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Re: あかりのオユウギ2 -剣呑- ( No.172 )
日時: 2008/10/22 19:51
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。

三話 [ 開始、登場-お願いスピードクリア- ]

「なんだそれって……うにー、普通にそうするしかないんですよ? にー」

 そしてまた緑茶をすする十字架。
 それから緑茶を飲みつつ、青ざめているあかりの方をちらりと見、笑いながら言った。

「もしかして」

 それは、挑発。

「怪物とか——苦手なんですかに?」
「苦手じゃないさ」

 即答だった。
 それもそのはずだろう。
 あかりは吸血鬼を生き返らせてほしいといっているのだ。イコールその吸血鬼のことを知っているということ。嫌いなやつを生き返らせたりしたくないだろう。それにあかりの性格からすると——。
 十字架はまた緑茶を飲み終えてから、立ち上がって部屋の置くへ歩いていった。そして数十秒後に帰ってくる。帰ってきた十字架の手には白い紙とえんぴつが握られていた。そして十字架はあかりとルナの目の前へ行って、座り、あかりとルナの丁度真ん中らへんにそれを置いた。

「では、始めましょう。明日は月曜日でわたしは学校へいかなくちゃいけないのですにー。ですので、早く進めちゃいましょう」



「ら、り、る、れ、ろ……」

 書いていく文字をいいながら、あかりとルナは土下座をしているような状態でそれを書いていた。
 ちゃぶ台は、また起きた神主に縛り付けてあるのでない。だから床で、土下座のような格好で書いているのだ。

「後は何を書くんですか?」
「あーあとは、点々と丸の奴だな。『が』とか『ぷ』とかの点々と丸の奴」
「分かりました」

 慣れない手つきでルナはそれを書いていく。
 が、ぎ、ぐ、げ、ご、だ、ぢ……。



「書けました」

 ふぅ、と息をつき、ルナはえんぴつを置いた。文字がどこかくるんくるんと曲線になっているのは気にしないでおこう。
 あかりは十字架を呼んで、それから五円を貰った。

「普通にやればいいんだよね?」
「やり方はしってますよね? にー?」
「なんとなく」

 言って、あかりは少しゆがんでいる鳥居のところに五円を置き、それに左手の人差し指をつけた。ルナはそれを見て右手の人差し指を五円へつける。それを確認したあかりは、恐る恐る、こっくりさんを呼ぶその言葉を言っていった。

「こっくりさんこっくりさん……来い」

 反応なし。

「なあ十字架? こっくりさんは捻くれ者なのか?」

 額に怒りマークを浮かべ、あかりが言う。
 その問いに十字架はきょとんとし、答えた。

「こっくりさんは神様ですよ? だってほら、お稲荷様ですし」

 その答えにあかりはううーと唸る。
 それを見たルナは、静かに、こっくりさんを呼ぶ言葉を言っていった。

「こっくりさんこっくりさん、お出でになられましたら返事をください。『はい』か『いいえ』でお答えください」

 そして刹那。
 すすっと、五円が『はい』へ動いた。
 その瞬間に、どさっと、十字架が床へ倒れた。
 体の中にいるこっくりさんが目覚め始めたのだろう。だから、今十字架が脳に命令し行っている『立つ』という動きができなくなり、倒れたのだ。
 あかりとルナは十字架を見てから、お互いの顔を見る。せっかく答えてくれたのだ。もう、話をそらすことはできない。二人ともそう思ったらしく、二人とも十字架の元へは行かず、ルナは続けた。

「わたしたちの願いを、叶えてください。まずは、その願いを聞いて、考えてください。では、それについて『はい』か『いいえ』でお答えください」

 五円は『はい』で止まっている。これは『はい』ということだろう。
 次に、ルナはあかりにバトンタッチ。あかりが、そのお願いを言った。

「わたしたちの大切な仲間が、死んでしまいました。その仲間を——生き返らせてほしいのです」

 五円は、すすっと『はい』と『いいえ』の真ん中に動いた。どうやた考え中らしい。

「その仲間は、吸血鬼です。……吸血鬼の中の王族のようなものの中の一つの一族の一人娘です。名前は——」

 五円が、少し『はい』へ動いた。

「霊月ファイヤフライ」

 五円がすばやく『はい』へ動いた。
 そして刹那——

「任せろ」

 男の声が、聞こえた。
 あかりとルナの声じゃない。十字架のような高い声ではない。もちろん神主の様なしわくちゃの声ではない。
 そしてすっと、十字架が起き上がった。

「やってやるよ」

 その声は、十字架の口から零れていた。
 十字架は高い、女の子らしい声だが——違った。違っていた。今の十字架の口から出ている声は男の声で——

「俺様が」

 今分かった。
 今、十字架の体は——

「そいつを生き返らせてやる」

 こっくりさんにのっとられたのだ、と。