ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ弐-怪物の町- 参-七 ( No.117 )
- 日時: 2008/09/22 21:31
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
八話 [ Bloodprincess Timeprincess 上 -怪物的栄養摂取法- ]
とりあえず、町を歩いている人に怪しく思われない為に普通にその道を歩いてみたフラウンとスク。普通は飛んで移動しているのだが——。
今日も太陽は日本を照らしている。それに二人は顔を見合わせてにっこり笑って、嬉しいと言うことを顔で現す。
「やっぱり手ごろでがっちりな奴がいいわよねー」
「そうだな……それにしても、やはり人間のジョセイと言うものは何も分かってないな」
日傘をさして道を歩いている女性を見て、あきれたようにフラウンは言う。フラウンとスクは太陽が好きだ。だからこそその直射日光を避けようとする人間はあまり好きではない。自分たちの好きなものを目の前で嫌い、避けているのには誰でも腹が立つものだろう。
それをわきまえてから、スクが何か思いついたように、笑いながらフラウンに言う。
「ならあの女をターゲットにしましょうよ!」
「……でもさ、あいつはわたしたちとは違う考えを持った人間だぞ? 嫌いな奴の血は——あまり飲みたくない」
「だけどわしたちと正反対の考えをしている女たちを狙って次々と殺していったら、最終的には太陽を嫌う人間なんていなくなるんじゃないかしら?」
「おおそうか! それならいいぞ。それならB型じゃなくても平気だ。わがまま言っちゃいけないしな」
所詮は子供の考え。
だからそうやって自由に思い、自由に思い込み、自由に実行できる。
日光を嫌がる女性は日本以外にもいる。それを二人はしらない。二人は日本以外に国があるなど知らないのだ。また生まれて数年しか立っていない。だからそんなことを知らずに生活できる。しかも二人はテレビなど、外国について書かれている本やテレビなどを見たこともないし扱った事もない。だからそんな子供っぽい考えができる。だが考えかたを少し変えてみると、そう思い実行している二人が愛らしい。関係ないが。
それから二人は、日傘を手にどこかへと歩く女性の後をつけて、とりあえずその女性を呼んでみる。
「もーしもし、そこのおねーさん」
「はい? ……え? あれっ? どうしたのかな? 迷子?」
「おねーさん……ついて来て」
フラウンその女性の日傘を持っている方の手を無理やり掴み、誰も居ない道へと女性を連れて行く。女性はフラウンの無理やりについていけず、手に持っていた日傘を落としてまたフラウンに連れて行かれる。それからスクが、道にころりと転がった日傘を踏みつけた。それから走ってフラウンの所へ行く。
「おねーさんおねーさん。わたしたちはおなかがすいてるの」
「え?」
「弱肉強食。目の前に食料があったらおねーさんはどうする?」
「え? え?」
「わたしたちは——食べるよ」
フラウンは誰も居ない道で止まり、スクがく来るのを待つ。それからスクが隣にくる。女性を無理やり膝で立たせてから、フラウンは右に。スクは左の女性の首筋に、噛み付いた。
噛み付いた。
カラカラの口に、栄養が流れ込んでくる。
どうやら女性はB型らしい。
二人は吸った。
血を吸った。
栄養を取った。
これが、吸血鬼の、栄養摂取方法。
◆
目の前には死体。
血を吸い尽くされて、死んだ女性の死体。
倒れこんでいる女性の前には、笑っている二人。
口元を手で拭って、それから二人合わせて言った。
「ごちそうさまでした」「ごちそうさまでした」
吸血鬼にとって、血は最高の栄養。
体を作り、何よりも力を作る。
だからこそ、たくさんそれを取らなければいけない。
「スクは嘘つきだな」
「えへへ。バレちゃった?」
「ただたんに血がほしいだけじゃないか」
「今気づいた?」
「吸ってる途中に気づいた」
それから自分たちの顔を見合わせて、
「別にいいけど」「別にいいじゃない」
吸血鬼が人間を殺すのは、仕方のないことだから。
吸血鬼が血をもとめるのは、仕方のないことだから。
だから、別に自分たちには罪などつかないだろう。
これをしないと吸血鬼は絶滅してしまうから。
「しょうがないもの」「しょうがないじゃん」