ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2-怪物の町- 4-5 ( No.151 )
- 日時: 2008/10/13 18:53
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
六話 [ さようなら-宇宙の旅をお楽しみください- 上 ]
右足が、消えていた。
根こそぎもぎ取られている。
一本足の、吸血鬼。
右の横っ腹が、消えていた。
何かに被り付かれたような。
穴の開いた、吸血鬼。
無様で、滑稽で、これまでにない体のお絵かき(アート)の仕方。
哀しくて、可哀想で、気持ち悪くて——。
見ているほうならば、そう思うだろう。
だが、その吸血鬼はそう思っていない。
見た目が、ぐちゃぐちゃなのに。
すぐ、壊れてしまいそうなのに。
霊月ファイヤフライは笑っていた。
足が無い癖にちゃんと立っていて、横っ腹がないのに痛そうにしていない。
怪人。
怪物。
妖怪。
怖い。
恐怖。
滑稽。
なのにその吸血鬼は、笑っている。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは——!」
そして笑いを止め、シニカルに笑ってみせる。
「笑うしかないよな! ダメだこりゃ……。バッカみてぇだよ——あはははははははははははははははははははははははははははははははは!」
霊月の中では、今自分がしていることはバカみたい。と言う事みたいだ。
「……さっさとあかりの力を借りないとなー。こんなんじゃ持たない」
呟いて、指のほとんど残っていないその左手で、剣をぎゅっと握り締めた。刹那に赤い炎で包まれる剣。
ポロポロ。
左手が崩れる。
霊月は目を瞑って、深呼吸した。
暗闇の中に、一つの言葉が浮かんだ。
『お嬢は卑怯ですね』。
「卑怯……か。ただたんにさ、生きるのに疲れただけなんだよ。四百歳歳だなんてね……生きすぎだと思うんだよな。だからさ、自殺をしようっつー事なんだよな。吸血鬼は普通、千歳まで生きるんだよな。大体の吸血鬼は三百歳で自殺してる。——とりあえず、生きることが疲れたんだよ、あかり。死にたいんだ。だがね、そう簡単には死ねないと思う」
死ぬには時間が掛かるから。
「大切なものは、誰にでもある。それから離れたくないんだよなー普通。だから俺が迷ってるんだ。あかりとルナと離れたくないってね」
そして、くくくと笑う。
「そこでだ。大切なものが壊れることになった。だから、自殺したいと言う願望を使って、その大切なものを護る為に自殺しようと考えた。普通に自殺して死ぬより、大切なものを護って自殺する方がいいだろ?」
言って、霊月は走った。
「だがな——はやり簡単には離れられないんだ。だから言ってみる、時固(ときと)めの呪文をな。……俺が帰ったら、その大切な者たちは、笑ってくれるよな? まさか泣きはしないだろう。つーことで、これで帰れるわけだ。」
太陽は、目の前に近づいてきた。
「自殺して地獄で嗚咽を上げるより、大切なものたちと——あかりとルナと一緒に笑っていた方がすげー幸せだろうし」
剣を、上へ上げる。
「つーことで——」
剣を、振り下ろす。
ガギギギギ。
太陽がぴし、と割る。次になるのは、爆発だろう。
だから霊月は大声で言った。
「時間よ——」
別に言わなくても時間は固(と)まるだろうに。
自分の命が危険に晒された時、時間は止まるのに。
「固(と)まれぇ!」
叫んだ。
そしてにっこりと笑う。
成功した。そう思った。だが、
「あれ?」
時間は、固まらなかった。
爆発音。
赤い炎に消える霊月。
そして刹那に、封印か何かしてあった本物の太陽がそこへ現れる。
あれ。
あれ。
あれ?
あれ?
あれ?
ちくしょう。
ちくしょう。
ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう。
畜生。