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Re: あかりのオユウギ2-怪物の町- 4-1 ( No.127 )
日時: 2008/10/04 16:49
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。

二話 [ 宇宙旅行-紅と橙- ]

 『数十時間前』とは違って、地獄はやけに静かだった。やはり何も言わずに来ると『いつも見たいに地獄は地獄』で、一言言ってから来ると『地獄ではないように』静かになっているのだ。地獄は教育に悪いためだろうか? まあいい。
 お嬢はあかりと月子も霧にし、地獄へとまた連れてきてくれた。

「そろそろ、か」

 閻魔大王が用意してくれた赤いへんな形をした椅子に座っていた『霊月』が呟いた。それから、その椅子から立ち上がって自分の髪の毛を一本ぷつりと千切り、それをあかりにあげた。

「持っとけよ」
「え?」
「あーと……えーとなぁ、お守りって奴だな」

 霊月はそう言うと、自分たちの真正面に座っている閻魔を見上げて、言った。

「そろそろ始めるぞー閻魔」
「そうか。ならば、これが必要だぐっ」

 最後に舌を噛んだ閻魔が、椅子の後ろに手を隠し——いや、椅子の後ろにある何かを探しているらしい。そして数十秒ご、椅子の後ろにあった手を霊月の前えと出した。
 それは——

「紙に文字が書いてあるな。読めんぞ」

 二枚のお札。
 白の紙に赤の文字で、何か書いてある。

「それを使って真月の双子を封印するといい」
「この紙切れでか?」
「ああ。双子を殺すと炎の何千何億の蝶がお前の周りを飛ぶ。そうしたら、お前の赤騎士も溶かされるだろう。だからこそ、宇宙のどこかの惑星かなんかに封印するといい——と、言っていぎゅ」
「そうか……今のは噛まない方が良かったな」

 くくく、と霊月は笑い、それからくるりとこちらを向いた。表情……笑み。

「まずは真月の双子をこの紙切れでどっかの惑星に封印する。それから太陽にぶつかって太陽を壊しつつ、本物の太陽の封印をとく。おーけー、『だね』?」
「承知の上です」

 霊月が問うと、ルナは即答。
 ルナに続いてあかりが、静かに言った。

「おーけーです」

 あかりは微笑し、立ち上がり霊月のところへと歩いて行った。言った。

「また、元気な笑顔を見せてくださいね——『お嬢』」
「分かっ『てるわ』——『じゃあな』」

 それから霊月は、霧となって消えた。



 勝負はここから。
 太陽を、ブッ壊せ。



 吸血鬼なら誰でもできるワープで、霊月は宇宙に来た。
 グラデーションの背景に、色々なスパンコールを撒き散らしたような、その宇宙。決戦の場はここ。
 空気の無い空間だから、髪をコウモリの翼にして飛ぶことはできない。だから霊月は宇宙を『歩いていた』。果てなど無い空間の宇宙を歩く。目の前には太陽がいた。
 すると刹那。

「ピシッ」
「っ!」

 霊月の体に、ヒビが入る。——これが症状だ。
 吸血鬼は夜行性の怪物。だから日光、炎などには滅法弱い。というか、炎などにあたると、だんだん体が灰になって散ってしまう。

「ったく、真月はいねーのか?」

 霊月はそう言って、あたりを見回す。後ろには青く輝く地球。前にはオレンジに燃える太陽。右には濃い水色の水星と色に表すには難しい金星。左にはオレンジの火星。それを見てから霊月は微笑し、また前を見た。
 オレンジ色の双子がそこに立って、笑っていた。

「良く来たね霊月。この場ではあなたが不利よ?」
「大丈夫だ。戦いに来たんじゃないからな」
「まあいい。楽しく悲しく貧しく——橙色の世界を味わうといい!」



 紅VS橙。
 とでも言っておこうかな。