お前の事…』の続き…が知りたいです」
瞬 「あぁ、あれな。あれは『俺、お前の事、好きだぞ』って言ったんだよ。」
和奏「えぇ!?」
す、すすすす好きって言った!?あの“優等生”の河崎瞬が…?
瞬 「えぇっ、ってなんだよ。嘘じゃないからな」
和奏「な、なんでですか?」
瞬 「まず、心が綺麗だろ?そして、何よりも可愛い。俺の好みだ」
私は数分間、何も言えなかった。

Re: 愛の告白は君にだけ ( No.6 )
日時: 2025/05/23 18:12
名前: 翠 (ID: wJnEuCOp)

和奏「そ、それって告白ですか?」
震える声で聞き返す。初めて告白みたいなものをされ、どうしてよいか分からない。
瞬 「まー、そうかもな。もうちょっと格好よく言うか。」
そういうと、瞬は頭をかいたあと、顔つきが変わった。
瞬 「俺は、和奏の事が好きだ。まだ、和奏は俺の正体を知らないだろうが、俺の心は昔と変わって
   いない。ずっと大好きだ。俺と、付き合ってほしい」
こんな、先輩知らない。いつも寝てて、笑ってる。そして、先輩の正体?どういうこと?
私は出会って1日目だと思っていたのに、どうやら違うらしい。ずっと昔に会っているみたいだ。
瞬 「……答えは?」
和奏「ま、まだよくわからないですが…。私も先輩の事、好きです。よろしくお願いします」
正直言って、『恋』っていうものはしらない。けれど、先輩なら大丈夫って私の本能が言っている。

ギュッ、と抱きしめられた。
瞬 「ずっと、だ。ずっとこれが言いたかった。」
瞬 「和奏、大好きだ!」
瞬のはじけるような笑顔が綺麗で、美しくて、ずっと見ていたかった。
―その時。私の頭が疼いた。
和奏「うっ…」
思わず地面にへたり込む。
瞬 「わか、な?」
心配そうに瞬が私の眼を覗き込む。
 どんどん意識が遠のく中、頭の中で幼い時の思い出が蘇ってくる。
封印していた、思い出。思い出したくなかった。
ある日を境目に、私の大好きな人が消えてしまったのだ。

和奏「か、わ、さ、き、くん!」
4歳、ぐらいの年頃だろう。かわさき、と言う人を呼んでいるようだ。
河崎「どうしたの?」
私より、1歳くらい年上のようだ。とても顔が整っている。
和奏「だーいすき!」
急に言い出した私の言葉を河崎、と言う人は笑顔で返した。
河崎「ぼくも大好き!」
その、笑みが忘れられない。綺麗で、儚げなあの笑顔を。

あれから数日が立ったのだろうか。
また、私が河崎、と言う人を探している。
いつもなら、木の下のベンチで寝ているはずなのに、いない。
どこを探してもいない。いつも約束している場所にもいない。今日も約束しているのに。
焦りだす私。どこを探してもいないのだ。
ずーっともう、会えないような気がして、怖い。
もう会えないのか、という恐怖で打ちのめされながらも探し続ける。
日が暮れ始めた。そのことに気づくまで、探し続けていたので手は汚れている。
和奏「かわさきくん…」
かすれる声で言う。
ああ。もういないんだ。何処かへ行ってしまったのだ。
なんで?なんで私を置いていくの?いかないでよ、独りにしないで。
 という気持ちであふれかえって涙が出る。
その日の夜は泣いて泣いて泣きまくった。

……その日から10年。
あの絶望と、恐怖を思い出したくなくて、心の中にしまっていた。
でも今、鮮明に蘇る。なぜ今なのか。瞬に関わりはあるのだろうか…。


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