ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -吸血鬼- ( No.3 )
- 日時: 2008/08/12 15:49
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
一話 [ 学校-いつも- ]
門蔵(かどくら)第一中学校。門蔵町の中にある、有名な学校の一つ。そこに、祭風あかりはいた。
男子は大いに、昨日の新ドラマについて盛り上がっていて、女子はただでさえ短いスカートをもっと短くし、足を組んで喋っている。正直、五月蝿いものだ。そし
てその自由気ままな一年二組の教室の真ん中に、女子が何かを囲むようにたっていた。
『いじめ』。それは終わりの無い、果てしない学校内暴力のこと。靴を隠したり、たいそう服をトイレのバケツの中に入れたり——と、結構なことをする。
いじめられている子の名前は、桂 杏里(かつら あんり)——だと思う。正直なんでいじめられてるか知らないし、喋ったことも、顔をまともに見たことすらない。
そして彼女は、静かで、まったりしてて——悪いことはなにもしていない。なのに、一年二組の女子は、彼女をいじめるのだ。
そんな一年二組の哀れさを考え、あかりは廊下側の端っこの席でため息をついていた。そんな時だ。
「おはよう。あかり」
俯いていたあかりに向かって、朝の挨拶をした人物。その人物の名前は秋傘 聖(あきかさ ひじり)。聖の顔を見ようと顔をあげると、目の前には聖の笑顔が
ある。それを見て、あかりは静かに言う。
「おはよう。秋傘」
「なぁ、あかり! 昨日の新ドラ、見た?」
新ドラマ。そんなの、見てない。あかりの仕事(家事)が終わるのは、いつも十時過ぎ。十時を過ぎたら、お風呂へ入って、その中で歯磨きをして、自室にこもっ
ているから。もうリビングにも行きたくないし、毎日の疲労で早く寝たいし——それにしょっぱなから、テレビになんて興味なかったし。
それをわきまえてから、あかりは静かに笑っていう。
「昨日、疲れて寝ちゃったか——」
「ちょっと桂さんっ! 聞いてんの!?」
桂杏里をいじめている女子の一人が、叫ぶ。
教室は一瞬静まり返ったが、また言葉の連鎖が起こる。
あかりはまたため息をつき、改めて秋傘に向かって言った。
「昨日は疲れて寝ちゃったの」
「——ふーん。で、話変わるけどさ」
教室の端っこの席に座っているあかりに向かって、秋傘は静かに言った。
「助けないの」
「誰を」
「いじめられてる子」
「・・・別にいいけど、その子を助けたらわたしがいじめられる・・・から」
「そんなこと、やっても無いのにいえるのかよ」
なんだよ、急に。
秋傘は、いつもより真剣にあかりを見た。
『いじめ』。別に助けてもいい。けど、助けたら、いつどこで何をされるか分からないし。それにおびえているのだ、皆(みな)。
漫画とかでは、普通に軽く助けられる。が、普通に助けようと思う勇気を、現実の中学生等は持っていない。だから——。
「いえないけどね、だけど、怖いのっ。それにまだわたしたちって一年よ? しょっぱなからいじめられてちゃあいけないじゃ——」
「あっ! 逃げた!」
桂杏里をいじめている女子が、また叫ぶ。あかりは、教室から出て行った桂杏里をぼーっと見つめ、それから、その桂杏里を追うように、あかりは席を立ち、教
室を出た。
◆
「桂さん」
廊下を小走りしている桂杏里の肩をぽんと叩く。すると桂杏里の体はぶるっと震える。そんなに怖いのか。
ゆっくりと後ろを向いてきた桂杏里に向かって、あかりは言った。
「お友達になりましょう」
それは、とても不振な言葉。
それを聞いて、桂杏里は府抜けた顔で小さく言う。
「ほえ?」
「お友達。英語でいうとフレンドね。んじゃあ、今日から桂さんのこと桂ちゃんっていうから。わたしのことはあかりって呼んで。じゃあ」
すばやくお友達になりましょうという会話を終わらせ、祭風あかりは、藍色のスカートの左ポケットからハンカチを取り出し、教室へ戻る。すると刹那。
「祭風さん、なにやってたの?」
桂杏里——いや、桂ちゃんをいじめている女子の一人が、あかりを睨みながら言う。するとあかりはその女子の目の前にハンカチを突き出して、
「おトイレに行ってただけですよ?」
いかにもタコにも嘘らしい笑顔を見せて自分の席に戻った。