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- Re: あかりのオユウギ2 ( No.329 )
- 日時: 2009/08/25 22:18
- 名前: 木由 ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
- 参照: 気まぐれで更新してみる。
四話 [攻撃を開始せよ-■■■■-]
破壊破壊破壊破壊。
一面の血たまり。
その血は、確かに霊月が口から零したものだった。
「てんめええええええええええ!!」
目の前に横たわる、助っ人の体。
皆、白目を向いている。皆、腕をもがれている。皆、もう、動かない。
「雷月いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
助っ人たちをそんな体にした、憎い敵の名前を呼ぶ。
するとその敵——雷月は、霊月を見て上品に笑う。
「わたしくを的に回した事が、運の尽きでしたわね! さあ、霊月。あなたも眠らせてさしあげますわ!」
吐き捨てた雷月は、地面を軽く蹴る。すると、一秒も立たない内に、彼女は霊月の元へ来ていた。
霊月はびくり、と体を震わせる。同時に、霊月の頬に向かって雷月の拳が飛んでくる。
めこ。
気持ちの悪い音がした。
雷月の拳は霊月の頬を貫通して、その口の中で動きを止めた。
嗚咽。
霊月が大きな声で、意味などない叫び声を上げる。それを聞いた雷月は、これまでにないほど嬉しそうに笑った。
「こうやって傷口に何かがあると、それがある部分だけ蘇生できない。哀れですわ霊月! 痛いでしょう苦しいでしょう? 死にたいでしょう? 死なせてあげますわ!」
雷月は、霊月をそのまま地面にたたきつける。するとまた、霊月の口から血が落ちた。落ちたと言うよりは、流れてきたと言うか。それはもう滝のように、大雨のように。彼女の口から血が流れる。
霊月は、痛みをこらえるだけで精一杯だった。
死の覚悟はもうしてしまった。
情けない、と思う。
たった数ヶ月でこれほどまで強くなった雷月と、たった数ヶ月でこれほどまで落ちぶれてしまった自分と。きっと彼女は死ぬほどの苦労をして、これだけの力を手に入れたのだろう。そうすると、自分はどれだけ——
「よわむし」
涙を流して、そう呟く。
それを聞いた雷月は、細い両眉を吊り上げる。
「それは、誰に向かって言っているんですの?」
「わたしにだよ」
「それは偉いですわ。やっとまともに脳が動くようになったんですのね——」
霊月は、口にから広がってくる痛みをこらえ、血だらけの左手で雷月の首をぐっと掴んだ。
「分割させてやるよ」
「……できると、思い、ます、の?」
自分の口から、雷月の手が引かれて行く感触が、霊月に力を与えた。
すかさず右手も雷月の首に伸ばす。
「死ねよ」
優しく呟いて、両手に力を入れる。
口に空いていた大きな穴は、既に塞がっていた。これは好都合だ。考えながらも、霊月は両手に力を入れた。
橙火の、紫琴の、青二の、鉄黄の、飛赤の、白葉の、灰瓦の、緑空の、ルナルドールの、あかりの——
あだ討ち。
ごろん、と、雷月の首が落ちる。
霊月は着ていたルーツから素早く白の杭(ホワイトアッシュ)を引っ張り出すと、それを彼女の胴体の心臓部に突き刺した。
「終わったよ、皆」
血まみれの顔で、霊月は呟いて。そして、真っ黒な空をひとりでに見つめた。