ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2-怪物の町- 4-3 ( No.129 )
- 日時: 2008/10/07 18:04
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
四話 [ 双子封印-永遠のさようなら- ]
「と言ってもなぁ……。走ったのはそこらへんにおいておいたお札を取りに行く為のものだからな」
いわゆるカッコつけ。
いわゆる『格好よく終わらしたい!』という願望。
「吸血鬼はのんびり屋さんだからねぇ」
そう言って霊月は、何もない空間に浮いているお札を取り、また太陽に近づいた。
◆
霊月ファイヤフライには、二つ名がついている。
霊月の時だと、『殺人衝動』、『紅』。
お嬢の時だと、『殺人願望』、『赤』。
他の組の吸血鬼たちにつけられた、二つ名。
霊月の二つ名のつけられた理由は、まず『殺人衝動』。霊月は敵を見ると殺したくなる。と言うか殺すからだ。次に『紅』。これは、殺人をして返り血として霊月の体をついた敵の血液と霊月をあわせての二つ名。
お嬢の二つ名のつけられた理由は、まず『殺人願望』。お嬢は敵を見つけても殺せない。殺しちゃいけないと思っているからだ。『赤』は、お嬢自体のことを現している。何もついていない、汚れのないお嬢。だから『赤』だ。
殺人衝動。
殺人願望。
紅。
赤。
たくさんの名前がついているものの、全て——霊月ファイヤフライなのだ。
◆
お札を持って、倒れこんでいる二人の双子の前に立った。
ううう、と嗚咽を上げ、そこで倒れこんでいる——いや、うずくまっている双子を見て、霊月は静かに言った。
「危険なものが暴走したら、大変だろう? だから今、危険なお前らを閉じ込めてあげるからな」
うずくまっている、ツインテールの方の奴をポニーテールの方の上に置く。正しくは寝かせる。正しくは捨てる。
それからその双子の上に、お札を置いた。
刹那。
双子の体はだんだんと小さく、丸くなっていき——
最後にはオレンジ色の玉になった。
そして、空中を転がる。
玉だ。
球だ。
玉だった。
霊月はそれを、指がほとんど残っていない手で救い上げて、水色をした小さそうな惑星へと投げた。別に宇宙を果てしなく置いていってもいいので、適当に投げておいた。
それから小さく、落ちていく双子の玉を見て霊月は言った。
「さようなら」
◆
双子は落ちていく。
玉となって落ちていく。
球となって落ちていく。
どうやら惑星に落ちず、果てのない宇宙へ落ちていった。
可哀想な。可哀想な、それ。
永遠の、さようなら。
永遠の、お別れ。
もう二度と会うことなんてない。
真月フラウンホーファと、真月スペクトルは、永遠に、終わらない宇宙を旅していくのだ。まあ、途中で惑星に落ちるかもしれないが——。
怪我も治ることはなく、一生痛みにこらえなければならない。
なんて、可哀想な生き方だろう。もちろん死なない。死ねない。その玉の中で行き続ける。玉は球で珠だから。玉の中の時間は止まっていて。きっと、生きていく。ずっと。
体の成長も止まって。
怪我ももちろんだ。
なんて、なんて——
「可哀想な生き方だ……くくくっ」
光る落ちていく玉を見ながら、哀れそうに……哀れと思うように、霊月は笑って見せた。
◆
本番。