ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 +注意事項あり ( No.308 )
- 日時: 2008/12/25 16:10
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: ファゴットの使えない殺人鬼は殺人鬼ではありません。
三話 [ 朝、夜-準備、開始- ]
気づけば朝が来ていた。それはなんともいい加減な表現だが、そうとしか言い様がない。
あかりとルナと霊月とで三人で風呂に入り、それから歯を磨いてすぐ寝た。なので今の気分は寝てすぐ起きた。そんな感じのものになっている。
と、ルナが上半身だけ体を起こしてぼーっとしているとあかりが急に頭を上げた。
「おはようございます」
ルナはあかりの方を見ず視線を曖昧にしながら朝の挨拶をした。あかりはルナと同じく前をぼーと見ながら朝の挨拶をした。
と、ルナとあかりが上半身だけ体を起こしてぼーっとしていると霊月が急に頭を上げた。
「おはようございます」「おはようございます」
霊月も二人と同じようにしてから朝の挨拶をした。
三人の頭は時限爆弾が爆発したかのごとく寝癖がついていた。とそこであかりが爆発した頭を右手でさわりながら言う。
「寝たら起きたって感じだ」
「わたしもです」「わたしもよ」
それから三人は互いに三人を見合い、爆笑した。
「なんだその頭!? というか随分うなされたみたいだなあ、あかり!」
「なによその頭!? というか随分うなされたみたいね、ルナ!」
「なんですかその頭!? というか随分うなされたようですね、お嬢!」
◆
で、夜。
で、家を出発した。
改里の時に使ったスーツはやはり動きにくいので一番動きやすいと思えるワンピースを来た。妖怪たちは自分たちが元々着ている服が一番良いと言うことでそのままだった。
とりあえず霊月の案で、そこらへんを歩いてたら向こうから襲い掛かってくる、ので普通に歩いていればいいとのこと。武装はしずに雷月が現れたらするそうだ。なので武器は空間製作で霊月が次元に飛ばしてるとか。
とそこで霊月が小さくくしゃみをする。
「……やっぱ冬にワンピースはいけなかったわね。よし、火車ー! かもーん」
霊月は火車を呼ぶ。火車は瞬間移動という奴なのか素早く霊月の元へ来て一緒に歩き始める。
「何でしょうか」
「ふふん。死んでるあなたたちと半妖(はんよう)のそのまた半妖のそのまた半妖のルナは寒くないみたいなんだけどね……ほら、あかりを見て!」
霊月は自分の後ろで顔を真っ青にしてとぼとぼ歩いているあかりを指差した。
「あかりの顔を見て! 死にそうな顔してるわ! だから火車、あなたは火を出しなさい」
「……火、です、か?」
「うん。あかりのために人魂を用意するの」
火車と呼ばれている火車の橙火は霊月の言葉に首を傾ける。
「でも、お嬢様……人魂は熱くないんですよ」
「なら火の化身でも用意させてあかりに人格が失われない程度に憑依させちゃいなさい」
「人格が、在る、憑依……むう。難しい」
唸る橙火の肩を叩き、霊月は自分の腹に手を当ててそれから腹に手を当てた手の親指を突き出して橙火に見せる。この行為を訳すと『肝食べさせてあげるから、お願いね!』と言ったところだろう。
と瞬間に橙火の目が猫の瞳のとうに光、その場で立ち止まって顔の前で手を合わせ声音が小さすぎて聞き取れないような呪文を唱え始めた。
「…………」
と、呪文を唱え終わったのか顔の前で合わせていた手を開き、その両手をみんな立ち止まっているのに自分だけとぼとぼ歩いていくあかりへ向かって差し、それから、
「発射ああああぁぁ!」
叫んだ。
と刹那に赤い人型(ひとがた)の何かがあかりに向かって飛んで行き、見事にあかりに命中して人型はあかりの体の中へ入っていく。途中であかりが悲鳴をあげたが、それも数秒のことで人型が全てあかりの中へ入っていくと悲鳴も消えた。
霊月は一目散にあかりへと走って行き、あかりへ声をかける。
「あったかくなった!?」
「何か背中に痛みが走ったけど急にあったかくなった」
「ならOKね!」
霊月は言い、後ろから早歩きをして歩いてくる橙火へまた親指をつきさした。橙火の顔も少々赤くなり、すぐ俯いてしまった。恥ずかしかったのやら嬉しかったのやら。
とそこで霊月が眉を寄せて短く言う。
「来た」
瞬間。
大勢で歩いていた道先に黄色の稲妻が落ちた。すごい音だ。
落ちてきた稲妻で地面が破壊されコンクリートが民家へ飛び散るが、もう少しで当たる、というところでコンクリートはどこかへ消えた。
「空間製作よ」
霊月は呟き、それから手を上へあげた。
すると空から皆それぞれの武器が自分の居るところに素早く落ちてきた。皆ちゃんと武器を広い、その武器の刃を稲妻が落ちたところへ向ける。
とそこで、稲妻が落ちたところから拍手の音が響き、それと同時に甲高い声が聞こえてきた。
「忌々しい霊月一族に使えているお馬鹿さんたち——どうもこんばんわ、ですわ」
この口調。この声。
「また前の時ではどうもお世話になりましたわ」
砂埃の中からだんだん見えてきた金髪に青い目。
「下僕を取られ両手両足をもがれわたくしを散々いたぶったこの馬鹿たちに——」
爪を伸ばしたその手に、薄ピンク色になっている八重歯。
「残酷な死をプレゼントして差し上げますわ!」
彼女はまさしく雷月エレクトリティー。