ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -剣呑- ( No.193 )
- 日時: 2008/10/30 19:26
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 魔法の使えない魔術師は魔術師ではありません。
八話 [ ゴール、帰り、眠り-狐- ]
扉の中は、真っ暗だった。
黒しか見えない。
神社のだいぶ奥まで来たからか、光はなく黒一色だった。
「階段だからな」
要があかりへという。
あかりはつまずかないよう足をゆっくりと前へ滑らせた。そこで、つま先が宙に浮く。つまりここで階段の一段が終わっていること、なので、あかりは足を下へ。ぎし、と木が軋む。
また滑らせて確かめてから、一段降りていく。ぎし。
そこで、要がぱちんと指をならした。
「わっ!」
刹那に青い火の玉が現れ、足元を照らす。
「狐火(きつねび)だ。それで下ん所を明るくしておいてやるからよ、早く進めよ。後ろのお嬢ちゃんがまだ扉の外にいるんだ」
「……ええ」
要の方を見て軽く頷き、あかりは普通の家の階段のようにすばやく降りる。途中で、ばたん、という扉を閉める音が聞こえた。そして後ろからもぎし、という木の階段が軋む音が聞こえてきた。要が階段を降り始め、ルナが扉を閉めたのだろう。
あかりはそれを耳で確認し、また一歩階段を降りた。
また、ぎしり、と音がした。
◆
なんだかここへ来た意味を忘れていたような気がする。
たぶん、霊月を生き返らせることはあまりにもファンタジーファンタジーしてるさっきまでの時間に押しつぶされてしまっていたのだろう。
だが、やっと思い出した。
その、地下の階段を降り終わったことで。
「ここにある物でお嬢様を生き返らせる」
「……」「……」
神社とは思えなかった。
コンクリートでできた壁に、黒のカーテンがかかっている。今は開けてあるが。
目の前には金の狐の像が阿吽のように右と左に一匹ずついる。その狐の真ん中には赤い絨毯がしいて有り、その奥に赤の台が置いてあった。屋根つきの、ベビーベッドのような大きさで、そこにも黒い小さなカーテンがついていて中のおいてあるものが見えなくなっている。
霊月を生き返らせるために必要なものが置いてある部屋は、狐ぽかった。
目の前に金の狐の像が置いてある時点で狐っぽい。
「俺様が半日かけて作った地下室だ」
「そんなに時間かけてない!」
「その名も『部屋』だ」
「そのままの名前だ!」
「ゆっくりしていってもいいぞ」
「するか!」
くはは、と笑った要は、赤絨毯を飄々と歩き、その屋根つきのベビーベットのような大きさのカーテンつきの台の目の前へ立つ。
「神に近し狐が申す。赤き血に沈んだ一代目の骨に、罪を背負った神が物申す」
呪文のようなそれを、要は続ける。
「血に沈む、我父なる者よ、我へ力を」
そしてゆっくりと、その赤い屋根つきの台のカーテンを真ん中であけた。
そこには、古めかしい壷が入っていた。要はその壷を落とさないよう両手で取る。カーテンがそれを邪魔したらしく、要は壷をとった後カーテンを睨みつけた。それから要はあかりとルナの方を向き、赤絨毯を歩いてこちらへきた。
「おーけー。出るぞ」
「……これだけでいいの?」
「ん? ああ、この壷の中に入ってる奴が必要なだけだからな。あ、お嬢様の髪の毛ちゃんと離れへ置いてきてるよな」
「ええ、離れへ置いてきました」
「ん、ならおーけー次はそっちのお嬢ちゃんが前で、こっちのお嬢ちゃんが後ろな」
最初にルナを指差し、次にあかりへ指を指す。
ルナは言われるがままに階段を一段上がった。
「今俺様の両手塞がってるからよ、俺様は帰りは戦えないから、防御力あっぷで頑張ってくれよ、くはは」
階段で待機していた、狐火がゆらりと揺れた。
◆
ああ、なんてめんどうくさいんだろう。
◆
「めんどくさかった」
「同感です」
「くはは」
離れで、ちゃぶ台を囲んで三人で緑茶を飲んでいた(といってもルナは緑茶が苦手らしい)。
後は壷の中に入っている『何か』と霊月の髪の毛を使って霊月を生き返らせるだけだ。
「生き返らせるっつーか、どっちかっつーと蘇生だな」
「蘇生?」
「死者蘇生だよ。カードゲームのさ。今ってGXとかやってなかったか?」
「あんまり表に出ていない貴方がなぜそれを知っている!?」
「誰だって知ってるだろ? あのあんぱんの話と同じくらいに」
「ええー!」
話をして、笑って、それから緑茶をすする(といってもルナは緑茶が苦手なので飲むふりをしているのだが)。
要は緑茶の入っている湯のみをちゃぶ台にことりと置き、それからくはは、と笑ってまた話をする。
「あともう一息したら儀式を始めようか。あー、もう暗ぇし明日にすっか?」
離れの壁にかけてある時計をふと見ると、そこには6時を刺さしている。
あかりとルナは一度顔を見合わせ、それから要の方を向いた。
「じゃあ今日は——」
「とまっていくか?」
もう一度顔を見合わせて。
「じゃあお言葉に甘えさせていただきます」
「ん、じゃあここで寝てくれるか?」
「——神主さんをどうにかしてくれたら、いいわ」
「俺様もそう思ってた所だ。くはははは」