ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -剣呑- ( No.226 )
- 日時: 2008/11/12 21:03
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: ファゴットの使えない殺人鬼は殺人鬼ではありません。
五話 [ 実行 -危機一髪の- ]
ルナは夜道を歩いていた。
朝8時に家を出てから夜まで門蔵町を歩き回っていた。
そんな行動を行った理由は一つ。
自分に罪をなすりつけ警察に引き渡した吸血鬼を探しているのだ。
「……」
そして夜道を歩きながら考える。
吸血鬼とは外国の方で生まれた怪物だ。血を吸い肉を食い、日光はニンニクや聖水を嫌い怪物。有名なのはブラド。ツェペシュだろうか。くわしくは知らないが。
吸血鬼には、純粋な吸血鬼と下層吸血鬼という二つの種類がある。
純粋な吸血鬼、それは普通の吸血鬼。吸血鬼と吸血鬼の中で生まれた吸血鬼の中の吸血鬼。
吸血鬼は(純粋な吸血鬼と下層吸血鬼を居れ)首を切られただけでは死なない。心臓にホワイトアッシュの杭を打たないと殺せない。
下層吸血鬼とは、純粋な吸血鬼が作った下僕のことだ。純粋な吸血鬼が人間の血を極限まで吸い、ほかっておくと下層吸血鬼となる。そのことを眷属作り、という。
全てはあかりの部屋にあった吸血鬼伝説という本にそう書いてあったことなのだが。
「吸血鬼が出るところとか、書いてありませんでしたし……」
呟いて、また歩いた。
そして、こつん、と。
気の抜けた音がした。
次に、ぐりぐり、と何かを踏みつける音がした。
ルナは履いているジーンズのポケットから鉛筆が3本重なったくらいの太さで、5センチほどの長さの懐中電灯を出し、電源を入れた。
そこには。
青い長い髪の青いワンピースを着ている女と、黒髪ショートカットの青と白のセーラー服を着ている女が立っていた。
「……久しぶり、かな」
セーラー服を着た女は、「よっ」と言って手を上げた。挨拶だろう。
青い長い髪の女は、ルナを見つめただけで動かない。と思いきや、ふと目を下に向けると女は石を裸足で踏みつけていた。
「懐中電灯とかやめろよ。嫌いなんだ」
「……お前」
「っていうか、消して」
「セーラー服。お前——」
「消せって」
言葉がだんだん荒くなる。
ルナはそんな言葉を聞きながらも無表情で、セーラー服に言う。
「わたしは夜、目が効かないんです。ですから付けたままで」
「消せって、言ってるだろ? 人間」
「聞こえませんでしたか? わたしは吸血鬼ではないので暗闇は暗闇で何も見えないんです」
「消せって——」
「下僕、黙りなさい」
セーラー服の声を、青い長い髪の女が短く遮った。
それから青い長い髪の女は、石を踏みつけるのを止めてから、ペコリとお辞儀をした。
「始めまして、月人形。わたくしの名前は雷月エレクトリティー」
そして頭を上げる。
「吸血鬼、ですわ」
そして刹那。
雷月の姿が消える。
ルナはすぐそれに気づき驚く。セーラー服は無表情で動かない。
「あは」
笑い声が聞こえて、振り向こうとした時。
右の頬の横に、石を持っている手があった。
青白い、死人のような手。
その手は雷月の手で、雷月は刹那にルナの後ろに回りこんでいたらしい。
「月人形。貴方の物でしょう?」
「……わたしは、石集めなどしたことがないんだが」
「あは……でも、貴方の方からこの石が飛んできましたわ。ああ、正しく言うと貴方がこの石を蹴った。その石がわたくしの元へ飛んできたんですの。ですから、返しますわ」
雷月は右手に持っていた石をルナの右手に無理やり握らせた。
それから雷月はルナの後ろを離れて、セーラー服の元へと足音を立てず戻った。
「……下僕」
挨拶は? と雷月はその青い瞳でセーラー服を見て言う。
セーラー服ははい、と雷月に答えて、ルナを向いて自分の胸に手を当てて言った。
「じゃあ、改めて……月人形、始めまして。僕は安城改里(あんじょう かいり)」
一つ間をあけてから、改里は続けた。
「滑稽な、下層吸血鬼だね」
その一言は、自分を汚している一言だった。だが改里は何も思っていないようで、微笑した。
ルナはそれに違和感を覚えたが、その違和感を顔には表さず、無表情で改里の自己紹介についての質問をした。
「誰の下層吸血鬼なんですか?」
「ははは」
改里は笑ってから、
「教えるわけないじゃんか」
答えた。
ルナはそれに眉を寄せた。
改里はまたははは、と笑った。それから雷月へ質問をする。わざと声を大きくして。
「ご主人様……殺しますか?」
「もちろん」
即答だった。
改里は軽く頷いて、それからその場でジャンプをニ、三回した。準備体操だろう。
ルナはそれを見て身構えた、が——遅かった。
「ぐ、うっ」
改里はルナへ体当たりをしていた。
ルナは改里に押し倒され、地面へ倒れ頭をぶつける。
「はははは!」
笑って、改里はルナの首元を左手で掴み、それに力を入れた。
ルナは短く嗚咽を上げる。
それから改里はまたどこからかナイフを出し、それを苦しそうに足掻くルナへ見せ付けた。
「現代のリッパーとでもよんでくれってんだ」
そして、それを上へ、振り上げた。