ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -吸血鬼- ( No.2 )
- 日時: 2008/08/10 15:24
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
序章「月から降りてきた」
愛西市(あいさいし)。それは愛知県の左下の方にある、小さな市。そこで——今宵、事件は起きた。
門蔵(かどくら)町。愛西市の中の小さな小さいな町のこと。その町の一番外れに、ある茶色の屋根の家がある。そこに二人の家族が住んでいた。娘と父の、二人。
娘の名前は祭風 あかり(まつかぜ)。父の名前は祭風 林之助(まつかぜ りんのすけ)。仲が良いと近所で評判の、祭風家だった。だが実際に、仲が言い訳じゃない。父、林之助は娘、あかりを慕っているが、あかりはそう思っていなかった。
あかりは、いつもいつも一人で家事をしていて、それはもう父の召使の様。それにあかりは——怒っていた。
◆
ある日のこと。時刻は〇時をすぎていて、そしてとっくの昔にあかりの仕事(家事)も終わっていた。だが、あかりは一向に眠る気配を見せなかった。
あかりの趣味。それは夜空を見ること。星が満遍なく散らばった綺麗な夜空を見ることが趣味。だからと言って、こんな夜遅くまで起きていない。そのあかりを寝させない空が、今あかりの目の前にあったのだ。
赤い空に、赤い月。
それに見とれて、あかりは窓の外から目を離せなかった。あともう少ししたら、外へ出ようと決心していた。だから、誕生日とクリスマスプレゼントをまぜあわせて買ってもらったデジタルカメラを握りしめていた。
そしてあかりは——窓に足をかけ、手をかけ、一重いにそこから飛んだ。
びりびりとくる振動。それに震えながらも、あかりはデジタルカメラで、赤い空と赤い月を撮った。そのときだった。
ずごごっごご・・・ぷしゅー。
奇怪な音が、どこからか聞こえた。あかりはビックリして、後ろを見た。何もいない。右を見た。何もいない。左を見た。何もいない。前を見た——。
「こんばんわ」
何か、いや、誰かがいた。
三日月型大きな物体に、腰をおろしている——赤く、長い髪の女の人。そして、その三日月型の物体についている両目と口が、動いた。
「ぐげげげげ。どうだい姉さん! 第一地球人はこんなチビだったぜぇい?」
喋った。あかりをチビと言って見つめた。
あかりは、この三日月形の物体と、赤い髪の女の人の威圧におされ、尻餅をついて、また震えながら、それを見ていた。
すると、赤い髪の女の人が、言った。
「我らは月からの使者、純潔な『吸血鬼』。さぁ、第一地球人よ、これからよろしくねっ」
そして、笑って見せた。