ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ弐-怪物の町- 四-序 ( No.126 )
- 日時: 2008/10/02 17:18
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
一話 [ 今行こう-また、帰ってくるからね- ]
どうやら『数時間前』は閻魔大王があかりを眠らせたらしく、あかりは気が付くと自室のベッドで寝ていた。
なんとなく残る罪悪感。あれじゃあ自分が悪いようで——あかりはベットの中にもぐった。
「お嬢を……」
仲間を失うことは、つらい。
「死なせたくないだけなのに」
◆
オレンジの髪を揺らして、廃ビルの上で双子が言った。
「さぁさぁ遊戯を始めよう。ちゃんとお化粧いたしまして、棺おけ用意できました?」
「もがいても無駄、足掻いても無駄。ちゃんと位置につきましょう」
「楽しい破壊の始まり始まり」「楽しい破滅の始まり始まり」
世界の破滅は、霊月を道連れにして殺せること。
双子はそれを喜んだ。
双子はそれに笑った。
双子はそれに、喜んだ。
◆
階段を上がっていくのか下がっていくかの音に、あかりは階段を見た。そこには、黒いワンピースに黒い靴下。黒い手袋を見につけたお嬢が笑って立っていた。
その黒で統一されたファッションは——いかにも死に行くようなその格好。それを見てあかりは眉を下に下げた。
お嬢はあかりに近づいて、そこで一回回って見せた。
「黒色。好きなんだよねー。あ、黒より赤が好きかなっ!」
「……そうですか」
「何? あかり。今更後戻りなんでできやしないよー。だから、ほらっ! 一生懸命やるぞーってさ!」
そう言ってお嬢はしゃがみ、ソファーに座っているあかりの頭を優しく撫でた。あかりは頭の上で動いているお嬢の手に、自分の手を重ねて言う。
「お嬢は卑怯ですね」
「……え?」
「わたしなんかどうでもいいのに、なぜわたしを優先するんですか? お嬢を——自分を優先すればいいことでしょう」
「バカちんなことを言うのね、あかりって」
お嬢は続けた。
「友達を失うのは辛い。だからわたしが前に立つ。それだけよ」
「わたしもそう思っています。お嬢を失うのは——家族を失うのは辛いこと。だからわたしに任せてくれればいい。それだ——」
「あかり。バカちんなことを言っちゃダメ。もしも、もしもの話で——わたしが死んだときには手は打ってある。夜のうちに閻魔の所へ言って色々とした。赤騎士は来ないし——本当に大丈夫。だからわたしに任せろ。吸血鬼は友を護ることを優先するんでな」
「でもお嬢……」
「わたしは世界を護ろうとしていない。わたしはあかりと月子を護る。護りに行く。護らなければいけない。護ることが使命——だからね」
そう言ってお嬢はあかりの手を繋ぎ、立ってと言う。あかりは言われるがままに立つ。お嬢は二階の自室に篭っているルナに言うように、階段に向かって大きな声で言う。
「月子ー! 行くよー」
「分かりましたー」
バタン。と言う音が聞こえ、向こうからルナが現れた。それから階段を降りていく。降り終えたところでお嬢がルナの手を繋ぎ、お嬢が真ん中で右にあかり、左にルナが居る状態になった。
それから二人をひっぱってお嬢は玄関で靴を履かせる。お嬢は一部の髪の毛を『手』に変え、傘差しに刺さっていた愛用の日傘を差した。それから、ルナから玄関から外へ出て行く。最後に出たあかりはポケットから家の鍵を取りだし、それで鍵を閉めた。
あかりが鍵を閉めたことを確認したお嬢は、二人をまたひっぱって道を歩いた。
「勝ちに行くよ、月子、あかり」
あかりとルナは笑って答えた。
「ええ」
「当然ですよ——お嬢」