ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -剣呑- ( No.185 )
- 日時: 2008/10/27 22:23
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
六話 [ 実行、行動-妖怪リトルウォー- 下 ]
がきぃん、と、何かがぶつかり合う音が聞こえる。
あかりとルナは、分けが分からなくなっている。
今、目の前ではファンダジー的なゲームみたいに、現れたモンスターを倒している——そんなことが行われているのだ。
そのゲームにたとえていうと、主人公は要、モンスターは、なんかもじょもじょしてるへんなの、そのゲームをやっている者が、あかりとルナ、という感じだった。
HPとかどこかに書いて有りそうな、それ。
なぜ、なぜだろう。
どうして、だろう。
どうして神社でいきなり戦闘が始まるのだ?
要は、数倍に伸びた爪を、黒いもじゃもじゃに向かって振り下ろす。
要はうじゃうじゃに234のダメージ!
とかどこからか聞こえてきそうだった。
それは、そしてもファンタジックな、もの。
「狐殺技術団風、狐殺技術その十! 爪上(つめかみ)降ろし」
要は、爪を上から振り下ろした。
黒いもじゃもじゃが、真っ二つにされ、何も言わず(というか口とか目、鼻、耳とか人間らしきそれは見当たらないのだが)消えた。
そして今までもじゃもじゃと戦っていた要がこちらを向いて、ぱちんと指を鳴らした。
「……ん?」
「あ? ああ、もう動けるぞっつってんだけど……」
「ああ、それはどうも——じゃない! 何よ、さっきの黒いもじゃもじゃ!」
「……簡単に説明しようか? お嬢さん」
要は、立ち上がろうとしているルナにそう声をかけた。
ルナはきょとんとして、要へ無表情でいう。
喧嘩を売られてる、とか感じてないらしい。
「何を言っているのです。そんなことは説明しなくては分からないじゃないですか」
要は、くははと笑って、それから説明し始めた。
「稲荷神から送り込んだ邪魔者だ。おーけー?」
「いや、分そんだけで分かったらすごいって! ……で、稲荷神ってなに?」
要は、そうなのか? と呟いて、それから稲荷神という言葉について説明を始めた。
「稲荷神っつーのはさ、俺様が元々住んでたところなんだよ。稲荷大社ーとか、一回は聞いたことあるだろ? 俺様はこっくりさんとお稲荷様のハーフだ。けど、こっくりさんとお稲荷様、どちらが上が下かって言うとお稲荷様が上なんだよ。だから俺様は稲荷大社、稲荷神に住む神だった。そんな時だ。こいつ、歩里島十字架がここへ来たんだ。言うと恥ずかしいけどよ、それで俺様は十字架に恋をしちまって——そんで、抜け出してきたんだよなー。つーことで、稲荷神っつーのは、俺様にとって家なんだよ。おーけー?」
あかりとルナはそろって頷いた。
「んで、俺様は十字架に恋をして、抜け出してきたんだ。正しくいうと家出、な。それで、稲荷神には二匹のお稲荷様が住んでんだけどよ、もう一匹の方のお稲荷様が、稲荷大社の方のお稲荷様に俺様が家出したことを言っちまってよ、そんで、稲荷大社の方のお稲荷様が怒っちまって、その黒いうじゃうじゃを送り込んできたんだ。黒いうじゃうじゃはよわっちいが、それなりに気配が察知できないんだよ。うん、だから、その黒いうじゃうじゃは、俺様を稲荷神へ連れ戻すために稲荷大社から送り込まれたお邪魔キャラクターなわけ。おーけー?」
あかりとルナはまたそろって頷いた。
「んじゃ、俺様の背中は頼んだぞ。おーけー?」
「いや、おーけーとか聞かれてもさあ……」
「黒いのに触れたら強制的に稲荷神へ戻っちまうんだよ。いわゆるテレポートアイテム? いや、テレポートモンスターか?」
「気配があまり察知できないので、背中など後ろから近づかれるとどうもならない。だからわたしたちに背中を頼む、と?」
「お。お嬢ちゃん、分かってくれるじゃん」
「分からなかったら大変ですし」
ルナは言って、立ち上がった。
あかりはため息をついて、立ち上がり、要に問うた。
「武器はあるの?」
「素手じゃダメか?」
「鎌と包丁と鋏とカッターとえんぴつとホッチキスと文鎮と——武器になりそうなのはそれくらいしか使ったことがないから」
「へー。じゃあ、包丁っぽいナイフでいいだろ」
要は言って、右手をこちらへ差し出した。
あかりは頭の上にはてなマークと浮かべ、それから顔を斜めにして、要に何だこれ、というように難しそうな顔をして言う。
「これをどうしろと?」
「どっちでもいいから手を俺様の手の上へ重ねろ。そうそう。んで、創造するんだ。お前の知ってるナイフを」
「創造?」
「いいからしてみろよ……あ、そっちのお嬢ちゃんは俺様の後ろに——いつ襲われてもおかしくないからな」
今の十字架の体を支配しているのは俺様だから、な。
と要はいう。
あかりは目を閉じて、そして創造した。
薄い、2ミリほどの白い、銀に光ったナイフ。長さは——15センチくらいだ。海賊が持ってそうな、金色の飾りのついた、ナイフ。
だいたい創造がついたところで、要があかりに聞く。
「だいたいは、創造できたよな?」
目をゆっくり開けてから、あかりは、はい、と答えた。
要はにこっと笑い、それから目を閉じた。
急に、ぶおっと風が吹いてきて、あかりと要とルナの髪を揺らし、それからあかりは感触を覚えた。そして手の中から白く光る先のとがった部分が見えて、そして風は止まった。
しばらくしてから、要は目を開けた。
「手、どけて見ろ——俺様とお嬢ちゃんの手の中には何が入っているかは、もう、分かってるよな?」
「あ……ええ」
言って、あかりは手をどけた。
要の掌には——銀に光る15センチくらいの、金の飾りのついたナイフが『二本』あった。
「二本?」
「そっちのお嬢ちゃん分だ。お嬢ちゃんだけが持ってても仕方ないだろ? あ、そっちのお嬢ちゃん、このナイフで俺様を護ってくれ」
要は体をくるんとルナの方へ向けて、右手をルナへ出した。
ルナは無表情でナイフを受け取る。
そして要はまたくるんと体の向きを変えてあかりの方を向いて、ルナにしたのと同じようにあかりに右手を出した。
あかりはそれを持ち、それから右を向いてしゅんしゅんとそれを振り回して空気を切って見せた。そして出ている太陽にナイフを重ねてみて、ナイフで隠れている太陽から出る光でまた銀に光るナイフを見て、にこっと笑った。
「意外と使いやすそうですね。鎌より重くないですし」
「鎌より思いナイフなんでねーと思うけどな。ま、お前は重さを創造してなかったからナイフの重さは0に等しいけどな」
くはは、を笑って、要はまた続けた。
「じゃあこれで精一杯俺様を守ってくれよ、お嬢ちゃんたち。俺様はそれなりに期待してやってるんだ。俺様がこうやって感情を他人に出すのは結構珍しいんだぜ? ん、じゃあ、よろしく頼んだぞ、お嬢ちゃんたち」
言って、ルナの前に立ち、また歩き始めた。
◆
結局どこへ行くんだよ。