コメディ・ライト小説(新)
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- 記憶の欠片を拾う夜
- 日時: 2026/03/17 20:15
- 名前: すず (ID: zXm0/Iqr)
プロローグ
ここはどこ、僕は誰、記憶の欠片を拾う夜がやってきた。
主人公の名前は春樹、家族と旅行中、運転していた父親が誤って事故を起こしてしまい全ての記憶を失ってしまった。
そして今は病院で入院している。
記憶を失った春樹の心は暗闇だった。光は一つもない。
春樹の母親が言った
「あなたは春樹よ。」
「は…るき…」
「そうよ、春樹よ私のことはお母さんって呼んでね」
「お母さん?」
春樹は1日で「水」や「病院」などたくさんの言葉を覚えました。ですが物には名前があることを分かりません。
翌日、窓から見える大きな木を眺めていると、胸がチリりと痛んだ。
「きの…」
「そう、木ね」
お母さんさんが微笑む。その笑顔を見て、なぜか知らないはずの「木登り」という言葉が頭に浮かんだ。
でも、どうやって登るのか、誰と登ったのかは分からない。
その夜、夢を見た。真っ暗な車の中、隣で誰かが叫んでいる夢。悲鳴のような声。
目を覚ますと、汗でシーツが濡れていた。「お母さん」が隣で静かに眠っている。
僕の胸の中の暗闇に、小さな小さな「棘」が刺さったような気がした。
眠りについた母の寝顔と、刺さったままの「棘」。僕は静かにベッドを抜け出し、窓辺へ歩み寄った。
月明かりに照らされたその大きな木は、やはりどこか懐かしく、そしてひどく恐ろしい影を落としていた。
「……きぼり、?」
口の中でつぶやいてみる。途端、また胸が焼けるように痛む。
(あぁ、そうか。あの叫び声は――)
夢の中で僕を呼んでいたのは、お母さんじゃない。僕の隣にいた、もう一人の誰かだ。
僕は震える手で、窓の鍵に触れた。この場所から逃げ出したいような、
すべてを思い出してしまいたいような、矛盾した感情が胸を締め付ける。
背後で、寝ていたはずの母が寝返りを打ち、小さなため息をついた。
「……どこへ行くの?」
暗闇の中で、母の声が冷たく響く。その声には、さっきまで僕が感じていた「棘」の正体を知っているような、そんな響きがあった。
僕の手は、窓の鍵から離せない。
「この木…登ったこと、あるよね」
確信を持って尋ねた僕に、母は二度と微笑みを見せなかった。
窓の鍵に手をかけたまま、僕は振り返ることができない。
確信を持って尋ねた僕に、母は二度と微笑みを見せなかった。
「……あなたは、あの時落ちたのよ」
背筋が凍りつく。母は布団から起き上がることもなく、ただ一点、僕の背中を見つめたまま淡々と告げた。
「だから、もう逃げられないわ。ここはもう、あの日の『続き』なのだから」
母の影が、暗闇の中で天井まで伸び、僕の影と重なり合う。震える指先が、やっとの思いで窓の鍵をガチャリと開けた。
逃げなきゃ。そう思った瞬間、窓の外の木々が、僕を招き入れるように音を立てて揺れた。
