ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: あかりのオユウギ2 -吸血鬼- 1-1 ( No.4 )
- 日時: 2008/08/13 11:45
- 名前: ゆずゆ ◆jfGy6sj5PE (ID: nc3CTxta)
二話 [ 一時間目-理科の授業後にて- ]
一時間目は理科だった。いや、理科というより科学だろうか? 別に、嫌いな科目ではないし・・・勉強には励んでいるつもりだ。
「きりーつ。れーい。ありがとうございましたー」
「ありがとうございましたー」
日直がそういうと、後から自分たちも続いて言う。それから、男子は友達の所へ行き、肩を組んで理科室から出て行く。女子はゆっくりと歩き、友達が隣へ来るのを待つ。そんな中、あかりと聖は理科の先生。赤星 リオ(あかほし りお)先生の所で喋っていた。
「そういえばさー先生?」
「なんですか」
男性ながらも肩まで伸ばしてある髪を揺らし、赤星先生は問いをかけた聖の方を向く。
「なんかさー、そのー危険な野菜とかってあんの?」
「危険な野菜?」
聖の言葉に、あかりは聖の方を向く。それから先生は——少し考えてから聖に言って見せた。
「じゃがいもの芽には、毒があるよね」
「それは知ってる。他にはないの?」
「えーと・・・あ、そうそう。じゃがいもの芽をすり潰して乾燥させた奴は——確か青酸カリと同じ様な感じになるらしいけど」
じゃがいも? 青酸カリ?
とりあえず、あかりも赤星先生に問う。
「青酸カリって・・・」
「青酸カリは、飲むとものすごい症状におそわれる怖い薬見たいなもののことだよ」
「へー」
青酸カリ。飲むとすごい症状に——か。
あかりの頭には、あることがひらめいた。そして心の奥底で薄く笑い、赤星先生に一言言って理科室を後にした。
◆
「おい、どうしたんだよ。あかり」
ゆっくりと廊下を歩くあかりに向かって、聖が後ろから声をかけてくる。どうしようか。『アレ』を言ってしまおうか?
さんざん前を見て考えたところで、あかりは聖に言った。
「ずっと前から、晩御飯にじゃがいもを使おうと思ってたんだけどねー高くて買えないの」
「で?」
「秋傘の家って農家でしょ? だから——」
「『じゃがいもをくれ』と」
ひくひくと眉を上げ下げする聖に向かって、あかりはそうよと言って一年二組の教室に入る。
それから、またもや女子に囲まれている杏里をちらっと見、自分の席に戻った。すると、一度自分の席に戻って理科の教科書を置いてきた聖があかりの席まで歩いてくる。
「じゃがいもがほしいのか? それならうちにたんまりとあるけど」
「それなら話が早いわ。じゃ、また三日後くらいに三つほどもってきて」
「んーいいよ」
軽々そう答えた聖は、あかりの目の前に右手を出す。
聖と小学校から付き合ってきたあかりには分かった。この右手の意味が。
そうその意味とは——『お金ちょーだい』だ。中学生になり、財布を持って登校する。そのときに聖にお願いをしたら、まずは百円をあげなくてはならない。まぁ、じゃがいもも結構するし——と思い、あかりは机の横のフックにかけてあった学生鞄(がくせいかばん)からピンク色の財布を取り出し、細かいほうのお金をしまっておくところをパチンとあけ、中から百円を取り出し、聖の右手に置いた。
「ありがと」
「大丈夫よ。百円くらい」
「百円があると、十円ガム何個食べられると思ってるんだ? ガチャコロも一つ手に入るぞ?」
や、それで何がいいたいんだよ、お前は。
◆
二時間目が終わり、今はたった十分の休み時間。あかりは一年二組の教室がある二階から降り、一階の保険室で絵を描いていた。書いているものは、風景画だ。
小さい頃から絵が好きだったあかりは、絵を書き続けた。別に水彩画とかじゃなくて、シャーペンやえんぴつなどで書く絵が好きなのだ。
趣味に溶け込んでいたあかりに向かって、聞いたことのある声がした。
「祭風さーん?」
絵に集中しているためか、あかりは声に応じない。
「まーつーかーぜーさーん?」
まだ応じない。
「祭風あかりさん!」
「ひゃ…ひゃい!」
びっくりしてあかりはすぐさま後ろを向く。びっくりしすぎたせいか、噛んでしまった。
そして、あかりの名前を呼んだのは——、
「あ…赤星先生」
赤星先生。赤星リオだった。赤星先生は、にこっと笑っい、あかりに近づく。
「どうしたの? 祭風さん。おなかでも痛いの?」
男なのに女の様な赤星先生は、あかりの白い顔を見て問う。
するとあかりは、はははと笑い赤星先生の問いに答えた。
「別になんともないですよ。肌の色を見て言ったんだと思いますが、わたしは元から肌の色が薄いんです」
「そう。で? 何をしてたの?」
また赤星先生の口から飛び出した問い。あかりはすぐにその問いに答える。
「趣味を実行していたのですよ」
「趣味…? ああ、これね」
あかりの腕の中にあった七センチくらいの紙を見て、赤星先生は言う。それから、話を変えてもう一度あかりに問う。
「手…ものすごい荒れてるね」
「これですか?」
あかりの手が荒れているのは当然だ。毎日毎日繰り返し繰り返しと、寒い冬の水の中でも食器を洗っているのだから。だが別に気にしてはいない。もっと他に、気にしていることがあるから。
あかりはクスクスと笑い、赤星先生の問いに答える。
「食器洗いを毎日しているからですよ」
別に、こんなちっぽけなことでめげる自分じゃないし。