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Re: あかりのオユウギ2-怪物の町- 5-キャスト ( No.158 )
日時: 2008/10/17 18:17
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。

五章 [ 再会スリーレギオン-巫女と狐と吸血鬼- ]
序章 [ 人様の家に何勝手に上がりこんでんだ-紅白娘- ]

 ざっざっざっ。
 石畳を箒ですばやく履き、紅白の巫女服に黒髪を赤い紐で下でまとめた、彼女は呟く。

「お仕事お終いに。緑茶でも飲んでゆったりするにー」

 ではでは、と彼女は言うと、隣にあった木に箒をたてかけてから神社へと歩く。
 それから神社の賽銭箱を通り過ぎ、中へ入って右へ曲がった。彼女は渡り廊下の先の離れを目指し、髪を揺らせこんどはスキップをしだす。それから離れの扉をすばやく開ける。

「緑茶はいねがー! にー!」

 なまはげの真似をしながら、部屋の中を見た。

「邪魔してるよ」

 あるはずのちゃぶ台が片付けられていて、そこには黒かみながらも下の方に赤みが掛かっている髪をした少女と、フランス人形の様な少女が居座っていた。
 巫女服の彼女は沈黙する。それから、二人の少女に問うた。

「どちらさまでございますかにー?」

 すると少女たちは同時に答えた。

「死神さんだよ」「死神さんです」



「歩里島神社(あゆりしまじんじゃ)?」

 何だそれ? と目の前にいる巨人に言うあかり。
 赤い顔に赤い手。中国人が着てそうな服を着ていて、黒髭を首まで伸ばしている巨人。五代目閻魔大王が頷く。

「その神社で霊月を生き返らせるのだ! ふはははは!」
「キャラ崩れてない?」
「元々はこうだ! 記憶をたどってみるがいいぎゃ! ふははははぎゃ!? 噛んだっ!」

 あかりは顔をゆがめ、閻魔を見る。
 それから話を戻そうか、と言った。

「とりあえずその神社へ行けばいいんだな?」
「霊月の髪を忘れずにぎゃ——というかあっさりだな」
「はっ! そういえば生き返らせるって何?」

 やれやれ、と呟き、閻魔はあかりの問いに答えた。

「霊月がお前に渡したその髪で、霊月が蘇生する」
「じゃあ、お嬢が言ってた『死んでも大丈夫』ってのは……」
「このことだ」

 閻魔があかりの握っている髪を見、言った。

「地図はこれだ。じゃあ、言って来いぎょ!」

 なぜか視界がだんだん暗くなる。

「なんて……ば、かっ…………ぽ……」

 そこで意識が途切れた。



「そこで閻魔の魔法がなんかにかかってこのザマだ」
「ザマってなんですかに? はっ! まさか今良くある『目が覚めたら俺はここにいた……』風のやつですかにー!?」

 天然っぽいその巫女は、興味しんしんそうにあかりに顔を柄付ける。
 そして刹那、足を滑らせたのか何かで、彼女はあかりへと倒れこんできた。顔が近くにあったせいで、あかりと彼女は唇と唇を重ねた。

「わーお。すーぱーらぶりーたーいむ」

 隣でその茶番を見ていたルナは、自分で自分の目を両手で隠す。

「……む……ぱっ! 離せぇい!」

 ルナの言葉聞き、今までまるで時間が止まったかのように動きを止めていたあかりが彼女を押し倒し、唇をぎゅぎゅっとすばやくふいた。彼女は勢いよく床に倒れる。
 そしてあかりはルナに向かって怒鳴る。

「何が『らぶりーたいむ』だ! 全てはこの女のせいだ! ルナ! 勘違いするな!」
「大丈夫です。わたしは……止めませんよ」
「大丈夫じゃないじゃんかー! お前はなにをそう勘違いをしているんだー! あーもう! そこの巫女! 責任とれってんだ!」

 怒鳴るあかり。そんなに衝撃的だったのだろうか?
 そしてあかりに投げ飛ばされて意識をなくしている彼女のところへ行き、肩を掴みぶんぶん振る。
 ぶんぶん。
 ぶんぶんぶんぶん。
 ぶんぶんぶんぶんぶん……。

「……う、うにうにー」

 そして彼女が声をあげる。
 あかりは振るのをやめ、彼女の顔をがっしりと握り大声で言う。

「責任取れやー!」
「ううう、うにー…………に?」

 彼女はやっと目を開け、目の前にいるあかりに向かって言う。

「あなたはどちら様ですかに? お賽銭は門を通って目の前ですよ? にー?」
「お、お前……」

 どうらや床に頭をぶつけた衝撃であかりと唇をかさねたときの記憶が飛んでしまったらしい。
 それを思い、あかりは頭をぐしゃぐしゃかき回してからまた怒鳴る。

「もういやだあああああああああああ!」



「ええと、状況は分かりました」

 こほん。と咳払いをして、彼女が言う。
 良く見ると彼女の頭には大きなたんこぶができている。あかりに殴られたのだろうか?
 そして彼女は続ける。

「わたしが足を滑らせたか何かでお客様の唇に唇を重ねてしまった。そうですよにー?」
「ああ」

 ぶっきらぼうに答えるあかり。
 
「とりあえずあやまれ! なんだよ! せっかくとっておいたのに! わたしはそんな性格じゃないやい! あやま——っていたあ!」

 あかりの頭にルナがチョップをくらわす。
 それからルナが言う。

「で? 貴方、名前は?」

 そういえばそうだ。
 あれだけの茶番を起こしていたのに自己紹介がまだだった。まあ苗字が歩里島だと言うことは分かっているが……ということで、紅白の巫女が胸に手を当てて答えた。

「歩里島神社第十三代目の巫女を勤めさせていただいていますに。歩里島 十字架(あゆりしま とじか)と申しますに」