ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: あかりのオユウギ2 -剣呑- ( No.217 )
日時: 2008/11/07 18:05
名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
参照: ファゴットの使えない殺人鬼は殺人鬼ではありません。

三話 [ 首から-夜行性の- ]

 朝の8時頃に、ルナは起きた。
 目が、覚めたのだ。

「……暑い」

 呟いてから額に手を乗せ、額に出ていた汗を拭き取りルナは起き上がった。
 なぜだか随分と、体が重く感じた。

「……」

 目を擦りながら部屋を出て、階段を一段一段ゆっくり降りて行った。

「あ、おはようございます」

 リビングの扉を開けて、ルナはそう呟いた。
 霊月もあかりももう起きていたからだ(だけどまだパジャマ姿)。今回は、ルナが寝坊したらしい。
 そしてめずらしいことに、あかりと霊月がテレビに向かって居た。二人は少し遅れてから、同時におはよう、と返してくれた。
 それにしてもめずらしい。
 霊月はテレビに興味などなく、あかりはテレビはいつもニュース番組しか見ないからだ。
 ルナはまた目を擦り、それから二人の下へとぼとぼ歩いていった。

「何を、見てるんですか? ……何か、ありましたか?」
「うん」

 ルナの問いに霊月が答えた。

「千鶴くんが殺された」
「……」
「やっぱりね、証言者は犯人に殺される運命なのかな」
「……では、やはり——」
「うん。首切り事件の犯人に殺されたっぽい」

 首切られて死んでるからね、とつけたして、霊月は座っていたソファーから立ち上がった。
 ルナはテレビへ近づき、それを見た。

「……首切り死体、ですか」
「ねえルナ」

 そこであかりがルナへ問う。

「お嬢から聞いたんだけどさ……大丈夫なの? ルナ」
「大丈夫ですよ。わたしへの疑いは晴れましたし……ですが、わたしのせいで犠牲が出てしまいました。これは、いけません」
「……そっか。うん。なら、頑張れ」
「承知の上です」

 朝ごはんは机の上においてあるからね、といって、あかりはまたテレビを向いた。そして数十秒後にそれの電源を消して、立ち上がった。
 それからあかりは霊月の長い赤い髪の一部分を手に取り、それをひっぱる。

「あいててて! あかりちゃん、痛い痛い!」
「着替えてきましょ、お嬢」
「わ、分かったから髪の毛ー! 痛い痛い千切れる千切れる」

 ぶちん。

「ああああああ! 痛いー!」
「ははは。早く歩かないお嬢が悪いんですよ」
「引っ張るあかりちゃんが悪いんだ!」
「罪を人になすりつけてはいけません、お嬢」
「わたしがいつ罪を犯したっていうの!」

 会話して、あかりと霊月はリビングを出て行った。
 ルナは椅子に座って、机に置いてあったサンドイッチを口に入れた。



 教会入ってまっすぐ進むと、そこには黒い棺があった。棺には青い薔薇が刻まれている。
 青と白のセーラー服を着た彼女は、その棺を開けた。
 ぎぃ、と棺が軋む音が教会へ響く。

「おはようございます——」

 セーラー服の彼女は、棺の中に入っていた長い青い髪の女性へとそういった。
 刹那。
 青い髪の女性の白い顔がぴくりと動き、次にその瞼が開いた。

「ご主人様」

 セーラー服の彼女はまた青い髪の女性へいう。
 女性は上半身をゆっくりと起こして、セーラー服の彼女を見た。

「おはよう、ですわ。下僕」

 いうと、女性は棺へ手をかけて、それから棺の上で立ち上がる。

「……」

 その体勢はまるでセーラー服の彼女を見下ろす体勢だった。
 女性は軽く上へジャンプし、そのまま棺の下へ降りる。それから青い髪を触る。

「あは……ねえ下僕」
「なんですか?」
「あは……アレは持ってきたのかしら?」
「はい」

 セーラー服の彼女は頷いて、女性から離れて列になって並んでいる客席へ歩いていった。
 そして、二列目の客席で足を止めて、そこに置いてあった何かを両手で取り、また女性の元へ歩いていった。

「あは」

 それは、首だった。
 白い肌で、目を閉じている黒髪のショートカットの少年の首。
 セーラー服の彼女は、女性へその首を両手で渡す。
 女性は片手でその首の顔面持った。

「綺麗な顔ですわ」

 女性は呟いて、それを上へ投げる。そして、今度はそれを両手で丁寧に耳のあたりを持ってから、自分の口へ近づけた。

「貴重なお食事ですもの」

 そして、あーん、と声を上げて、少年の首へかぶりついた。
 下から。
 女性の一口は大きく、顎の部分まで首を食べた。
 そして次々と、首を食べていく。
 そこでセーラー服の彼女は、『食事中』の女性へ訪ねる。

「おいしいですか?」

 女性はあっという間に首を食べ終えた。
 そして血まみれの、肉片のついた口元を右手で拭ってからセーラー服の彼女の問いに答えた。

「おいしいですわ」